SIGN OF THE DAY

今が最強!〈サマーソニック〉に備え、
アークティック・モンキーズ、無敵の
「2014年モード」を再検証。 Part 2
by YOSHIHARU KOBAYASHI May 23, 2014
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今が最強!〈サマーソニック〉に備え、<br />
アークティック・モンキーズ、無敵の<br />
「2014年モード」を再検証。 Part 2

声を大にして言いたい。今こそがアークティックの全盛期。ライヴのセットリストも、キャリア史上最高の充実度。だからこそ、〈サマーソニック〉前に知っておきたい、世界標準のロックンロール・バンド、アークティック・モンキーズ究極の10曲。彼らの「今」を語る上では欠かせない厳選されたライヴ・レパートリー集も、残すところは後5曲。では、早速始めよう。後篇スタートです。

5. Fluorescent Adolescent

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この記事の前篇では、ヘヴィで濃密、かつ大人の色気が漂うアークティックの最新モードにフォーカスを絞って紹介してきたが、現在の彼らはそれ一辺倒というわけでは、勿論ない。50年代のポップ・スタンダードや60年代のガール・グループへの愛情に溢れたトラックは、今でも重要なレパートリーの一部だ。特に、一旦クール・ダウンするライヴの中盤において、これらの曲は重要な役割を果たす。メロディのアルバムと言っていい4th『サック・イット・アンド・シー』の“シーズ・サンダーストーム”や、男の哀愁が漂う最新作のロッカ・バラード“No.1パーティ・アンセム”など、この路線の名曲は多いが、ここでは2ndから“フルオレセント・アドレスセント”をピックアップしておきたい。どこまでもスウィートで、人懐っこく、少しばかり切ないこの曲は、ソングライティングという点に関して言えば、今でもアレックスの最高傑作のひとつである。上の映像のように、アコースティック・セッションだとメロディの美しさがさらに際立つが、やはりこれは軽快なビートが跳ねるオリジナル・ヴァージョンこそ最高。

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4. One for the Road

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最近はギター・バンドもR&Bの影響を取り入れるのが当たり前だが、それはアークティックの最新作も例外ではない。ただ彼らの場合は、リズムやメロディではなく、R.ケリーなどをヒントに、裏声コーラスの多用という形でR&Bを血肉化してみせたのが特徴的。そして、そのようなアークティック流のR&B解釈が、最も効果を発揮している曲のひとつが、“ワン・フォー・ザ・ロード”だ。ローリング・ストーンズの“シンパシー・フォー・ザ・デヴィル”を直接的に想起させるファルセットが繰り返され、そこに畳み掛けるようにヘヴィなギター・リフが割り込んでくるというオープニングは、『AM』でも屈指の素晴らしさだろう。

曲調としては、やはり『AM』らしく非常に重たい。だが、女性とのどうにも上手く行かない関係を歌いながらも、「あの“シェイク・ラトル・アンド・ロール”的な状況(英詞だと「The shake, rattle & roll」)」とさらりと引用するのは、いかにもアレックスらしい言葉遊びの巧みさだ。ちなみに、“シェイク・ラトル・アンド・ロール”はビッグ・ジョー・ターナーが歌い、プレスリーなどもカヴァーしたロックンロールの名曲で、乱暴にまとめれば、小悪魔のような女性に翻弄される男の目線で書かれた歌。そして、「調子外れのギターは/最悪の事態のサントラさ」と歌っておきながら、その後、これみよがしにギター・ソロを披露するのもユーモアが効いている。もしかしたら、2分40秒からのリード・ギターは爆笑ポイントなのかもしれない。違うか。

3. I Bet You Look Good on the Dancefloor

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さあ、残すはトップ3のみ。ここで我々が選んだのは、もはや説明不要の大アンセム。「アークティックの名曲」と言われれば、これが真っ先に思い浮かぶ人も多いのではないか。当然だ。この曲はあまりに衝撃的だった。まずは2005年当時の演奏を見てほしい。まだ幼さの残る顔の少年達が、エッジの塊のようなロックンロールを尋常ではないスピード感と衝動性を宿した演奏で叩きつけてくるのを目の当たりにすれば、誰もが虜にならずにはいられない。ギャキッ、ギャキッと空気を切り刻むようなギター・リフと、ヒップホップを倍速でプレイしているような、つんのめったまま転がっていくリズムは、今聴いても飛び抜けてオリジナル。このスピード感は間違いなく肝なので、“ダンシング・シューズ”とは違い、現在もほぼ原曲を忠実に再現しているのは正しい選択と言える。

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この映像でもわかる通り、さすがにもうデビュー当初の初期衝動的な荒々しさはない。が、それでも観客の熱狂は圧倒的だ。地元イギリスの、しかも〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉でのライヴということもあるだろうが、オーディエンスが歌詞をほぼすべて一緒に歌っているのも圧巻。凄まじいカタルシス。なので、日本でも大合唱を!というのは無理な注文だが、事前にひとつだけ予習しておこう。必ずやる必要はないが(ライヴの楽しみ方は自由だ)、予備知識としては持っておいた方がいい。この日に限らず、曲後半のブレイクの後、もう一度ヴォーカルから入るところを、アレックスは自分では歌わずオーディエンスに任せている(上の映像では2分36秒のところ)。だから、ここだけでも声を張り上げてみるのは悪くない。フェスだし。ちなみに、この部分の歌詞はタイトルそのまま、「I bet that you look good on the dance floor」ですから。俺も気が向いたら歌います。アイ・ベッ・ザッ・ユー・ルック・グッオン・ザ・ダンース・フロ~~ア!!!って。(握りこぶしを高々と掲げながら)

2. Cornerstone

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いよいよ最後の2曲。これはアークティック・モンキーズで最も見過ごされていて、最も再評価されるべきアルバム『ハムバグ』に収録されている、隠れた名曲。本稿の前篇でも書いたように、『ハムバグ』再評価のポイントは「重厚化したアークティックの原点」ということだが、しかし、この曲は70年代前半のジョン・レノンさえ想起させる、どうしようもなくロマンティックで切ないバラードだ。要するに、紛れもない傑作だということ。ややサイケデリックな空気をまとったオリジナルのバンド・アレンジも悪くないが、下の映像や、最近のライヴで披露されているアコースティック・ヴァージョンでこそ、その美しさは際立っている。

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だが、何と言っても白眉の出来なのは、昨年の〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉で披露したヴァージョンだろう。ストリングスも交えた編成で、この曲はさらにゴージャズで美しく生まれ変わっている。ブラーの“ディス・イズ・ザ・ロウ” も思い起こさせるようなアンセム感――と言ったら褒め過ぎだろうか?いや、そんなことはない。曲の出だしで、デヴィッド・ボウイの“ソウル・ラヴ”や、コールドプレイの“イエロー”をふざけて歌うアレックスの余裕もにくい。

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〈サマーソニック〉でこの豪華アレンジを再現するのは、おそらく難しいだろう。だがそれでも、まさに“ソウル・ラヴ”や“イエロー”に並ぶような必殺のバラードとして、落ち着いた曲が中心に演奏されるライヴ中盤のハイライトを、この曲が作り出すことになるはずだ。

1. R U Mine?

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ついにラスト。最後の最後は、アークティックの「今」を語る上では絶対に欠かせない、この曲だ。彼ら曰く、これが『AM』にとって「すべての始まりだったトラック」。発表されたのも、アルバム・リリースより一年近く前の2012年2月である。おそらく、これが出来たことで、アルバムのヴィジョンが固まり、制作が一気に進んだのだろう。うねるような重量級ギター・リフ、マットとニックによる執拗なファルセット・コーラス、男臭いアレックスの歌い回しと、『AM』に必要な要素はこの時点でほぼ出揃っている。

ただ、“ドゥ・アイ・ワナ・ノウ?”や“アラベラ”といった、その後の「完成形」と較べると、リズム・パートはやや荒っぽい。というか、マットのドラムはかつてのように手数が多く、とにかくフィル・インを叩きまくっている。そういった意味では、これは発展途上の段階で生み落された曲と言えるかもしれない。しかし、まだ成熟味よりもアグレッシヴさが僅かに勝っている演奏は、結果として、この曲に前述の2曲にはない爆発力を与えることになった。やはりこういう曲はライヴで映える。今やこのトラックが、アンコールの定番になっているのも当然だろう。まさにバックステージでアンコールの声を聞きながら休憩し、ステージに戻って“アー・ユー・マイン?”を演奏する一部始終を収めた映像があるので、それを見てもらいたい。

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観客もバンドも、かなり高揚している。そのせいか、スタジオ・ヴァージョンよりもだいぶBPMが早い。大人の余裕を感じさせる今のアークティックの演奏が走るのは意外に感じられるが、そのぶん抑えきれない興奮と熱気が伝わってくるだろう。見よ、最後のキメを揃えた後にアレックスが見せる、「やったぜ!」とでも言いたげな爽やかな笑顔。ライヴ中にテンションの上がった女性客がステージに投げ入れたのだろう。マイク・スタンドに幾つものブラジャーが引っ掛けられている様子からも、この日の熱狂が窺える。ああっ、〈サマーソニック〉でもこんなライヴが観たい!ブラジャー放り投げはお国柄なさそうだが、日本でもアレックスにこの笑顔を決めてもらいたいぜ。



これにてアークティック版の「究極の10曲」企画は完結。現在の彼らのライヴが、どれほど見どころたっぷりか、わかってもらえただろうか。とにかく今の彼らは、キャリア史上最も勢いに乗っている状態。それに後押しされ、ライヴもノリに乗っている。だからこそ、オーディエンスとしっかり歯車が合えば、〈サマーソニック〉でのライヴは後に語り継がれるような名演になる可能性も十分あるはずだ。なので、決定版と自負出来る本稿で最新ライヴの要所をしっかりと押さえたら、後はアークティックの4人とすべてを忘れて熱狂すればいい。そして、歴史に残る最高の時間を作り上げよう。



「今が最強!〈サマーソニック〉に備え、
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『2014年モード』を再検証。 Part 1」
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特集:夏フェス完全攻略ギブス
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〈サマーソニック 2014〉
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