SIGN OF THE DAY

【短期集中連載③】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:ソー・ヤング編
by YOSHIHARU KOBAYASHI April 23, 2018
【短期集中連載③】英国インディ・ロックの<br />
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を<br />
その当事者に訊く:ソー・ヤング編

イギリスのバンド音楽が息を吹き返すなんて、もはや信じられない。ここ15年の悲惨な状況を見るにつけ、そのように感じる人がいても無理はない。だが、それでもここ1~2年で産声を上げたサウス・ロンドンのシーンは、「リバティーンズが中心となったゼロ年代初頭のイースト・ロンドン以来」と言われるような期待を集め始めている。それはなぜか。理由は幾つかあるが、ひとつにはこのシーンが本来の意味での「インディ=インディペンデント」の精神性を体現したムーヴメントでもあるからだ。

日本で「インディーズ」と呼ばれる一群とは違い、欧米のインディとは決してただのメジャー予備軍ではない。そのルーツがオリジナル・パンクの時代に遡れることからも明らかな通り、大手資本の外側に独自のネットワークを構築し、自らの表現の自由と豊かさを担保する積極的な態度である。では、サウス・ロンドンはなぜ「インディ=インディペンデント」と呼べるのか。

それは、今のサウス・ロンドン・シーンが、①DIYの自然発生的なバンド・コミュニティ、②その受け皿となる〈ウィンドミル〉というDIYのヴェニュー、③そして今まさに起こっていることを伝える良質なDIYのメディア〈ソー・ヤング〉という理想的なトライアングルによって立ち上がってきたものだから(ここ日本では、DIYのリテーラーである原宿BIG LOVEが同シーンをいち早くサポートしていたのも決して偶然ではないだろう)。「インディ=インディペンデント」のあるべき姿がそこにはある。

サウス・ロンドンの実態に迫る短期集中連載、その第三弾の主人公は、シーンの「今」を伝えるメディア〈ソー・ヤング〉だ。〈ソー・ヤング〉はサム・フォードとジョシュ・ウェティングスティールの二人が立ち上げたDIYのファンジン。本当に小さな手作りのメディアではあるが――いや、だからこそ、既存の大手メディアより遥かにダイレクトで生々しくシーンの状況をドキュメントすることに成功している。

彼らの方針は明快で、既に名声を得ているバンドを取り上げるのではなく、まだ無名でも注目すべきバンドたちを積極的にサポートすること。直近3号分の表紙を並べた上の画像を見てほしい。ゴート・ガール、シェイム、そして最新号はソーリー。これだけでも、今や「日刊ギャラガー兄弟」と化してしまった〈NME〉とは全く別物であることがわかるだろう。まさに〈ソー・ヤング〉は時代の半歩先を追うメディアであり、だからこそ近年はサウス・ロンドン・シーンとの美しき邂逅を果たしているのだ。

そして、〈ソー・ヤング〉はサウス・ロンドンの当事者であると同時に、もっとも近い距離からジャーナリスティックにシーンを見つめる第三者でもある。実際、ここで語られるサム・フォードの言葉からは、サウス・ロンドンのバンドたちに対する愛情や興奮と同時に、シーンに対する冷静な分析も感じられるだろう。

未読の方は連載記事第一弾、第二弾と併せて読んで欲しい。そのすべてに目を通すことで、サウス・ロンドンの今が立体的に浮かび上がってくるはずだ。


【短期集中連載①】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:シェイム編


【短期集中連載②】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:ウィンドミル編





●ここ1~2年ほどサウス・ロンドンが盛り上がり始めていますが、〈ソー・ヤング〉はそのシーンをもっともダイレクトに、生々しくドキュメントしている雑誌だと思います。なので、今日は〈ソー・ヤング〉とサウス・ロンドンのシーンについて訊かせてください。

「まあ、僕らの雑誌はたぶん、あのシーンをカヴァーする雑誌だってことになってると思うんだけど。実は5年前に始めたから、その周辺で作ってきたわけじゃないんだ。ただ、あのへんのバンドに初めて小さなステージを与えた雑誌なんだと思う。彼らにはその価値があると思ったから。僕らが子どもの頃読んでた雑誌っていうのは、再結成だとか、同じようなバンドが毎回表紙で。ちょっと退屈だったんだよね。雑誌を立ち上げる時ってみんなそのことに触れるんだけど、僕らはもうちょっとそこに対して行動的だったんじゃないかな。で、そのまま続けていったっていう」

●〈ソー・ヤング〉が初めて取り上げたサウス・ロンドンのバンドは誰だったんですか?

「あの周辺ではシェイムが最初に話したバンドの一つだったんだ。やっぱり一番大きかったのは、僕らのギグに彼らを出したら、観に来た人たちがすごく気に入ったんだよ。僕らと同じくらい。それで彼らのためにたくさんページを割いたことも正当化されたっていうか。というのも、僕らはある意味そこにプレッシャーを感じてるから。〈ソー・ヤング〉は完璧にインディペンデントだから、何を取り上げるかは僕とジョシュ(・ウェティングスティール)が決める。広告のニーズだとか、そういうのに合わせる必要がまったくないから、自分たちがやりたいものが掲載される。一番自分たちが興奮してるバンドがね。ほんとにいいバンドが出てきてるんだよ。いいバンドじゃなかったら、僕らもカヴァーしない。そこが第一だし、一番大きいね。彼らはすごくいいバンドなんだ」

●あなたたちが〈ソー・ヤング〉を始めるにあたって、ロールモデルにしたような雑誌やファンジンはあったのでしょうか?

「僕らがどんな雑誌を読んできたか、っていうのが〈ソー・ヤング〉を決めたところがあると思う。僕の場合はかなりスタンダードで、〈NME〉の記事のほとんどを信じてた。少し飽きてきた時でさえ……オアシスも好きだったんだけど、毎週表紙になるとちょっと嫌気がさすよね。でも中の記事のおかげで、新しいバンドへの興味を持ちつづけられたんだ」

●ジョシュの方はどうだったんですか?

「ジョシュは〈Sniffin' Glue〉みたいなパンクのファンジンにハマってた。そういうのの歴史とか、コラージュ・ワークが彼の持ち場なんだよね。かなり後になってジョシュが僕にそういうものを教えてくれた。雑誌を作ろう、みたいな会話の中で。最初に〈ソー・ヤング〉をクリエイティヴなものにしよう、ってなったときに、僕がバンドを見つけて、ジョシュが雑誌のスタイルを作ったんだ」

●〈ソー・ヤング〉はレーベルが出すアーティスト写真をそのまま使うのではなく、コラージュやアートワークを多用していますよね。それはジョシュがパンクのファンジンから受け継いだ伝統なのでしょうか?

「普通、雑誌でもウェブサイトでも、レーベルが出す写真、いわゆるプレス・ショットを喜んで使うよね。僕らも使うんだけど、それを自分たちのスタイルで使ってる。カットしてコラージュにしたり。ジョシュは大学でイラストレーションを学んだんだ。で、大学時代の彼の作品は全部コラージュで。インスピレーションは全部ファンジンからだったんだよ。最近はフォトグラファーとの関係が出来はじめてて、それが面白いんだ。特にロンドン周辺で写真を撮ってもらって、それが〈ソー・ヤング〉の表紙やアートワークの一部になってる。共同作業なんだ」

●そういったところも含めて、〈ソー・ヤング〉はロンドンのコミュニティの空気感を伝えるものになっていると思います。

「ただ、僕らにとって雑誌を作るのは、『さあ、見た感じどんなふうにしよう?』っていうんじゃなかった。〈ソー・ヤング〉のスタイルは、僕らが作れる唯一のスタイルだったんだ。何よりも、これが僕ら自身をリプリゼントするものだから。うん、僕らが作る雑誌は……スタンドで売ってるような音楽雑誌には絶対ならないと思う。つねに音楽とイラストレーションの組み合わせなんだ。その二つが同等に重要なんだよ」

●そこが既存の大手音楽メディアと較べてユニークなところですよね。

「ラッキーなことに人がそれを受け入れてくれたんだ。完全にユニークなものとして気に入ってくれたし、リリースされたらそれは完全にオリジナルな作品で、他に同じようなものはないってわかってくれてる。僕らはある意味、そこにプライドを持ってる。今じゃこのコラージュ・スタイルは、特にここ1年半くらいで16歳や17歳、それより若い15歳くらいの子にとっては〈ソー・ヤング〉のスタイルになった。70年代のファンジンのスタイルじゃなくてね。僕らは常にあのスタイルを借りてきたことをクリアにしてきた。でもそれが今のバンドに投影されたっていうか、このスタイルが存在することと、それをモダナイズすることもできる、ってことをみんなが認識するようになったんだ」

●〈ソー・ヤング〉っていう名前はどういうニュアンスで付けたんですか? 以前に、ストーン・ローゼズの同名曲の歌詞を引用したTシャツを作っていましたけど。

「面白いよね。想像つくと思うけど、なんていうかバンドを新しく始めるときと似てて。名前っていつも最後に来るんだ。最初に中身を作って、あとから『クソ、名前を付けなきゃ!』って気づく、っていう。僕らもいろんな名前を考えたんだけど……当時僕らがハマってたバンドの曲に、“ソー・ヤング”っていうのがあって。で、その曲名の歴史を遡ったら、スウェードとかストーン・ローゼズ、もっと前だったらロイ・オービソンにも“ソー・ヤング”っていう曲があった。時代を超えてそのタイトルの曲があったし、僕らがやってたことをリプリゼントしてるようにも思えた。同時にちょっとした歴史もある、っていう。ある意味、アンオフィシャルなストーリーなんだけど。基本的には、ただしっくりきたってだけなんだ。だから、後付けだね(笑)」

●「しっくりきた」っていうのは、やはり「ソー・ヤング」というフレーズが、若くてフレッシュなバンドを取り上げるという自分たちの方針とも合っていたということですか?

「うん、僕がずっと雑誌や出版物に対して感じてた問題は、どんなものも繰り返しになっちゃう、ってこと。僕が性格的に飽きやすいからかもしれないけど。だから、〈ソー・ヤング〉は新しいバンドについて、今エキサイトしてることについての雑誌で、常にちょっと違うことをやろうとしてる。と同時に、音楽のノスタルジックな側面をモダナイズしようともしてるんだ」

●ええ。

「それと現実的に、僕らはただのサウサンプトン出身の男二人で、音楽ジャーナリズムのバックグラウンドもなく、ある日雑誌を作る、って決めただけだからね。小さいバンドが唯一のオプションだった。ブランドを持ってたわけでもなんでもないし。でも今は意識的な決定として、もう少しビッグなバンドの取材を断ったりもしてる。必ずしも売れるものじゃなくて、自分たちが情熱を持ってるものについて語りたいから。つまり、より小さなものにプライオリティのあるプレスなんだ」

●では、最近のサウス・ロンドンのシーンについて訊かせてください。あなたから見て、例えば5年前、10年前と比べてロンドンのシーンはどのように変わったと思いますか? しばらくロンドンからはバンドのシーンが出てこなかったように思えるんですけど。

「5年以上そんな感じだね。〈ソー・ヤング〉は5年続いてるけど、その間シーンなんてなかった。シーンっていう言葉が大げさだとしても、同じエリアで一群のバンドがすごい音楽を作って、同じギグに出てたり、一緒にツアーしてたり、なんてことも〈ソー・ヤング〉が出来てから一度もなかったし」

●日本から見ていてもそういう印象でした。

「現実的な話をすると、僕は最初、“サウス・ロンドン・シーン”って言葉には懐疑的だったんだ。『あのバーミンガム・シーンだとか、B-タウン・シーンとかと同じだろ?』って。バーミンガム・シーンなんて実際はなかったし、バンドもバーミンガム出身じゃなかった。レーベルがそれにリンクできるようなバンドと契約したがったっていうか、そういうのを作りだしたかっただけで。でも今回のはリアルなんだよ。リバティーンズとカムデン・シーンなんかとも比べられる。あるバンドの周りに状況が出来ていって、他のバンドも集まってくる。ストロークスがインディ・バンドの新しい波を起こしたみたいにね。でも僕の意見では、リバティーンズ以降、そういうのは見なかったと思う。で、そういった今のシーンを作り出したベースは、バンド同士の純粋な友人関係だったんだ」

●最初期のイースト・ロンドン・シーンと同じように、アンダーグラウンドで有機的に生まれた健全なシーンということですよね。ただ、今のサウス・ロンドンは、アンダーグラウンドだからこそエキサイティングだ、という視点もあると思います。

「もちろん。君が『アンダーグラウンドだからこそ~』と言ったのはほんとその通りで、みんな外とか見てなかったんだよね。そんな必要なかったし、友だち同士やってたことで、それがゆっくり成長してビッグになった。そこでは何も強要する必要がなかったし、純粋だったんだ」

●そういったシーンの状況に、何かしらの変化は生まれ始めていると思いますか?

「バンドはこれから外に出るし、ビッグになってファンベースも広がるだろうね。HMLTD、シェイム、ソーリーも……デッド・プリティーズはもういないけど、今言ったバンドはもうレーベルと契約してる。しかも小さいレーベルとかじゃなくて、ビッグなインディやメジャー・レーベルと契約したんだ。少なくとも5年契約とか。だからこれから2年くらいは次々にアルバムが出て、キャンペーンが始まる。ゴート・ガールのアルバムも今年出るし、HMLTDも。だから、彼らのファンベースはもっと大きくなるし、バンドには先がある。レコードも売るだろうし、僕としてはアルバムらしいアルバムを作ってほしいと思う」

Goat Girl / Cracker Drool

HMLTD / To The Door


「ただ、ロンドンのシーンの寿命っていうことで言うと、今回のシーンも1年くらいなんじゃないかと思うんだ。いや、そこから出てきたバンドの寿命じゃなくて。彼らはバンドとして質がすごく高いから、キャリアを築くポテンシャルがある。彼らがレーベルと契約したのも、レーベル側が『そろそろロンドンのシーンが必要だな』って言ったからじゃないと思うし。みんな真っ当なバンドなんだよ。すごくいいバンドなんだ。だから彼らは長く続けていけると思うけど、バンドが集まったりハングアウトするシーンっていうのは……突然、そこからバンドがステップアップしようとしたり、距離を取ったりするもんじゃないかな」

●実際、マッドチェスターからストーン・ローゼズがステップアップしたことによって、あるいはシアトルからニルヴァーナがステップアップしたことによって、一時的にシーンは大きくなったけれども、同時にそこから何か大切なものが失われてしまったところもあると思います。あなたとしては、今後サウス・ロンドンのシーンはどうなると思っていますか?

「やっぱり、バンドとシーン、場所っていうのは別物なんだよ。シーンっていうのはある一時期、ある期間をリプリゼントするもの。それが長くなりすぎると、停滞したり、ただの繰り返しになる。マンチェスターもストーン・ローゼズが出てきて、それがオアシスに影響を与えて、ブリットポップになった。ブリットポップは最初はロンドンっていう街をベースにしてたかもしれないけど、結局ジャンルになったよね? 今回もそういうことが起きるかもしれない。実際、シーンっていうのは場所なのか、音楽なのか、ってこと」

●良くも悪くも、今後サウス・ロンドンがジャンルとして認識されるようになった場合、音楽性にしろ何にしろ、そのジャンルはどのように定義されると想像しますか?

「今早まって、『こういうサウンド』って特定したくはないな。僕のポイントは、シーンは必ずしも場所ではないってことだから。彼らは何かを決めたり、押し通したりしたことがない。しかもみんなサウス・ロンドンの出身ってわけじゃなく、〈ウィンドミル〉でライヴをやってただけで。サウス・ロンドンのヴェニューで、それが彼らを集めることになった。つまり、サウス・ロンドン・シーンっていうよりは〈ウィンドミル〉シーンなんだよ。で、特に音楽的にはジャンルがない。HMLTDとソーリーなんか、すごく対照的だし。だから必ずしも音楽ジャンルじゃなくて……何かロケーション以上のものだって考えるべきなんじゃないかな。言葉にしにくいんだけど。僕としては今そう見てる。バンドの方も、シーンっていう言葉によって限定されるのを嫌がってるし。バズだとか流行だとか思われたがってないし、僕としてもそうは思わない」

●それにしても、ここ数年で、なぜロンドンから素晴らしいバンドがたくさん出てくるようになったのだと思いますか?

「そうだな……あるレベルの政治的な不安、不穏さっていうのはあるかもしれない。国としてね。バンドとしてはそれに触れてないと思うけど。みんな社会状況は気にしてるけど、必ずしも音楽でそれを表現してはいない。シェイムなんかはもうちょっとそれに対してオープンだけど、他のバンドは意識的にそうしてない。むしろSNSをそのプラットフォームにしてるね」

●それ以外にも思い当たることはありますか?

「あと、みんな〈クィーンズ・ヘッド〉とか、ファット・ホワイト・ファミリーのシーンで育ってきてると思う。あれにインスパイアされてるんだ。あのあたりは確実に、彼らにバンドを始めさせたインスピレーションとして中心的な存在だね。だからパブから始めて、とにかくライヴをやって、それを重ねていくうちに何か作り出していく、っていう。僕の感覚としては、どのバンドもファット・ホワイト・ファミリーに何かしら影響されてる。もちろん、他にもいろいろあると思うけど、ストレートな結びつきとしてはそれ」

Fat White Family / I Am Mark E Smith


●具体的に、ファット・ホワイト・ファミリーのどのようなところが新しいバンドをインスパイアしたのでしょうか?

「彼らもまだ活動してるし、すごいんだけど、彼らのやり方、プレイの仕方が、特にシェイムにとっては『ライヴをどうやるか、どう見せるか』を教えたと思う。だからこそライヴが第一で、曲は二の次だったり」

Shame / Concrete (Off The Cuff 2017)


「うん、でも今のバンドの間にはいろんなジャンル、スタイルがあるから、彼らをインスパイアしたもの、出てきた理由を一つ挙げるのは難しい。例えばソーリーなんかは他のバンドからエレクトロニックな影響も受けてるし、HMLTDでも同じことが言える」

Sorry / 2 Down 2 Dance


「同じようなスタイル、サウンドをやってきたバンドなんて数えきれないほどいるけど、彼らはそれを今に持ち込んで、2018年のヴァージョンにしてるんだ。それが新しく聞こえるし、グレイトなんだよね。ただみんな、何かしらファット・ホワイト・ファミリーから受け継いでるものがある気がする」

●例えば、76年のパンクの時代だったら、当時のノッティングヒルやブライトンが人種混合の街であったことが、シーン全体やその音楽性にも影響を与えていたと感じます。同じように、現在のサウス・ロンドンの街としての特性が、シーンを定義した部分があるとすれば、どのような部分だと思いますか?

「ロンドン自体が巨大な街だし、それが生んでるものも膨大で。どんな音楽ジャンルを見ても、ロンドンをベースに活動してて、成功してるアーティストがいると思う。僕にとっては全部に対してコメントするのが難しいな。〈ソー・ヤング〉っていう雑誌自体、すごく特定されたものについて語ってるだろ? でも、階級やバックグラウンドってことで言うと、ロンドンに住むには……学生として暮らして、その3年間を活用するか、もしくは元々ミドル・クラスかそれ以上のバックグラウンドがあるんじゃないかな。それ以外に、どうやってバンドをやって生活していける? 他に仕事もやらずに? いや、だからって必ずしもバンドをやってるキッズがみんなミドル・クラスってわけじゃないけど、バンドをやるのが許されるような特権が何かしらあるはずなんだ。それを利用すること自体はグレイトだと思う。チャンスがあるからって、彼らが社会的な状況だとか、周りで起きてることから守られてるわけじゃないし」

●ええ。

「あと……ジェンダーは大きいと思う。このシーンには男性アーティストと同じくらい女性アーティストがいるし、ギグに行っても、男が男を見てる、とかじゃない。観客が完璧にあらゆる種類、あらゆる人たちのミックスなんだ。それにこのシーンには周辺に小さなアート・コレクティヴがあったりもするし、音楽だけじゃないんだよね。パンクに似てて、アートやライフスタイルも伴ってる。ワーキング・クラスだったり、経済的にそれほど恵まれていない学生だったら、そうやってライヴをやって暮らしていくのは難しいかもしれないけど、やっぱりライヴが人々を集めて、一つにしてる。そこに特定の人種やバックグラウンドはないと思うな。ロンドンっていう街と同じで、すべてに開かれてるんだ」

●では、サウス・ロンドンに限定せず、イギリスのギター・ミュージック全般についても訊かせてください。もしかすると、去年イギリスで一番売れたロックのアルバムは、リアム・ギャラガーのソロだったかもしれないですよね。そういったメインストリームの状況について、あなたが思うところを教えてください。

「リアム・ギャラガーか(笑)。いいんじゃない? 彼って笑えるよね。ジョシュも僕もあのバンドを聴いて育ったし、僕はいまだに時々聴いてる。でも……よくやったと思うよ。あのアルバムにはいいトラックがあるし。もちろん、彼がロックンロールやギター・ミュージックを代表してるのは残念だと思う。他にもっとそうすべきバンドがいるからね。でも少なくとも、〈ブリット・アウォーズ〉みたいなクソみたいなものでも、彼がギター・ミュージックの代表として人の目に触れてる。その意味ではグレイトじゃない? 彼がいなかったら、それさえないんだから。アルバムはまあまあだけど(笑)」

●あのアルバムは、テイラー・スウィフトみたいに大勢プロデューサーやソングライターを入れて作ったアルバムですよね? 少なくとも彼は、如何に現行のポップ・ミュージックに対抗するか、ということに意識的になってアルバムを作ったとは言えます。それを評価することも批判することも出来ると思うんですけど、あなたはその点についてはどう思いますか?

「まあ、残念ではあるよね。バンドがポップ・バンドになっていくとしたら、それは長い目で見て、成功するには必要だと考えてのことだろうけど、やり方として僕は好きとは言えない。〈ソー・ヤング〉を作ってるのも、一つには自分たちのためだけど、やっぱりオルタナティヴ、他の選択肢を探すのも一つの目的だから。僕としては、今イギリスのラジオで流れてるような音楽を正当化するのはすごく難しいんだ。『なんで?』っていうか、自分では全然楽しめないし、もうラジオは聴いてない。それも、スポティファイのプレイリストなんかが隆盛する理由だよね。そっちの方が重要になってるのは、プレイリストを作る人が聴く人をリプリゼントしていて、聴く人もそれを信頼してるからで。ラジオはもう大勢をリプリゼントしてないんだよ」

●ええ、そう思います。

「でも同時に、ポップ・ミュージックっていうのはつねに……うん、例えば〈NME〉は60年代や70年代、ポップ・ミュージックもカヴァーしてたけど、当時のポップ・ミュージックはギターで作られてた。ほとんどの場合、まず最初にバンド、もしくはシンガー・ソングライターをベースにした音楽だったんだ。でもポップ・ミュージックが成長するにつれ、〈NME〉はギター・バンドに特化した。で、今は〈NME〉が何をフォローするかが問われてる。ポップ・ミュージックをフォローするのをやめた間に、ポップ・ミュージックが変化したからね。ただ、どんな時代もそういうものを聴く人の方が多いかもしれないけど、僕としてはバンドがより成功するためにそっちの方向に行ってほしくはない。〈ソー・ヤング〉としては必ずしもそれには興奮しない、と言っておこうかな。やる余地はあると思うけど、クレヴァーにやらなきゃ」

●もうすぐアークティック・モンキーズの新作が出ると言われてますけど、あなたの立場からすると、彼らにはまだアクチュアリティがあると思いますか? それとも、もうまったく期待はありませんか?

「個人的なテイストで言うと、〈ソー・ヤング〉でやってることに近いよね。僕はずっと好きだったし、ライヴにも行ったし。レコードもずっと聴いてきた。ただ雑誌としては、必ずしも興味があるわけじゃない。僕らがカヴァーするようなものじゃないっていうか。もうあれだけビッグだから、僕らなんて必要ないよ(笑)。あのバンドに、僕らがプラットフォームを提供する必要がない。今年アルバムをリリースするんだよね? 大勢の人がエキサイトするだろうし、それがギター・ミュージックを前面に押し出すだろう。アークティック・モンキーズの新作が重要作とされたら、それが小さいバンドの助けにもなる。ああいうサウンドを聴く人が増えるだろうから。まあ、でも興味としては、リアム・ギャラガーと一緒だよ。『いいんじゃない?』って感じ(笑)」

●では、これまでに名前を挙げた以外で、あなたが今面白いと思うバンドを幾つか教えてもらえませんか?

「アグリーっていうグレイトなバンドがいる。ケンブリッジ出身で、僕らのギグにこの間出てくれたんだけど、すごくクールなんだ。キング・クルールっぽいところがあって」

Ugly / Switch


「あと、まだ何も音源は出してないけど、シスター・トークっていうバンドはチェックしておいたほうがいい。すごいよ。それとスポーツ・チーム。ポップ・ミュージックに一番近いっていう意味ではスポーツ・チームだろうな。彼らにはそういう野心がある」

Sports Team / Beverly Rose


「うん……大勢いすぎて、名前を挙げるのが難しいな。カルヴァ・ルイーズっていうバンドもクールだし。最新号の『フー・アー・ユー?』ってセクションを見てもらえばいいんじゃないかな。見つけたばかりのバンドや、今聴いてるバンドを集めてる」

Calva Louise / I'm Gonna Do Well


「あ、あとブラック・ミディ。最高にイカレたドラマーがいるんだ。フロントマンはビーヴァス&バットヘッドで、サウンドもそんな感じ」

Black Midi / Live 2017


「ホテル・ラックスが今度出すレコードもいいね。来月くらいに出ると思うけど」

Hotel Lux / The Last Hangman


●今後サウス・ロンドンのシーンが大きくなるとしたら、イースト・ロンドン・シーンにおけるリバティーンズみたいな存在は不可欠だと思います。もしサウス・ロンドンにおけるリバティーンズをあなたが選ぶとしたら、誰になりますか?

「今のシーンの中心ってことでは……やっぱり、シェイムの注目のされ方をみると、彼らだろうな。どんどん注目を集めて、アメリカでもオーストラリアでもライヴやって。しかも彼らの今度のアルバムって、ライヴ・セットをそのまま入れただけなんだよ。腰を据えて、自分たちのベストな曲を書こうとしたことがまだないんだ。だから、実際に彼らがそうしたら、って思うと興奮する。すごいのになるだろう、って。だから彼らが中心なのと、ソーリーと他のバンドとの関係性が重要だと思う。ソーリーがある意味、全部を繋ぐ存在なんだよ。HMLTDやシェイム、いろんな点を繋いで線にしてるし、音楽ジャンルにしてもそう。でもやっぱり、最前線にいるのはシェイムだろうな」


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通訳:萩原麻理

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