今年の〈サマーソニック〉で、まず一番に観てみたいアーティストと言えば、ゴースト。誰が見ても、えっ、なにこれ?というか、日本にもこんな人いましたよね、的な装束にメイクだし、そういった見た目とアンチ・クライストという、ある意味相当ガチガチなコンセプトで固めているスウェーデンのバンド。なのですが、何段階にもわたって観客(リスナー)を、はぐらかすところが興味深く、特にヴォーカルのネイムレス・グールが妙。イントロで引っ張っておいてもらって、満を持してステージに出てくるわりには、彼の挙動(というかステージ・アクション)はヘンに落ち着いている。しかも、歌いだせば、その歌声は、驚くべきことに、なぜかデュラン・デュランのサイモン・ル・ボンぽい。と書いてしまえば、昨年のアルバム『インフェスティスマム』の日本盤に、デペッシュ・モードの“ウェイティング・フォー・ザ・ナイト”のカヴァーが収録されていたのも納得できるかもしれません。この妙に?いや、実はかなりポップな感触が、この人たちの最大の武器なのかもしれません。高度にコンセプチュアルなのか否か、正体がつかめないあたりが、ゴーストたるゆえんなのでしょうか!
そういった高度なコンセプト、高度でなくてもいいのだけれど、そのコンセプトの「解れ」みたいのを感じ取れるのも、ライヴの醍醐味ではないでしょうか。きゃりーぱみゅぱみゅも、「カワイイ」とかいう表向きのイメージと違って、常にどこか物悲しさやそこはかとない不安感が漂っていて、聴くたびにそこが引っかかってきます。そういった全然「はじけない」部分を、最近の“ゆめのはじまりんりん”や“きらきらキラー”では、表に出してきていることもあって、どういう表現にむかってゆくのかなあ、という興味があります。
サウンド的には、“ゆめのはじまりんりん”も“きらきらキラー”も80年前後のYMOに追うところが大きいように聞こえましたが、YMO全盛期に、そのつながりでナマで何度となく聴いていた“在広東少年”を、砂原良徳と組んでセルフ・カヴァーしたヴァージョンを最新作『飛ばしていくよ』に入れていた矢野顕子。このアルバムは95年の『Piano Nightly』で確立したスタイルにヴォーカロイドなど2013年的なサウンド指向をぶつけたものなので、今回、このタイミングで、ピアノ一台に、何をどう組み合わせてくるのか、注目してます。
ここで、やや余談になりますが、思いだしたついで書いてしまうと、ナマで見るとなると、矢野顕子よりは年下とはいえ、50歳前後に位置する(ここで同列にするのもなんなのですが)浜田麻里や森高千里の「今のパフォーマンス」も気になります。
一方、色んな意味での期待と余計な心配が入り混じっているのが、マウンテン・ステージに登場する二人のバンクス。アジーリア・バンクスとバンクス。前者は、ライヴでも、ボールルーム・ハウス(ヴォーグ)やトラップやローンの曲にまでラップを載せてしまうアッパーなスタイルで貫く人ですが、このところ新曲を出すことよりも、同業者をツイッターなどでディスってなんぼ、という姿勢を強めていて、日本の大人しい観客をドついてこないかと……という点に、それとは逆に、バンクスのほうは、我々観客サイドが、じっと耳を澄ませてあげたり、時には必要以上盛り上げてあげたほうがいいでは?といった点で、です。
で、スウェーデンのバンドで書きだしたので、締めも……というわけではないですが、リトル・ドラゴンが、マウンテン・ステージの他に、オールナイト枠のミッドナイト・ソニック枠にも出演することになっています。そこで、昨年発表したサウス・アフリカ・ミックスみたいな選曲で、クワイトやアフロ・ハウスを楽しめるDJタイムなども含まれていたら、楽しいだろうな、と妄想してみましたっ!
サインマグの各ライター陣が本音で選んだ
〈サマーソニック〉お薦めアクト・トップ5
その③:キュレーション by 清水祐也
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「さて〈サマーソニック2014〉なんですが、
果たしてアークティック・モンキーズ以外に
見どころはあるのか? 検証してみますよ。」
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