SIGN OF THE DAY

〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
2018年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平
by KOHEI YAGI January 04, 2019
〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、<br />
2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平

>>>2018年のベスト・アルバム TOP 5

5. 長谷川白紙 / 草木萌動

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2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平

4. The Weeknd / My Dear Melancholy

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2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平

3. Sinjin Hawke & Zora Jones / Vicious Circles

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2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平

2. Puma Blue / Blood Loss

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2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平

1. Moses Sumney / Black In Deep Red, 2014

〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、<br />
2018年のベスト・アルバム、ソング<br />
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平



ティエラ・ワック『ワック・ワールド』やカニエ・ウェストが去年2018年に手掛けた作品群がフル・アルバムというフォーマットとして広がりを持つなら、EPやミニ・アルバムとフル・アルバムの間に実質的な差はなくなる。だからぼくは、ここではあえてEP/ミニ・アルバムのみの年間ベスト・アルバムを作ってみた。また、字幅もないので、取り繕ったような統一感よりも、ぼくが興味深く聴いた作品を、緊張感を持ってばらばらと並べるということも意識した。スーパーフラットもポスト・ジャンルもあたりまえな環境にいるぼくたちは、もっと無暗に、傍若無人に鼓膜を震わせ、歴史を読み替え、現在を遊び尽くすべきだ。

ボカロ~アニソン以降ともいえるBPMやヴァリエーション豊かな展開が持つ性急な複雑性をキャッチーに仕立てるソングライティング・センスが見事な長谷川白紙『草木萌動』は、日本のガラパゴスな音楽環境が産み落とした優秀な果実ともいえ、スクリレックスやマイク・ウィル・メイド・イット、ダフト・パンクのメンバーをはじめとしたビッグネーム揃いのプロデューサーを迎えながら、じつに内省的な作品を作り上げてきた『マイ・ディア・メランコリー』は、ウィーケンドのディープな作家性をリスナーに再認識させた。

今年のエクスペリメンタル・ミュージックはポップスとしても機能しうるものが多く産み出されたわけだが、シンジン・ホーク&ゾラ・ジョーンズ『ヴィシャス・サークルズ』はUSメインストリームのポップスのバックトラックになっていてもおかしくない、どこかメジャー感のあるサウンドが抜群に面白い。

インディR&B以降、アンビエント・テイストのトラック/演奏をバックに歌うSSWが増えたが、プーマ・ブルーはその極北といっていい。サウス・ロンドンの喧噪にあまりノレていないぼくだけど、本作にはノックアウトされた。

最も強烈だったのがモーゼス・サムニーの『ブラック・イン・ディープ・レッド 2014』。モーゼス・サムニーは去年リリースしたもう一枚のEP『メイク・アウト・イン・マイ・カー:カメレオン・スウィート』も面白かったが、シャバカ・ハッチングスやジャマイア・ウィリアムズといった気鋭のジャズメンたちを召喚しながら、『アロマンティシズム』よりもさらに先の境地へ向かいながらマイケル・ブラウン射殺事件についての問題提起もはらむ本作は、2018年屈指のマスターピースだった。

>>>2018年のベスト・ソング TOP 5

5. Thom Yorke / Suspirium

4. Sophie / Faceshopping

3. Richard Reed Parry / Sai No Kawara (River of Death) / On the Ground

2. Childish Gambino / Feels Like Summer

1. Aphex Twin / T69 Collapse



『リズと青い鳥』における山田尚子監督と劇伴を担当した牛尾憲輔(agraph)のコンビネーションは見事だった。前作『聲の形』よりもアニメーションと音楽のインタラクションがより緊密になり、劇中の音響もふくめ画期的な成果だった。『リズと青い鳥』に限らず、去年のぼくはアニメーションと音楽のユニークな繋がりに興味を持つことが多かった。そういうわけで、ベスト・ソングをチョイスする際の大きなポイントはアニメーションを用いて制作されたMVだ。

ブリストルのアニメーター、ラフマーシーが監督する“サスペリウム”のMVは、トム・ヨークが初めて劇伴を担当する映画『サスペリア』のテーマ・ソングと恐ろしいくらいにマッチしている。ダンス・シーンにピンクとブルーの色彩をレンダリングすることで一気に対象を抽象化し、不気味で退廃的なムードを演出。ラフマーシーは自身の作品の特徴を「Ruff, Rugged & Raw」と言い表しているが、このMVはその極地。

“フェイスショッピング”でメタリックなインダストリアル・サウンドをまといながら「I'm real when I shop my face」と歌うそのアティテュードには、ソフィーという音楽家の本質が垣間見える。傑作『オイル・オブ・エヴリ・パールズ・インサイズ』でチージーなサウンドを斬新な形で響かせ、ジェンダーの移ろいやメタモルフォーゼへの共感を示したこの音楽家だからこその奇妙でグロテスクな自作MV。

インディ・クラシックの旗手でもあったアーケイド・ファイアのリチャード・リード・ペリーは、自身の最新のソロ作『クワイエット・リヴァー・オブ・ダストVol 1』でフォーキーなサウンドに路線変更。その幽玄なサウンドとカレブ・ウッド監督の世界観が有機的な結びつきをみせ、2018年屈指のユニークなMVができあがった。

“フィールズ・ライク・サマー”の「I really thought this world would change But it seems like the same」というラインが指し示すのは、歌詞にあるような環境問題に限ったことではない。グレッグ・シャープの手によるアニメーションに漂う虚脱感と、そこに登場する実在の人物たちのふるまい、彼らを横目に淡々と歩き続ける主人公を観ればそれは明白。何か起きそうだったけど結局何も起きない、“ディス・イズ・アメリカ”とはまた別の、切実なリアルがここにある。

今、世界で最も大胆でユニークなヴィジュアル・アーティストのひとりがウィアードコアだ。彼の有名な仕事にエイフェックス・ツインとのコラボレーションがあるが、今回の作品“T69・コラプス”は間違いなく最高傑作。エイフェックス・ツインの繰り出す硬質で入り組んだビートと、コラージュも含めた生成的な3Dアニメーションのインタラクションがもたらす快楽は破壊的ですらある。


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