SIGN OF THE DAY

【短期集中連載④】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:ドリーム・ワイフ編
by YOSHIHARU KOBAYASHI April 24, 2018
【短期集中連載④】英国インディ・ロックの<br />
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を<br />
その当事者に訊く:ドリーム・ワイフ編

どんな音楽シーンにも必ず変化の時は訪れる。ゼロ年代初頭の「イースト・ロンドン・シーン」はリバティーンズとその仲間たちのコミュニティを指す言葉だったのが、徐々にその定義が拡張され、ゼロ年代半ば以降はイースト・ロンドンに拠点を置く若手バンド全般を総称するような言葉へと変容していったように。そして、生まれて間もないサウス・ロンドン・シーンも、今、もしかしたら最初の変化の時期を迎えているのかもしれない。

当事者たちの発言からも明らかな通り、サウス・ロンドン・シーンとはブリクストンにある〈ウィンドミル〉というヴェニュー/パブを軸としたバンドたちの自然発生的なコミュニティだ。今は無きブリクストンの〈クイーンズ・ヘッド〉を根城にしていたファット・ホワイト・ファミリーがひとつの指針となっているのも大きな特徴。だが、シーンが発展するにつれ、そうしたローカリズムに捉われない動きも顕在化し始めている。例えば、サウス・ロンドンの一翼を担うドリーム・ワイフの存在はその絶好のサンプルだろう。

現在はサウス・ロンドンに拠点を置くドリーム・ワイフだが、結成の地はブライトン。ヴォーカルのラケル・ミョルはアイスランド生まれのカリフォルニア育ちだ。以下の対話からもわかるように、彼女たちはいい意味で〈ウィンドミル〉もファット・ホワイト・ファミリーも特別視していない。シェイムやゴート・ガールのような生粋のサウス・ロンドンのバンドとは違い、その磁場から自由なアウトサイダーだからこその、軽やかでフラットな視点がある。

ほぼ死に体の〈NME〉がシェイム、レジー・スノウなどと並んで満点をつけた彼女たちのデビュー・アルバム『ドリーム・ワイフ』からも、その際立った個性を感じ取れるはずだ。本作を貫くのは、サウス・ロンドンのバンドに多いスカムなポストパンクとは明らかに異質である、ポップで軽快なガレージ・パンク。捉えようによっては、オーセンティックなハード・ロックと言っていいかもしれない。

“ヘイ・ハートブレイカー”はリバティーンズと60年代ガール・グループの衝突のようだし、「I am not my body I am somebody(私はただの体じゃない、私は一人の人間)」というパンチラインを持つ“サムバディ”はデュア・リパ“ニュー・ルールズ”やチャーリー・XCX“ボーイズ”に対するインディからの回答とも受け取れる。

Dream Wife / Hey Heartbreaker

Dream Wife / Somebody


良くも悪くもアンダーグラウンド志向が強い今のサウス・ロンドン・シーンにあって、マドンナやデヴィッド・ボウイのような「ポップ」を理想に掲げる彼女たちは、シーンの新たな可能性を示唆しているとも言えるだろう。だからこそ、サウス・ロンドン・シーンの実態に迫る短期集中連載の最終回には、ドリーム・ワイフのラケルに登場を願った。

未読の方は、ぜひ連載の第一回から全てに目を通してほしい。


【短期集中連載①】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:シェイム編


【短期集中連載②】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:ウィンドミル編


【短期集中連載③】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:ソー・ヤング編





●あなたはアイスランド出身ですけど、ブライトンのアート・スクールでバンドを結成して、その後、ロンドンに引っ越したんですよね?

「基本的にはアート・スクールを卒業した後……ブライトンはロンドンから1時間くらいの町なんだけど、そこでみんなアート・スクールに通ってて。在学中にバンドを結成して、それから卒業して、ロンドンに移ってきたのが2年くらい前かな。それしか選択肢がないっていうか、理に適うチョイスだったから。大学で知り合った友達やコラボレーターもみんなすでにロンドンに引っ越してて。そういう人たちに会いに行って、ライヴや面白そうなイヴェントに出かけると、またすごく面白い人たちに大勢紹介してもらった。みんな大学を出たばかりで。で、そういう人たちを通じて、私たち、『ワオ、ロンドンに住まなきゃ!』って思った。ものすごく創造性があったの。実際、私たちのヴィデオや写真、アニメを手がけてるのも彼らだし、いろんなプロジェクトでコラボレーションしてる。もしあのままブライトンにいたら……ブライトンはいい場所だし大学に通うにはぴったりだったけど、出てほんとよかった、とも思ってる(笑)」

●ここ1~2年でサウス・ロンドンを中心にバンド・シーンがまた盛り上がりを見せているように思いますが、あなたもロンドンに越してきて、そういったことは肌で感じます?

「ブライトンからロンドンに移ったとき、エキサイティングなバンドと大勢知り合ったんだけど、私たち今はサウス・ロンドンに住んでて。ここにはほんとにものすごく刺激的なシーンがある。その理由は、今ここから出てきてるバンドが、必ずしも他の人を喜ばせるために音楽を作ってるんじゃないからじゃないかな。『こういう層に受けるだろう』とか、そういうんじゃない。自分たちが楽しいことをやってるのよ」

●今はあなたたちもサウス・ロンドンのコミュニティの一部だという実感はありますか?

「んー、たぶんね(笑)。おかしいのは、ブライトンにいた頃、私たちは音楽シーンなんていうのに縁がなくて。アート・スクールにいただけで……音楽シーンっていうよりドラァグ(drag)・シーンの一部だったな。ドラァグ・クィーンやってる友だちが多くて、ドラァグも盛んだったから。でも実際、ロンドンに移ってきてよかったと思う。まず第一に、みんな超フレンドリーなの。バンドにはロンドン出身の人もいるけど、働くためにロンドンに来た人たちが多くて。で、みんな行動範囲が一緒。例えばバーに行ったら、そこにいるのはほとんどがバンドのメンバーで、みんな気さくで。ライヴをやったり、小さなフェスに出たり、普通のフェスに出るうちにどんどん親しくなるしね。シェイムとは2週間前にオーストラリアを一緒にツアーして、仲よくなったのよ(笑)。だから、ロンドンのバンドが外国に行ってそこで会っても……グループとして気が合うんだと思うな。UKからは今、ほんとにたくさんエキサイティングなバンドが出てきてる。特にギター・ミュージックのバンド。例えば、ウルフ・アリスは知ってる?」

●ええ、知ってます。

「ウルフ・アリスもすごく面白いギター・ミュージックをやってると思う。他にも大勢いる。チャイルドフッド、マジック・ギャング。特にギター・ミュージックで、本当にエキサイティングなことが起きてると思う」

The Magic Gang / Getting Along


「私たち、今ここにいられて、ほんとによかったと思ってて。例えば、5年前にバンドを作ってたら同じようにはならなかった。今起きてることに加わっていることは、すごく嬉しい。みんなフレンドリーだしね。そこは特に好き。だからロンドンの大きなスケールのシーン、っていうのは存在しなくて、ロンドンの大きなファミリーがあるだけじゃないかな(笑)」

●シェイムとは一緒にツアーをやったということですが、彼らのことはどう評価していますか?

「実際、シェイムとは仲がいいし、私たちシェイムのことは大好き。彼らのやってることで面白いのは、ものすごくオーセンティックだってところだと思う。ステージでは100%力を出し切ってるし、よく一緒にふざけて言ってるの、『ロックはエクストリーム・スポーツだ』って」

●なるほど(笑)。

「シェイムは誠実で正統的なパフォーマンスを見せるのよ。しかも幼馴染みで、みんな親友なのが見ててわかる。即席のバンドとは違って、友だち同士だってことが伝わってくるの」

●シェイムを筆頭に、サウス・ロンドンのバンドはファット・ホワイト・ファミリーからの影響をひとつの起点としているバンドが多いですが、ドリーム・ワイフはどんなヴィジョンで始めたのですか?

「ドリーム・ワイフを始めたときは、基本的にはとにかくバンドを始めたのよね。自分たちがどんな音楽をやるのか、私たちにもわからなかった。もしかしたらヒップホップ・バンドになってたかもしれないけど、そうしてたらあんまりいいバンドにはならなかっただろうな(笑)。でも、その時に自分たちが聴いてた音楽を思い出して、ただプレイしはじめた」

●具体的な影響というと?

「影響としては実際、親が聴いてた音楽っていうのがすごくあって。親のレコード・コレクションね。実はそれって、あとになって取材とか受けるようになって、自分たちでも気づいたところなの。『父や母のテイストと近いな』って。イギリスでもアイスランドでも、80年代ってパンク・シーンやポストパンク・シーンがあって、トーキング・ヘッズやニュー・オーダー、いろんなクロスオーヴァーがあった。私たちの親はそんな80年代にティーンエイジャーだったの。彼らにとってはそのころの音楽が一番エキサイティングで、それが私たちにも浸透してる。個人的に、私にとっても一番刺激的な音楽って、80年代に起きてたりするし。それが今の私たちにとって、大きな影響になってる。プレイするまで気づかなかったんだけど(笑)」

Talking Heads / Once in a Lifetime


●〈ソー・ヤング〉のサム・フォードは、〈ウィンドミル〉が今のサウス・ロンドンのシーンの拠点なんだ、と言っていました。その実感はあなたも持っていますか?

「うーん、たぶんね。そのヴェニューは知ってる。安くてイージーな場所っていうのかな? そういうヴェニューだと、やっぱり新しいバンドがラインナップに出やすいし、そこからバンドが出てきてる。〈ウィンドミル〉と、あとイースト・ロンドンに〈シャックルウェル・アームズ〉っていうヴェニューがあるの。その二つが、バンドとして知られてなくても比較的出やすいヴェニューで、だからいろんな音楽があるのよね。ギター・ミュージックも多くて、クラウドも面白いし。いろんなバンドがハングアウトする場所でもあるから、いろんな人と知り合える。だから、そういうヴェニューがあるのはすごくいいと思う。新しい音楽をチェックしたり、新しい人と知り合うためのイージーなアクセスなの。これからも変に改装されたり、マンションになったりしないといいんだけど(笑)」

●日本から見ていると突如ロンドンからたくさんのいいバンドが生まれ、シーンが出来たように感じるのですが、それは可視化されていなかっただけで以前から存在していたのでしょうか? それとも、本当にここ最近の動き?

「私たちはかなり新しいと思うな。つまり、歴史を振り返っても、ブリットポップがあって、インディ・バンドが出てきて、それぞれに盛り上がっては、また下火になったでしょう? やっぱり波があるもので、今はまた波が来てて、それがハッピーなのよね。私はギター・ミュージックが大好きだから(笑)。10年ごととかのサイクルなんだと思う。で、今はまた盛り上がりはじめてるのかも」

●なるほど。

「でも言っておきたいのは、これは別に他のジャンルとの競争とかじゃないってこと。単にギター・ミュージックはここしばらく人が気に留めてなかったジャンルで、でもいい音楽で。バンドにしても同じ。今のバンドが作ってる音楽は、その時人気がないにしろ、自分たちが唯一作りたい音楽だから、やってるの。私たちだって、別に他の人がどういう音楽を作ってるかなんて考えもせず、ただ私たちが好きな音楽、プレイしたい音楽を作りはじめただけで。で、この1年くらいで『ギター・シーンが盛り上がってる』みたいな話を聞くようになったんだけど(笑)。それはかなり最近ね。でも、日本にもそれが届くなんて、すごくクール!」

●実際、今のロンドンのシーンはどういったところがエキサイティングだと感じますか?

「私はアイスランドのレイキャビク出身なんだけど、ロンドンが違うと思うところは、本当に毎晩たくさんライヴが開かれてること。それがすごく好き。街として甘やかされてるって思うくらい! どこでも近くのヴェニューに行けば、素晴らしいバンドが見られるんだから。ライヴ自体にもそのエネルギーが溢れてる。ここ最近はコンピューターを使ったインディ・ミュージックみたいなのが続いてて、それもまあ面白いんだけど、やっぱりロックのライヴに行って、バンドを観るのにはかなわないから。家で音楽を聴くのと、出かけてライヴで観るのとは全然違う。小さなヴェニューで踊って、クレイジーになって――もちろん、ベストな意味でね――生きてるのを感じること。それってライヴでしか味わえないでしょ? それこそみんなが求めてることで、それを感じたいんだと思う。ロック、ギター・ミュージックがまた注目されてる理由はそれじゃないかな。そのフィーリングを忘れてたのにみんな気づいたっていうか」

●なるほど。

「だからライヴに出かけてるし、私たちも自分たちはライヴ・バンドだと思ってる。始めて1年は何も録音しなかったしね(笑)。とにかくライヴをやって、自分たちのサウンドを理解したかった。スタジオとかで他の人に指図される前に、それが何か見極めたくて。今はライヴがすごく重要だからこそ、注目されてるとも言えるんじゃないかな。シェイムとか、ほんとライヴが驚異的だし、ロンドンの他のいろんなバンドもそう。どこかの地下の小さなヴェニューで、そんなバンドを観るチャンスがあること自体グレイトだと私は思う。レイキャビクだとそんなことほとんどないし、もう少しコンスタントにライヴがあればいいんだけど。だから、ロンドンはほんと贅沢! 私はそこが気に入ってる」

●今のバンド・シーンはそれぞれに音楽性が違うだけではなく、オーディエンスの幅も広く、多様性があると〈ウィンドミル〉のティム・ペリーが言っていましたが、あなたの実感としてはどうですか?

「オーディエンスもいろんな人たちが混ざってる。私たちのライヴにも、どんな人たちが来てるか見ると、モッシュ・ピットで跳ねてるような14歳のバッドアスな女の子たちもいれば、年取ったパンクのおじいさんもいたり。70年代のパンクの服を着て、ステージ前で陣取ってたりするの。バラバラな人たちが来てて、一つのグループなんかじゃない。それもエキサイティングな理由の一つよね。全然違う人たちがみんなライヴ音楽への情熱を抱いていて、だからこそそこにいるんだから」

●ええ。

「ロンドンだとそうなんだけど、アイスランドでそんな場所ってあんまりない。アイスランドだとライヴはバーで開かれるから、ほとんどが20歳以上でないと入れなくて。バカバカしくない? もっと若いクラウドにも、音楽を体験するのが許されるべきだと思う。実際、『ライヴ初めて』みたいな子がいると、その場に伝わるのよね。大勢がまた子どもになれるっていうか、そういうフィーリングが生まれたりするから」

●バンドのシーンとは少し違うかもしれませんが、サウス・ロンドンではキング・クルールとか、コスモ・パイク、ロイル・カーナーみたいなジャズやヒップホップも取り込んだようなミュージシャン、ライヴ・ミュージックのシーンもあると思います。そこに対するあなたの意見を教えてください。

「いろんな影響をミックスするのはいつだってエキサイティングだと思う。キング・クルールと彼のバンドのメンバーは、ミュージシャンを訓練するような音楽学校に通ってたはず。だからまた別のジャンルの影響を受けてて。彼らはエキサイティングよね。実は私の親友がキング・クルールのツアー・フォトグラファーだから、写真もいっぱい見るの(笑)。うん、いろんなジャンルをミックスするバンドはつねにエキサイティングだし、それを恐れないバンドも刺激的」

●ドリーム・ワイフの音楽を作る時も、いろんなジャンルをミックスすることには意識的ですか?

「私たちの音楽も、ロックとポップ、パンクのミクスチャーだと思ってる。おかしいのは、ドリーム・ワイフは時々ポップ・バンドって呼ばれることもあって……でもそれは全然オッケー。ポップは楽しむべきだし、そう言われて嬉しいし。それがマドンナやボウイみたいな意味だったら、最高(笑)。でもロック・バンドって呼ばれることもあって、私たちとしてはレッテルは関係ないと思ってる。とにかく好きなものをピックアップして、いろんな影響を一つの坩堝に入れればいいんだ、って。自分の音楽ってそうやって作るものだから」

●あなたたちにとってポップというアイデアが重要だとしたら、どういう意味においてだと考えていますか?

「さっき言ったデヴィッド・ボウイやマドンナみたいな人たちって、実際、『ポップとは』のゲームを変えた人たちだと思う。それにアーティスト、ポップ・アーティストとしても、つねに変化して、自分を革新していったでしょ? 私たち、二人とも大好き(笑)」

David Bowie / Fashion

Madonna / Hung Up


「それにトーキング・ヘッズだってポップだったし、そうやってポップを体験することはグレイトだと思う。ポップを恐れないこと。ポップ自体はグレイトなもので、自分なりに利用できるっていうアイデアが大事なんじゃないかな。ポップに至るルートは一つだけじゃないから」

●わかります。

「例えば、私はメロディが大好きだし、メロディをミックスするのも好き。ソングライティングにおいて私が受けた大きな影響の一つは、カントリー・シンガーのドリー・パートンなの。ドリーは実際、カントリーをポップのレベルに持っていったし、それもあってカントリーがポップに進化していった。というか、カントリーがポップ・ミュージック全体に大きな影響を与えたのよね。絶対にポップを恐れるべきじゃないと思う。私たちも取り入れたいと思ってるし、でもそれは自然に起きることで。私の場合それがドリー・パートンで、彼女の曲や歌詞の書き方、正直さ、メロディに影響されてる。特にポップ時代の曲にね。と同時に私たちはパンクだし、ロック、ポップ、そのすべてで遊ぶのがグレイトだと思う」

Dolly Parton / 9 To 5


●デビュー・アルバムの『ドリーム・ワイフ』は、女性という立場だからこそ見えるもの、感じることをいろんな観点から描いていると思います。実際、ドリーム・ワイフの音楽は、自分が女性であることと切っても切り離せないものだと思いますか?

「歌詞を書いてるのは私だけど、基本的には三人の共通する観点から書いてると思う。バンドとして。そうね……さっき音楽において正直であること、オーセンティックであることについて話したけど、私たちは自分が知ってることについて書いてる。で、私たちは三人の女性で、それぞれに違うことを経験してきてる。それに、私たちといろんな経験をシェアしてくれる友だちもいるし。例えば、このアルバムはハートブレイク・アルバムじゃない。でしょ?」

●ええ、違いますね。

「いろんなアイデアや瞬間に触れてるっていうか、ある意味ノスタルジックなアルバムでもあって。歌詞に共通するテーマとして。だって、何にせよ後から振り返るしかないしね(笑)。歌詞を読んでみて、私たちも初めて『ああ、こういうテーマだったんだな』って感じだし。でもやっぱり、多くは振り返って、その時のシチュエーションについて考えてると思う」

●なるほど。

「もちろん、私たちは歌詞で性差別について触れてるし、女性にいろんなルールが押し付けられてることについて語ってる。でも、恋愛や友情についても語ってるし、性的な暴行について語ったり、そう、自分たちの周りで起きてることを理解しようとしてるの。怒ったり、分別を持とうともしてるし。それが私たちのいろんな面、女性であることのさまざまな側面を見せてるんじゃないかな。やっぱり知ってることを書こうとすると、それは20代女性であることについてだから。本質的には、それが大きな影響。でも、元々『女性であることについて書こう!』とは思ってなかった。自然にそれが出てきただけで。ナイスだけどね」

●例えば、最近のUKのポップ・シンガーだと、デュア・リパの“ニュー・ルールズ”やチャーリーXCXの“ボーイズ”も、女性をエンパワメントする曲だと思うんですね。あなたたちと方法論は違うかもしれませんが、彼女たちのやり方についてどう思うか教えてください。

「チャーリーの作品についてはよく知らないの。ただ、デュア・リパはすごく好き。実際、BBCのライヴ・セッションに出演したときに“ニュー・ルールズ”をカヴァーした。楽しかったし、彼女がそのことをツイートしたときはおかしかったな(笑)」

「彼女、イギリスでも世界でも、ほんとたちまちのうちにビッグになったから。ただ“ニュー・ルールズ”が面白いのは、連帯を呼びかけてるところだと思う。ヴィデオも女性が女性をサポートすることを強調してるし、もちろん歌詞もそう。女性の連帯について歌ってるところがすごく好きだし、曲もキャッチーだと思う。ただやっぱり、エクストリームなポップなのよね。私たちとはかなり違うっていうか、別の世界の音楽って気がする」

Dua Lipa / New Rules


「でも、さっき言ったみたいにクロスオーヴァーがあるべきだし。うん、女性のアーティストがお互いをサポートすることについて書くのはいいと思うな。『男の子が私のこと好きになってくれない』みたいなことを書くよりずっと面白いしね(笑)。今はその方がずっとエキサイティング。しかもキャッチーであればあるほど、みんながそれに共感するのよ。その方が客観的な『彼女』じゃなくて『自分』っていう気持ちになるし、実際音楽はみんなを一つにすると思う」

●ええ、そう思います。

「私たちもライヴの間、それを実感してる。女性として生きることの圧倒的なフィーリングが前面に出てきて、空間を支配するの。それでモッシュ・ピットが始まったり、ステージに上がってきたり。女の子たちがステージに上がってくるのはオッケー。必ずしもみんな知り合いじゃないんだけど、女性たちがライヴにいて、グレイトな気分を味わって、パワーを感じてるの。連体感も。あれは、見ててすごい。それに自分たちの音楽がそういうことを感じさせることができるなんて、ほんとに素晴らしいと思う。デュア・リパのあの曲は、彼女のそういう側面を見せてるし、だからこそ大ヒットしたんじゃないかな。女性たちがその連帯に共感した、っていう」

●では最後に、サウス・ロンドンのシーンが今後1年でどのように変わっていくと思うか、そして、その中でドリーム・ワイフがどんな役割を果たしていきたいかを教えてください。

「難しい質問だな(笑)。1年経ったら……今出てきてるたくさんのバンドが、1年後も言いたいことをちゃんと持っていてほしいと思う。コミュニティで起きてる問題もしっかり指摘しつつ。バンドが大きくなったときに、それを継続させてほしいな。あと今もいろんなバンドが頭角を現してるけど、もっと出てきて、ビッグになってほしい。だって、千載一遇のチャンスでしょ? 絶対途中でやめたりしないでほしい(笑)。もっと彼らの音楽スタイルが注目されてほしいし、その結果彼らの主張に耳が傾けられてほしいし」

●ええ。

「で、私たちに関しては、いろんな場所に行って、ライヴやその後に大勢の人に会えば会うほど、このプロジェクトは自分たちだけのものじゃない、ってことに気づいてきたと思う。友だち三人で音楽を作ってるだけじゃないんだ、って。より大きな視点、アイデアがある。実際、この1ヶ月でいろんな場所でライヴをやって気づいたことなんだけど。他の人にも意味があるのよ。社会的な問題でもなんでも、私たちが取り上げたことが影響を与えたり……それより前に、“三人の女性が悪びれもせず、ロック・ミュージックをやってる”ってことさえ、意味があったりする。楽しんでやっていて、大勢の人がそこに集まって。それ自体がまた別の世代をインスパイアして、さらに悪びれもせずロックをやる女性たちが出てきたら、グレイトじゃない?」

●ですね。

「私たちにはそれが必要だから。この10年くらい、そういう存在って少なかった。例えば私たちが子どもの頃って、ロックをやってる女の人たちなんてほとんどいなかったし、ギタリストもほとんどいなくて。そういうことがまた起きてほしくないの。『ああいうふうになりたい』っていう存在がいないまま、また別の世代が育っていってほしくない。だから、このバンドが将来最大の賞賛を受けるとしたら、それは他の人をインスパイアした、ってことになると思う。特に女の子たちが楽器を手にして、しかも他の人たちを喜ばせるためじゃなく、ただ自分でやりたいからって理由でバンドを始めたら、最高ね。完璧じゃなくてもいいのよ。ていうのも、音楽を勉強する女性なんかによくあるのは、パーフェクトな演奏をしなきゃいけないって考えがちで。それは間違いだし、だからこそロックがエキサイティングなの。パーフェクトじゃないのがロックだから」

●そうだと思います。

「ほんと、ドリーム・ワイフがある世代をインスパイアして、またバンドが出てきたら最高。親友とバンドを始めて、とにかくやってみて、楽しんで、自分たちが取り上げたい問題を取り上げて――みたいなきっかけになったらいいな。私がバンドに望むのがそれだから。興味深いのは、いろんな場所を訪れて、大勢の人と知り合うほど、私たちは『これはもう私たちだけのものじゃない』ってことに気づいてる。それが気に入ってるの。だからもっと大勢の人、特に女の子たちをインスパイアしたら、私にとっては最高にグレイトね」

通訳:萩原麻理

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