2011年以来気がつき考えようとしても漠としていた様々なことどもへ漸く手がかりを得たような1年でした。現在進行のメディアとして、例えば、若いYouTuberたち、例えばヘラヘラ三銃士、さんこいち、もしくはkemioとラッパーちゃんみなのやりとりや会話を観たり聞いて笑うと同時に若さや心の揺れ動きは20世紀と変わらないように思えます。一方で『ブラジル 消えゆく民主主義』に映し出されているように20世紀以前に考えられ、自分が生きてきたなかで現実化されたと思しき価値や概念にもし何かが起こっているとしたら、それに対してアートは積極的な意味を持つか。例えば、“享楽的”な“ポップ”音楽をそうした世界の変動に位置付け聴いてみることは可能か。実は長い時間を経てこうした考え方に自分は至ったのではなく、最初に夢中になった音楽がヒップホップである人間としては、普遍的な美しさや優れた演奏なんて無条件に信じられる訳がない。そうした始まりがありました。ヒップホップが蔑まれてきたことがあるとしたら、奴隷の子孫たちが作った雑音だという白人至上主義的眼差しと関係ない訳がない。こうした視線と私たち(アジア人、もしくは日本人といってもいい)が無縁な訳もないですよね。そのことで幾つかのドキュメンタリーを選びました。『ヒルカラナンデス』はラッパーとコメディアンが始めた政治と社会についてのテレビ以後の形式を探るもので、コミュニケーションに肯定的であり、いわゆる配信の中では最も優れていると考えています。
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2020年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 萩原麻理
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2020年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
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2020年
年間ベスト・アルバム 50