我々〈サイン・マガジン〉は、2018年はここ10年ほどの間に築き上げられてきた一つの時代に区切りがつき、新たなフェーズへの移行が始まろうとしている年ではないか、と位置付けた。
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2018年
年間ベスト・アルバム 50
上の記事でも触れているように、2010年代の音楽文化の推進力となったのは、かつてはオルタナティヴなカルチャーの震源地だったインターネットを利用し、既存の音楽産業の外側から登場した新世代だった。今や時代を代表するトップ・スターであるウィークエンドやフランク・オーシャンが、フリー・ダウンロードのミックステープで注目を集めたのが2011年。そして、ここ数年はストリーミング・サービスの本格的な台頭やヒット・チャートの集計方法の変更などによって、ネット以降の音楽産業は商業面でのルール整備が大きく進んでいる。その結果、2018年に目立つことになったのは、現代的な勝利の方程式を知り尽くしたドレイクやカーディ・Bやポスト・マローンやシックスナインなどの圧勝だった。新たなルールの模索から整備、その徹底的な実践までがこの10年ほどのサイクルで完成したことによって、時代に一つの区切りがついたのは間違いない。
と同時に、2018年は新たな時代の機運も感じられた年だった。ラテン圏や東アジアの世界的なプレゼンスの向上に見られる「脱・北米中心」の動き、エラ・メイのヒットに象徴されるオーセンティック回帰、あるいはアリアナ・グランデの“サンキュー、ネクスト”が示した過去への感謝と決別という姿勢――こうしたすべてが複雑に入り組んだ形で起こっていたからこそ、2018年はどこか混沌としていて、奇妙な一年だったと感じられたのではないか。
それでは、2018年とは〈サイン・マガジン〉に寄稿しているライターたちにとっては、どのような年だったのか? それを明らかにしてもらうのが、この毎年恒例の個人ベスト企画だ。
フォーマットは昨年と同じ。項目は①ベスト・アルバム、②ベスト・ソング、③ベスト・ドラマ/映画の3つで、そのうち2項目以上を選出してもらっている。どの項目を選ぶか、もしくは3項目すべて選出するかはすべてライター各自に任せている。
各々の視点と個人的実感から2018年を位置づけてもらうことで、2018年の輪郭はより明瞭に浮かび上がってくるだろう。そして、2019年を考える上での何かしらのヒントもそこからは感じ取ることが出来るはずだ。
萩原麻理の2018年ベスト
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小林雅明の2018年ベスト
木津毅の2018年ベスト
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collage graphics by DaisukeYoshinO)))