〈サイン・マガジン〉も含めて色んなメディアの年間総括記事に書かれているので、もはや個人的な感想でもなんでもないのですが、ご多分にもれず2015年はケンドリック・ラマーとディアンジェロに心を持っていかれっぱなしの年でした。そして、そこに少しのタイム・ラグもなく共振しつつ、2015年日本のリアリティを鳴らしていたceroにも。特に、ドクター・ドレの16年振りのアルバムと映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』公開で、コンプトンのギャングスタ・ラップの歴史が締め括られた年に、ケンドリックが新たなコンプトン・シーンの金字塔を打ち立てたことには、運命と呼びたくなるような大きな物語を感じずにはいられません。
一昔前には、ヒップホップにはギャングスタとかマッチョなイメージが付きまとっていて、その偏見が一部の人には受け入れにくいような感覚があったのですが(かくいう僕にもその偏見は確実にありました)、今の『フリースタイルダンジョン』の人気だとか若い世代のユニークなラップの取り入れ方を見ていると、日本での状況も本当に変わったのだと実感します。
これはヒップホップにも音楽にも限らず、あらゆるカルチャーに言えることですが、今の時代は白か黒か、イチかゼロかで判断できるような単純な時代じゃなく、多様だからこそ面白い。ドナルド・トランプにしろISISにしろ、世界を二元論に貶めようとする存在もいるけれど、せっかく今を生きているのなら、そんなつまらない「分かりやすさ」には惑わされることなく多様な価値観の中にある発見を楽しんでいきたいと、改めて強く思います。
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