SIGN OF THE DAY

孤高のモダン・ロックンロール・バンド、
スプーン、オールタイム・ベスト5曲。
その③:キュレーション by 天野龍太郎
by RYUTARO AMANO August 04, 2014
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孤高のモダン・ロックンロール・バンド、<br />
スプーン、オールタイム・ベスト5曲。<br />
その③:キュレーション by 天野龍太郎

5. Advance Cassette (1998)

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スプーンの2作目である『ア・シリーズ・オブ・スニークス』(1998年)はいわくつきの作品だ。思うように売上が伸びなかったためにメジャーの〈エレクトラ〉との契約後すぐにクビになる、という憂き目にバンドは遭ってしまう。でも、『ア・シリーズ・オブ・スニークス』は僕のフェイヴァリットだ。ペイヴメントの『スランティッド・アンド・エンチャンティッド』のような粗削りでパンキッシュかつストレンジな感触がある(だから、スプーンの実質的なデビュー作と言ってもいい)。この“アドヴァンス・カセット”は『ブライトゥン・ザ・コーナーズ』に入っていてもおかしくないような美しく感傷的な曲で、うっすらと淡いサイケデリアを纏っている。「もう二度とあの悲しい歌は聞かないだろう」、と歌うブリット・ダニエルは失われたカセット・テープと女性とを重ねている。

4. Do You (2014)

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スプーンというバンドの音楽には(バンド名の由来になった)カンの実験的なサイケデリア、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとテレヴィジョンとワイアーのミニマリズム、そしてピクシーズとペイヴメントが息づいている。でも、オリヴィア・トレマー・コントロールにとってのビーチ・ボーイズはスプーンにとってはビートルズだろう(だからこそ50年代から60年代のリズム&ブルースとロックンロールがスプーンの音楽の父となっている)。

スプーンのディスコグラフィはプレ・パンク/ポスト・パンクのミニマリズムとリズム&ブルース/ロックンロール的なソングライティングとの緊張関係で編まれている、と僕は思う。最新作となる『ゼイ・ウォント・マイ・ソウル』はソングライティングの面ではどちらかというと後者のシンプルな色合いが強いが、前作『トランスファレンス』のような音の隙間を活かした引き算のプロダクションと比べるともっと温もりのある、荒削りでノイジーな音作りになっている(デイヴ・フリッドマンの貢献が大きいのだろう)。『ゼイ・ウォント・マイ・ソウル』のザラッとした音のテクスチャー、音と音のあいだに隙間をデザインしない音作りはスプーンの歴史において異色だ。

収録された曲の中でもとびきりポップなこの曲は、すごく魅力的なメロディを持っている。シンプルなピアノはロックンロールっぽく、飾り気のないギター・リフはプレ・パンクっぽく響く。

3. Sister Jack (2005)

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実にスプーンらしいシンプルなこのロックンロール・チューンは5作目の『ギミー・フィクション』(2005年)から。こういう胸に迫るような、でも気取っていないメロディのロックンロールを書けるからスプーンとブリット・ダニエルというソングライターは信用できる、と思う(そしてそれは彼らがR.E.M.の血を引いていることの証左だ)。タイムレス・メロディ、っていうのはきっとこういうもののことを言うんだろう。無造作なギターのストロークや無邪気なタンバリン、ぴったりと寄り添ってドライヴするベースとドラムス、そしてフックでドカドカ鳴るタムにロック・バンドの快楽と醍醐味が詰まっている。「シスター・ジャックって誰のことなの?」という疑問に、ブリット・ダニエルはヴィデオに出てくる変なおじさんシスターのことだと答えているのは笑えるエピソード。僕が彼らのベスト・アルバムをコンパイルするとしたらA面の最後に入れたいな。

2. The Underdog (2007)

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大傑作『ガ・ガ・ガ・ガ・ガ』(2007年)より。アコースティック・ギターをガシャガシャとかき鳴らすイントロからしてどうにもワクワクしてしまう。歌詞はかつてメジャー・レーベルとの契約を切られたことについてのもの、というふうにも憶測されている。ホーンをうまくあしらったアレンジが多幸感を生み出していて、中指を斜めに立てているようなこの曲を豊穣なものにしている。左右に思いっきり振った広がりのあるミックスもスプーンらしい。初期のポール・トーマス・アンダーソンっぽいMVが実にクール。というのも、そう、この曲のプロデューサーはフィオナ・アップルの『真実』を作り、PTAの『マグノリア』のスコアを書いたあのジョン・ブライオンだ。“ジ・アンダードッグ”ではスプーンとジョン・ブライオンのモダナイズされたアメリカーナ的感覚が見事に結晶化している。

1. The Way We Get By (2002)

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スプーンのファンの多くが愛しているシンプルなロック・アルバム『ガールズ・キャン・テル』から打って変わって、僕がスプーンのディスコグラフィにおける最重要作だと信じてやまない『キル・ザ・ムーンライト』(2002年)ではバンドのミニマリスティックで実験的な側面が露わになっている。のちのスプーンのサウンド・プロダクションを決定づけたこのアルバムでは、どの曲も楽曲の骨組みだけを抜き出してその隙間に楽器を配置したかのような風変わりな十全感がある。特に心優しいスーサイドのような“スモール・ステイクス”、ヴォイス・パーカッションをドラム代わりに使った“ステイ・ドント・ゴー”、ダビーで奇妙なサイケデリアを湛えた“ペーパー・タイガー”の音作りにはいま聞いても目を見張るものがある。一方、“サムワン・サムシング”や“ユー・ガッタ・フィール・イット”は、スプーンがヴェルヴェット・アンダーグラウンドとリズム&ブルースとの嫡子であることをわかりやすく告げている。

それでもやはり、僕はスプーンの、そしてソングライターでありヴォーカリストであるブリット・ダニエルのソウルフルでロックンロールな側面が好きなのだ(ジム・イーノが言うとおり、スプーンの音楽とはロックンロールなのだ)。シンプルなコードだけで作られた、ロックンロール・ピアノが基調となっているこの曲は例によって隙間だらけだけど、ブリット・ダニエルの歌からはパッションがこぼれ出している。ベースが入り、次にドラムが入ってくる構成も最高だ。「奇妙な罪(some weird sin)とセックスするんだ/そう、それが僕らがなんとかやっていく方法/それが僕らがなんとかやっていく方法なんだ」、とイギー・ポップへのオマージュが散りばめられたリリックには書かれている。それがスプーンというバンドのやりかたなのだ。



孤高のモダン・ロックンロール・バンド、
スプーン、オールタイム・ベスト5曲。
その④:キュレーション by 田中宗一郎
はこちら。

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