SIGN OF THE DAY

祝再結成ブラー、まさかまさかの大傑作!
ブラー初心者のキッズも、黎明期からの
古参ファンも読めば納得。ブラーのすべてを
知るための10の質問:作家編 by 岡村詩野
by SHINO OKAMURA June 05, 2015
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祝再結成ブラー、まさかまさかの大傑作!<br />
ブラー初心者のキッズも、黎明期からの<br />
古参ファンも読めば納得。ブラーのすべてを<br />
知るための10の質問:作家編 by 岡村詩野

1. ブラーというバンドの存在が表象するものとは何か。出来るだけ、さまざまな視点から言語化して下さい。

戦後生まれの豊かな英国白人による、既に斜陽化している自国文化、過去の華やかな時代の栄光に対する誇りを抱えたまま生きていくことの醍醐味。あるいは、過去に入植した国々への罪を、彼の地の文化継承、伝播という恩返しによって償うための果てしなき旅の記録。



2. ブラーの存在と音楽性を構成する諸要素をその文化的出自、時代性、世代、音楽性、アティチュード、メンバー構成、バンド組織論といったいくつかのパラメータを使って、方程式として表して下さい。

ビートルズ誕生以降の英国庶民文化×英国グローバル化への音楽的見地からの働きかけ+(デーモン・アルバーンのグローバル指向+グレアム・コクソンの内省性+アレックス・ジェームスとデイヴ・ロゥントゥリーのバンド・メイトへの忠誠)-(ブリットポップのイメージからの脱却という永遠のテーマ+英国国民的バンドであり続けるプレッシャー)=ブラー



3. 90年代生まれのキッズが今からブラーを聴き始めるとするなら、まず最初に手に取るべきパッケージは何からにすべきでしょう? その理由と共に教えて下さい。

イレギュラーですが、デーモン・アルバーンの『エヴリデイ・ロボッツ』。90年代終盤以降、ヒップホップなどのブラック・ミュージック、アフリカやアジアの音楽などに魅せられ、だが、それがかつて英国人が入植した国々にルーツを持つ音楽であるという罪の意識を抱きつつも、無邪気に現地のミュージシャンたちと交流することで時代を上書きしていこうとするデーモン・アルバーンの主に00年代以降の充実した活動こそが復活後のブラーの礎になっているのは明白だから。そして、ブラーとしての最新作のわずか一年前に、そうした活動の集大成的な作品をソロとして残していることの意味は、ブラーの最新作の厚みある仕上がりに結実されていると思うから。

Damon Albarn / Everyday Robots

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4. ブラーというバンドがロック/ポップ史に残した最大の功績を3つ挙げて、その理由を述べて下さい。同じく、彼らがロック/ポップ史に残した最大の罪があるとすれば、それは何でしょう。その理由と共に教えて下さい。

>>>功績
1) ザ・フー、キンクス、マッドネスなどが受け継いできたロンドンの庶民文化としてのロックンロールを90年代にポップなスタイルでアップデートしたこと。ブラーが2ndアルバム『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』とシングル“ポップシーン”あたりでそれをやったからこそ、英国のロックンロールの伝統は生きながらえたのだと考えます。

Blur / For Tomorrow

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2) そうやって確立させた英国的なるアイデンティティを、英国外の文化と邂逅することによって自らフラットにする勇気を00年代に提示したこと。アルバム『13』以降、ゴリラズやデーモンの他の一連のソロ・プロジェクトなどによって英国的なるものを時間をかけて壊していった作業は、00年代に例えばアニマル・コレクティヴなどブルックリン勢のやったハイブリッドな音作りとシンクロしていたと感じるからです。そういう意味では、ゴリラズがアメリカで成功したことは象徴的だと考えます。

Gorillaz Live at Glastonbury Festival 2010


3) 息が短いとされる英国アーティストとして、継続、挑戦、蓄積、経験が何よりの武器になることを、途中のブランクを経て2010年代に体現したこと。新しいことにトライしながら過去の体験を無駄にしないできたデーモンとグレアムの学習熱心な姿は、あまりにも泡沫的だったブリットポップの時代の牽引バンドとして極めて高い責任感を伴った尊いものだから。

>>>罪
デーモン以下4人とも英国白人らしい品の良さとルックスの良さがあり、また適度にお洒落だったことから、90年代以降の英国で、ロックはこぎれいで中産階級白人のもの、というイメージが染み付いてしまったこと。90年代、主にモッズという言葉と癒着させたバンドのイメージ戦略によってあまりに英国的であることをアピールしたため、自国のリスナーを国外へ目をむけさせることに時間がかかってしまったこと。また、どう成長し転がっていっても、結局のところポップなフックを持った曲を書いてしまい、そのハスキーな声で人なつこく聴かせてしまう、というデーモンの特性が彼ら自身の最大の強みであることが、00年代にブラーとしての進化を少し弱めてしまったと同時に、UKリスナーの感覚を刷新できなかった点かもしれません。



5. これまでのブラー作品の中で、あなたがもっとも優れていると感じる楽曲をその理由と共に3曲挙げて下さい。

1) Tender

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2) Chemical World

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3) This Is A Low

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月並みなチョイスですみません。いずれもブラー初心者向けを意識したのと、歌詞の内容を重視して選びました。

過去の美しい英国に別れを告げるべく、薬漬けの世の中(“ケミカル・ワールド”)から逃れるかのように海へと入っていく(“ディス・イズ・ア・ロウ”)。こうしたデーモン・アルバーンの英国愛からの脱却を意識した複雑な感情は、実はブリットポップ全盛期における作品で既に垣間見せていました。その後の様々な喧騒でやや遅れてしまったものの、ついには、自分で人生を台なしにしている、と懺悔しては真の愛を求める思いが、デーモンの敬虔なブラック・ミュージック指向と共に真摯に綴られた“テンダー”において、本気で英国を出て他国との関わりの歴史を改めて学び、音楽家として開拓していこうとする宣言として表出されるに至りました。それを決してヒロイックにならず、あくまで大衆音楽としての質の高さを保持しながらポップスへと昇華させていたこれらの曲は、ブラーとして、というだけではなく、歴史的にも白人大衆音楽の進化を伝える上でも重要だと考えます。

そして、これらの曲への自身からの回答としてニュー・アルバム『マジック・ウィップ』に収録されている“マイ・テラコッタ・ハート”をお勧めします。この曲の、「明日ジャワ海を越えて飛んでいくとき/僕の若い地図は持っていくつもり/泳ぐことを思い出させてくれるから」というリリックは、90年代を中心とした過去のキャリアを決して切り離していない、自分たちの経験があってこその今であるとその責任と使命を自覚していることを伝えてくれています。また、“ゴースト・シップ”における“幽霊船に乗って心を沈めていく(中略)湾に出て行くには君の中のランタンに明るく照らしてもらわないと”という部分もまた、自分たちの過去の経験というガイドが重要だ、ということをさりげなく伝えていると考えます。いずれも素晴らしい歌詞です。



6. ブラー4人のメンバー個々について、あなたなりの人物評をお願いします。

デーモン・アルバーン:クレバーな策略家であり、無邪気なブラック・ミュージック・リスナー。過去に最も多く対面取材をしたことがありますが、頭の良さと邪気のなさとの間を行ったり来たりすることで、相手をかく乱させる魅力があるなと何度も感じさせられました。

グレアム・コクソン:最もアーティスティックで創作性に富んだジニアス・プレイヤー。性格は内向きで温厚。まだ世界的に知られていなかったトータスなどの米国のバンドの情報をいち早くバンドに持ち込んだ根っからの音楽ファン。

アレックス・ジェームス:育ちの良さがそのまま姿カタチに出ている愛嬌たっぷりの憎めない青年。『パーク・ライフ』~『グレート・エスケープ』の頃のツアーで、ホーン・セクションとバンド・アンサンブルとをうまく調整する役をこの長身のベーシストが買って出ているのでは、と当時ステージを見ながら何度も思いました。

デイヴ・ロウントゥリー:日本での当時のレコード会社のディレクターと家族ぐるみで今もつきあうなど、人として義理人情にも厚い常識人。今や弁護士としても活動しているというのは適職かも。



7. ブラーにとって何かしらのロール・モデルになったであろう作家、バンドを挙げて、その理由を添えて下さい。また、彼らの理想的なフォロワーを挙げて、その理由についても教えて下さい。

ウィリアム・シェイクスピア:英国庶民の風俗をユーモアを交えて表現し、それを大衆相手に届けて多くの喝采を得た人気作家である、という点。

ジュリアン・コープ:『セイント・ジュリアン』のジャケットで、革ジャンと革パンに身を包んだジュリアン自ら磔の刑になったキリストに扮し、現代の英国人の生活をキリスト教思想を強く否定しながら糾弾した姿勢は、『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』に間違いなく受け継がれているから。もう一つは、デーモンがたまに弾く鍵盤は、ティアドロップ・エクスプローズ時代からジュリアン・コープが重要視してきたキーボードのリフなどに酷似しているから。

ザ・フー:4人編成というフォルムを維持しながら、ドライブ感あるロックンロールと、メランコリックな旋律とを同時に(メンバーの一人が亡くなるまで)表現し続けたという点。また、“ジェネレーション”という感覚を(少なくとも初期は)聴き手に共有させつつも、キャリアを進めるにつれ、個としての意識でそれを上書きしていった点。

今の英国内にフォロワーはいないと思います。



8. この20数年の間、あなたが経験してきたブラーとのいくつもの接近遭遇の中で、もっとも印象的な光景を時系列順にいくつか挙げて下さい。

『モダン・ライフ・イズ・ラビッシュ』リリース後に実現した二度目の来日時にデーモンとジュリアン・コープの現在について雑談した時のこと。デーモンはインタヴュー本筋の話以上に熱心に語りつつも、「ジュリアンに神のご加護があることを願うよ。でも、ジュリアン自身はそんなものはねつけるだろうけどね」とニヒルに笑ったのでした。

渋谷公会堂で行なわれた『パーク・ライフ』での来日公演時、当時のレコード会社のディレクターが最前列の座席を用意してくれたので恥ずかしながらそこで見たのです。“ケミカル・ワールド”でデーモンが一番前の私に手を差し出して握手をしながら数秒感歌ってくれたこと(笑)。上階で見ていた知り合いたちに後からバリバリ笑われましたが、“ケミカル・ワールド”が今も好きな理由の一つはこれだったりします。

ゴリラズのプロモーションでデーモンが急遽来日した際、「もうブラーのアルバムなんて作りたくないんだけど、レコード会社がうるさくってさあ」と、録音機械を止めた瞬間漏らしたこと。また、それに続いて、フェラ・クティがいかに好きか、でもその影響をブラーの中にもたらしていくことがいかに難しいかを語ったこと。



9. この10年間のブラーの不在はポップ・シーンに何をもたらし、彼らの復帰は何をもたらすことになるのでしょうか?

デーモンもグレアムも個別に活動していたので不在感はなかったです。



10. あなたがブラーというバンドを愛してやまない理由、そして、時折彼らに我慢出来なくなる理由、それぞれについて教えて下さい。

フェラ・クティが好きだとか、英国トラッド・フォークに夢中だとか言いつつ、なんだかんだでカジュアルなポップ・ミュージックを作ってしまうサービス精神。そして、そのプロセスにおいてなんだかんだでストラグルしてしまう不器用さ。毎度我慢できないのはアートワークです。




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