近年、不安定な世界情勢と発達を続けるSNSの影響からか、日本の文化と歴史に対する意識が強まっている。もちろん海外の音楽や映画/ドラマに対する視点も失ってはいないが、いま日本のそれに注目しない手はありえないと直感が働いているのだ。そんな視点からすれば、2022年は「オタク文化こそが日本のメイン・カルチャーである」と定義づけられた決定的な年だった。まず庵野秀明氏の紫綬褒章受賞は、「ジブリ作品だけは大人も楽しめる例外である」というオタク・カルチャーについての支配的な価値観がついに覆ったことを象徴する出来事だ。日本のトップ・ミュージシャンたちがこぞってアニメ作品の主題歌を手がける現状を見てもそれは明らかだろう。そして、それに続く流れとして今注目すべきは『週刊少年ジャンプ』文化の圧倒的な強さだ。『ONE PIECE FILM RED』が200億円にも届かんとする興行収入を叩き出し、3DCGをフル活用した『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』が日本的セルアニメの新たな可能性を提示し、北米圏でもヒットと驚異的な高評価を獲得。同様に数年ぶりに連載を再開した『HUNTER×HUNTER』の作者・冨樫義博のTwitterアカウントには世界中から凄まじい数の多言語コメントが寄せられ、その国際的な人気と影響力を可視化。ダメ押しとなったのが、原作者自ら監督を務めた『THE FIRST SLAM DUNK』の絶賛と大ヒットである。これらの現象を指して「ノスタルジー」と呼ぶのは、あまりに短絡的だ。アメリカの『スパイダーマン』『バットマン』『スター・ウォーズ』『ゲーム・オブ・スローンズ』『トップガン』、イギリスの『007』に目を向けてみれば、世界中で世代を超えて愛されるシリーズ作品がいかに貴重で、そのヴィークルを利用することで新たな表現が生み出されてきたのかがよく分かるだろう。そして日本の「オタク・カルチャー」は今ようやく「外の世界」を認知し、本格的に羽ばたこうとしているところなのだ。願わくはこの流れが音楽にも……と思っていたところに、藤井風“死ぬのがいいわ”の世界的バズが発生。そして平手友梨奈のHYBE移籍(あくまでHYBE JAPANであるところに一抹の不安は残るが)。2023年は庵野秀明監督『シン・仮面ライダー』、宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』公開も控えており、どう考えてもマイルストーンとなる一年になりそうだ。
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2022年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 木津毅
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2022年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選
2022年
年間ベスト・アルバム 50