わりとエレクトロニカ・バブルの後、雨後の竹の子のように出てきた、ポストロック~エレクトロニカの境界にいるようなアーティスト達。カリブーもわりと、そんな中に括られがちで、そうしたところ故に、ここ日本でも人気があるような気がします。が、その手の音って、サイケデリックで~と、言っときながらあんまりサイケじゃないし、雰囲気ものオンリーなのも多くて、電子音の使い方も必然性を感じないものもちらほら。その辺のサウンドで思うのは、なによりもリズムの”たるさ”。が、しかし、このカリブーの場合はダフニ名義や『スウィム』といったアルバムに象徴されるように、その表現において“リズム”は結構な部分を占めております(といってもそのあたりもまた絶妙ではあるんですが)。ということで、リズムで聴く、カリボウ5曲をドン!
カリブーで“リズム”と言えば、やはり象徴的なのがジャーマン・ロック由来のミニマルなハンマー・ビートでしょう。ハンマー・ビート満載な『ザ・ミルク・オブ・ヒューマン・カインドネス』に収録の本作は、まんまノイ!な疾走するハンマー・ビートがずんずんと突き進みますが、なぜか後半はアフロ・パーカッションとカリンバが乗り込み、いつのまにかアフロ・ポップな地平線に。笑いながら疾走するボアダムス的なサイケデリック感とともに、この開けっぴろげな感じは最近見せませんな。
マニトバ時代のシングルから、初期DJシャドウを彷彿とさせるアブストラクト・ブレイクビーツ的なズンドコ・ファンク・ブレイクス。このあたりの感覚って最近あまりありませんな~。なんとなく、わりと彼のサイケデリック感って初期というかマニトバ時代あたりのサンプリング・ループ多様期にそのソースから見つけた感覚ではないかと、この頃の初期の作品とか聴くと思うわけです。
こちらもハンマー・ビート系。というか、むしろこれの場合はシルバー・アップルスまんまやないけというところも含めてですが。
わりと、モロにハウス~テクノ系によった『スウィム』~ダフニ名義あたりの流れは逆に単調なフォーマットになりがちで、たるくはないんだけど、正直、これだったら他のテクノ/ハウスのアーティストの12インチを……という感じだったんですが、わりとこの曲のようにそうしたテクノ~ハウスのフォーマットを崩した、絶妙なトラップ的ビートが醸し出すアフロ・サイケデリック感がおもしろかったりで、以前のリズム的な面白さもちょうどいい塩梅にミックスされててナイスな曲もちらほら。
リズムということで言えば、わりとマニトバ時代の方がダイナミックにおもしろいことをやっていて、個人的にはこの方向性――ダフニのようないわゆるダンス・ミュージックのフォーマットにきっちり合わせるのでなく――で、やって欲しいものだと。これ、今聴くと、その後のアニコレ周辺のフリー・フォーク勢に非常に近いアプローチというか。
というわけで、リズムで聴くカリボウ5選でした!
「何から聴くべきか、どこを聴くべきか?
謎の多面体音楽生物カリブーはこう聴け!
その①:キュレーション by 天井潤之介」
はこちら。
「何から聴くべきか、どこを聴くべきか?
謎の多面体音楽生物カリブーはこう聴け!
その②:キュレーション by 坂本麻里子」
はこちら。