SIGN OF THE DAY

『トレインスポッティング』から20年。
英国ポップ・シーンの「今」をその当事者、
フォーメーションに訊く:後編
by SOICHIRO TANAKA April 25, 2017
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『トレインスポッティング』から20年。<br />
英国ポップ・シーンの「今」をその当事者、<br />
フォーメーションに訊く:後編

『トレインスポッティング』から20年。
英国ポップ・シーンの「今」をその当事者、
フォーメーションに訊く:前編



●ゼロ年代前半にはあなたたちも聴いてたフレンチ・エレクトロと前後してNYからは〈DFA〉が出てきた。あなたたちも使ってるカウベルのサウンドって、まさに〈DFA〉のシグネチャー・サウンドだったわけだけど、彼らがやってたことと何かしらコネクションはあるんでしょうか?

マット「うん、LCDは聴いてた。でも、僕ら、よくラプチャーをパクってるとか言われるんだ。でも、生まれてからラプチャーのアルバムは一度も聴いたことないんだよ! 12インチは1枚持ってるけど、それは〈DFA〉がクールな12インチをリリースしてたから買っただけなんだ」

●なるほど(笑)。

マット「僕らにとってカウベルはノヴェルティとかじゃなくて。西洋っていうか、ヨーロッパの音楽にとっては新奇な楽器なのかもしれないけど、僕らからするとあれは遺産であり、自分たちにとってとても重要なものなんだ。僕はパーカッショニストとしてカウベルの歴史を勉強したんだよ。西アフリカの部族のシンプルなクラーベのリズムが奴隷貿易によって南米やカリブに渡り、翻訳された。そういう歴史がある。だからこそ、僕らにとってはカウベルが持つ感情ってすごく重要なんだよ。もしかすると、〈DFA〉もそれを知ってて使ってたのかもしれないけど、僕らからするともっと歴史的な意味があるんだよね」

Formation / Pleasure (Le Grand Journal 2017)


●なるほど。あなたたちと同じくグルーヴ・ベースで、なおかつサイケデリックなアトモスフィアを持つ人たちに、フローティング・ポインツがいるじゃない? 彼らとのコネクション、違いがあるとしたらどんなところですか?

ウィル「きっとあっちのほうが金があるだろうな(笑)。機材に金がかけられる。ギアが違うんだよ!(笑)。『僕らもあれくらいの機材が使えるといいのに』って思うね」

マット「でも、フローティング・ポインツはいいよね。サム(・シェパード)のレコードは僕もウィルも買ったんだ。彼の音楽はずっと前から好きだし。もちろん彼の音楽のほうが持続し、拡張していく。10分間の長いトラックがあったり。僕らはもっと短時間に全部詰め込もうとしてるから。でも、似てるところはあるかな?」

Floating Points / Kuiper (Live)


ウィル「うん、インストゥルメンテーションはあるんじゃないかな。フローティング・ポインツもシンセにフォーカスしてるし、何よりもグルーヴが前面にある。ジャズからの影響も聞こえるしね。スタジオを楽器を使うっていうアプローチもそう。サムがすごくいいミキシング・デスクを買って家に備えつけたのも僕は知ってるし。とことん美しいサウンドを作ろう、っていうその献身性は、僕らのやろうとしてることでもあるんだ」

マット「キーボードのサシュはモジュラー・シンセにすごく精通してるからね。実は、僕らのレコードが出た先週の金曜に、彼が作ったレコードも同時に出たんだよ(『Tactus Tempus』)。サシュとフローティング・ポインツ、カリブー、ジョー・ゴダードも参加してる、モジュラー・シンセのレコード。売り上げはチャリティに寄付されるはずだと思う」

A Pulse Train / Tactus Tempus


●あなたたちのバイオを読むと、“オン・ザ・ボード”の歌詞がチェスをモチーフにしてるからってことで、同じようにチェスについての曲を持っているイエスとウータン・クランの名前が挙がってるんだけど。実際のところ、それぞれのバンドはどの程度あなたたちにとって重要なんですか?

ウィル「どっちも巨大だよ。最初にイエスの『フラジャイル』を聴いた時、『クロース・トゥ・ジ・エッジ』を聴いた時って、もう最高にグルーヴィーだったから」

Yes / Close To The Edge (Full Album)


ウィル「で、カヴァーを見るとめちゃくちゃ変な白人の男5人が写っててさ。『なんでこいつらがこんなグルーヴィーな音楽作ってんの?』って(笑)。僕らにとってイエスは初めての拡張的なサイケデリック・ミュージックだったんだ。で、そこにはものすごいヴォーカルのハーモニーも、クラシックなハーモニーもある。おまけに最高に気持ち悪いベースラインもある(笑)。ビル・ブルーフォードは一番好きなドラマーの一人なんだ。テクニカルで、同時にグルーヴィーで。やっぱりイエスにもグルーヴとパワーとノウハウがあったんだよね。それはウータン・クランも同じ。妙な連中の集まりで、ユニークなラップのスタイルを持ってた。それをユニークなプロダクションと混ぜて、ある意味、イエスと同じようなものを作ってたんだ。すごく多様なサウンドで、やっぱりグルーヴとパワー、ノウハウなんだよ。僕らのチェスの曲と彼ら二組がそれぞれ作った曲でトライアングルを作るには最高にいい相手だよね(笑)」

●じゃあ、ここからは、あなたたちがおそらくあまり興味がないであろうアーティストについて、こちらのアングルも投げていくので、それを含めて彼らをどう見ているか教えて下さい。例えば、今のイギリスのインディ・バンドというと、The 1975やウルフ・アリスだと思うんだけど。彼らみたいなインディ・バンドのあり方をどう見ていますか?

マット「まあ、いいんじゃない?(笑)。どっちのバンドも、彼らがやった中で一番興味深いのは、自分たちのサウンドの核を見つけたことだと思う。ウルフ・アリスが出したトラックで、シンガーのエリーとジョフの二人が廊下で演奏してるアコースティックの曲があって(“アイ・ソウ・ユー (イン・ア・コリドー)”)。彼らのサウンドクラウドで聴けるはずだけど、本当に美しいんだ」

Wolf Alice / I Saw You (In A Corridor)


マット「ある意味、あの曲が彼らが音楽的にやろうとしてることを全部語ってるんじゃないかな。彼女の声と、彼のギターと。ビッグなロックのレコードより、僕にはあの曲の方が印象に残ってるんだ。The 1975もそうなんだけど、新作を聴くと……あのグルーヴとか、80sのシンセ・ポップっぽいサウンドを作ろうとしてるのは明らかだよね。そこはサウンドのクオリティとテキスチャーで見事にとらえてると思う。なのに……僕が思うのは、その上に派手なグリッターを振りかけすぎてる、ってこと」

ウィル「でも、それも80sってことじゃん? 彼らはバンドとして、自分たちがやりたいことにおいて成功してるんだよ。そこは誰にも見下せることじゃない。僕たちは特に彼らの音楽は好きじゃないかもしれないけど、音楽を作って、やりたいやり方でやってる人たちのことは常に尊敬してる。他の人たちが何で成功を測るかは自由だし、それに到達するならクールだと思うしね」

●歌詞が評価されてるっていう意味では、スリーフォード・モッズがいるじゃない?

ウィル「うん、クールだよね。僕はホント大好きなんだ。ヴォーカルの一貫性がいいと思う。アグレッシヴでパンチのあるヴォーカルで曲をぐいぐい進めていくっていう。ほとんどウータン・クランみたいなエッセンスっていうか、ODBみたいなクレイジーなヴォーカルがずっと続くんだ。クールだよ(笑)」

●『T2 トレインスポッティング』は観ました?

マット「観てない」

ウィル「まだ。でも、前作はみんな観てたし、今回サントラもいいし」

マット「ヤング・ファーザーズがいいよね」

ウィル「うん、僕には映画よりヤング・ファーザーズのシングルの方が興味あるかも(笑)」

Young Fathers / Get Up


ウィル「僕があのバンドにコネクトしたのは、初めてライヴに行った時かな。〈ココ〉だったかな? 僕とジョニーで行ったんだ。まるでシェイクスピア劇を観るみたいだった。三人のキャラが強烈で、それぞれすごくユニークで。まるで三人のキャラクターが絡むドラマを観てるみたいだったんだ。あんなにパフォーマンスにエッセンスを持ち込む人は見たことなかったんだよ。舞台照明も大きなプロダクションもなく、彼らがいるだけなのに。それにみんなが思ってるより、曲がずっとメロディックでグルーヴィーなんだ。よく聴かないとわからないかもしれないけど、リズムがシンプルで、ものすごく自然に感じられる。まるで彼らが自分の中にいるみたいな感じ。グレイトだよ。大好きなんだ」

●『T2 トレインスポッティング』のエンドロールで使われるのがファット・ホワイト・ファミリーなんだよね。彼らってインディ音楽がプチブルご用達の慰みものに堕してしまったことにずっと腹を立ててて、何年か前には「マック・デマルコが消えてくれないと、自分たちは今すぐにシリアに飛んでISISに入る」みたいなことをわざと言ったりしてた。勿論、わざとショックを与えるために言ってたとは思うんだけど。そういう極端にレフトフィールドな政治的アティテュードを見せるバンドに対してはどう思いますか?

ウィル「はあ(苦笑)」

マック「ドラッグやりすぎだよ」

●(笑)。

ウィル「だって、マック・デマルコをそこまで嫌う理由なんてないじゃん。僕は大好きだしね。ファット・ホワイト・ファミリーって何をやるにしても過剰にショッキングなんだよね。僕が21歳くらいの時だったかな? 一緒にライヴやったことあるんだけど。僕はサイケデリックなガレージ・ロック・バンドでドラムを叩いてて、彼らの順番が僕らの前だったんだ。そしたらステージでシンガーとギタリストがキスしだしてさ(笑)。ホント曲なんて聴いてられなかった。ファット・ホワイト・ファミリーってどうしてもそうなっちゃうんだよ。音楽じゃなく、彼らがどんなバカなことしたか、どんなにショッキングなこと言ったか、それしか覚えてない。そこが残念なんだよね。何も言わず、音楽に語らせればいい時だってあるのに。もうちょっとそうしてたら、みんな彼らのこともうちょっと好きになれるかもしれない(笑)。僕としては彼らの音楽を聴きたいね」

マット「でも、すごくクールなこともやってたよ。去年、ウェールズの〈グリーン・マン・フェスティヴァル〉で彼らを観たんだけど、ステージに出てくる時にイスラム音楽を流してたんだ。それはすごく興味深いと思ったな。視覚的にもシンガーがマイク燃やして、まるで痛みに耐えてるみたいで。あれは面白かった」

ウィル「うん、その方がマック・デマルコについてくだらないこと言うより、ずっとリアルだしね。そういうのはリアルなステートメントだと思う。それができるなら、クールだよ」

●今、アデルとエド・シーランがイギリスがイギリスを代表するアーティストであることに対してはどう感じていますか?

ウィル「まあ、それってただのチャートだったりもするし。実際に彼らはレコード売ってるからね」

マット「うん、レコードをたくさん売って、チャートのトップに立つアーティストはいつだっているんだよ。でも、音楽に興味がある人なら誰でももっと面白いことをやってるバンドやアーティストが他にいることを知ってる。深く見れば見ていくほど、そういう人たちが見つかるんだ」

ウィル「まあ、それも資本主義の一面なんだろうな。明らかに資本主義はありとあらゆる場所に拡張されなきゃいけないから、音楽チャートみたいなものにも広げられる。でも、実際、音楽を競争にするなんてバカバカしいよね? 音楽はコンテストじゃないし、勝ったから音楽をモノにできるわけじゃないし。ただ実際のところ、アデルもエド・シーランもいい音楽を作ってるし、作りたいものを作ってる。そうすることで大金を稼いでるんだ。ホントそれだけ。だからって彼らが他より優れてるわけでも、劣ってるわけでもない。自分たちを彼らと比較して、『なんであんなに売れないんだ!』って頭抱えるわけでもないしね」

マット「実際、僕、アデルは好きなんだよ。一緒にライヴをやったこともあるんだ。僕らが16歳くらいで、アデルが音楽大学を卒業した頃の話だけど。彼女、ただギターを弾いて、歌って。あれは素晴らしかった」

●じゃあ、イギリスを代表するアリーナ/スタジアム・ロックというとカサビアンとミューズだと思うんだけど、彼らがロックを代表してることについてはどうですか?

マット「難しいのは、そもそも今、ロック・バンドがどこにもいないってことだよね。UKの音楽シーンはポップ・ミュージックやグライムをベースにしてて、ああいうギター・ミュージックがぐっと落ち込んでる。だから、仕方がないんじゃないかな。でも、僕がさっき〈ウィンドミル〉ってヴェニューの話をした時に挙げたような、ギターをベースにした音楽が確実に出てきてる。これから2、3年で、またそこが表に出て、盛り上がってくると思うよ」

●僕自身はあまり興味ないんだけど、それなりに注目を集めているバンドーーキャベッジ、ブロッサムズ、キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメン、ラグンボーン・マン辺りはどう?

マット「キャベッジはまあまあなんじゃない?」

Cabbage / Uber Capitalist Death Trade


ウィル「うん。みんな別にいいんじゃないかな。多分、君とおんなじ感じだな。別にいいよね、みたいな(笑)」

マット「ものすごく特別なものでもないっていう。でも、キャベッジはまあいいと思う。いい曲、いいフィーリングがある。ブロッサムズは好きじゃないな。あと、キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンのシンガーはリスペクトしてるんだ。名前なんだっけ? 仕事に対する姿勢がしっかりしてるし、長くやっていけるんじゃないかな。オーディエンスに合う曲が書けて、それに彼は機会が与えられたことをすごく大事にしてる。ナイス・ガイなんだ。ラグンボーン・マンはヒップホップやってたときのほうが面白かったと思うよ」

●(笑)。ここ20年常に冒険的に変化しつづけて、何かしらメッセージを持ちつづけてるバンドって、レディオヘッドしかいない、っていう言い方もあると思うんだけど。

ウィル「うん、間違いないね」

●ただ常に彼らのサウンドは進化し続けてると同時に、複雑にもなってきてるし、メッセージそのものもダークになってる。だから、リスナーによっては、コネクションを持てなくなってる人たちもいるかもしれない。僕自身はそうは思わないんだけど。彼らのここ5年、10年はどんな風に見ていますか?

ウィル「僕が思うのは、レディオヘッドっていうのはこれからもずっと常に複雑なバンドであり続けるだろうってこと。だからこそ、それぞれのアルバムで彼らが何をやってるのか理解するにはちゃんと聴かなきゃいけないんだ。でも、そこがすごいんだよ。毎回実験し続けて、進化してる。僕は特に彼らがメロディにフォーカスすると同時に、リズムにもフォーカスするところに惹かれるね。ミュージシャンとしても全員が優れてるし。ジョニー・グリーンウッドがレディオヘッドの外でやってることは全部好きだな。サウンドトラックとか、クラシック音楽での実験とか。ホント音楽的なバンドなんだよ。彼らのキャリアから学ぶことがあるとすれば、『音楽を作ることにフォーカスするべきだ』ってことだと思う」

マット「それと、常に革新的であろうとすること。退屈するんじゃなくてね」

Formation / A friend (Le Grand Journal 2017)


●じゃあ、音楽以外のことについても訊かせて下さい。それにしても、今あなたたちがロンドンに暮らしていて、社会全体を見ている視点を代表してくれるような指導者、組織みたいなものってありますか?

ウィル「うーん……今って、マスコミとか、ニュースみたいなものを通じて、誰かと共感するのってホント難しくて。人には建前もあるし。実際にその人と知り合わないと、本当に何をやろうとしてるのか、何が目的なのか、解読しにくいんだよね」

マット「トニー・ベン(Tony Benn)とかは? ブリストルの下院議員」

ウィル「うん、イギリスの歴史を通じて、もう少し共感できる政治的な人物も何人かいる。トニー・ベンなんかは、ワーキング・クラスの人々の問題に貢献したことが歴史的に証明されてきたんじゃないかな。緑の党の議員、労働党議員にも何人か正しいことをやってる人たちはいるんだけど、実際に政治的な変化、必要な変化を起こせるかっていうと、なかなか難しいんじゃないかな。UKがいま抱えてる問題ってものすごくリアルで、タフなんだよ」

●じゃあ、ジェレミー・コービンが労働党党首に選出されたタイミングとか、ブリグジットの後に彼が発言力を失っていくタイミングとかーーその辺りの流れを通じて、彼をどう見ていましたか?

マット「彼の考えって、とにかく政治の世界で一般的じゃないんだよ。労働党が掲げる考えとさえ同じじゃない。だから、たとえ大勢の人が労働党党首の選挙で彼に投票しても――実際、僕も彼に投票したんだけど――政治の世界においてはまったく党首として扱われてない。完全にクレイジーなことを考えてる男扱いされてて。それって、今の政治的システムのあり方、そこにいる人々のあり方と、そのシステムの外にいるその他全員がいかに乖離してるかをはっきり示してると思う。システムの一員でないと、どんな決定も何の意味も持たないんだ」

ウィル「でも、労働党にはいい仕事をしてる女性議員が何人かいると思うよ。サラ・チャンピオンやメアリー・ブラック。つまり、ジェレミー・コービンがやったことっていうのは、ムーヴメントを作り出して、そのムーヴメントを使うことで他の政治家を擁護したってことなんだよ。それはすごくクールだったと思う。特にそれが女性を押し出す強い流れになったのは、すごく重要だったんだ」

●今回のアルバムのタイトル『ルック・アット・ザ・パワフル・ピープル』について。このタイトルが出てきた場所について教えて下さい。

ウィル「このタイトルは今の政治や社会構造みたいなものを超えてると思う。つまり、もっと内側を見つめてるんだ。外側にいる権力者を見るんじゃなく、内側にいるパワフルな人々を見るんだって言おうとしてる。このレコードは包括についてであり、全員をつなぐ人間的な本質を見つけようとすることについてなんだよ。男か女かとか、右か左かとか、そういうただのバイナリー・オプションになるんじゃなくね。僕ら全員の中には周囲とコネクトできるもの、以前はお互いにコネクトしていたものがあるんだってことを言ってる。現時点ではハイパー・インクルーシヴィティ(超包括性)というメッセージがすごく重要だと思うんだ。うん、もしかすると、僕はヴォーカリスト、リリシスト、バンドの身体的な“声”として正しいことをやらなきゃいけないって責任を感じてるのかもしれない。だって、人生は一回きりだし、チャンスは一回だけかもしれないからね」

●タイムレスな考え方の表明でもある?

ウィル「うん。コンスタントな闘い、苦闘の表明だと思う。内的なパワーを求める闘い。資本主義が人間をそこから引き離そうとする平等や多様性を求めるっていうね」

●USのヒップホップ・アーティストにせよ、グライムのアーティストにせよ、自分自身の「フッド」、地元での生活をレペゼンするっていう態度が明確にありますよね。ただ、あなたたちはそういった形ではない表現をしたいと思っているところはありますか?

ウィル「あるコミュニティのアイデンティティを『こういうものだ』って風に決めてかかって、それをメッセージにしたら、それは間違いだと思う。僕としては、このアルバムのメッセージは普遍的なメッセージだと思ってるんだ。自分たちを世界のある一つの場所に当てはめてしまったら、それはそのメッセージの失敗を意味する。僕らは全員の代表であろうとしなきゃいけないし、僕ら自身をレペゼンしなきゃいけない。だって、僕らは一つのコミュニティから出てきたわけじゃなく、いろんなコミュニティの出身だからね」

●あなたがそういうアングルの歌詞を書くようになった、そのモデルになるような代表的なリリックを挙げてもらってもいいですか? 「自分たちはこの系譜にあるんだ」っていう。

ウィル「そうだな。実際に、普遍=“ザ・ユニヴァーサル”がタイトルになってるブラーの曲だね。すごくシンプルな歌詞で多くのことを語るっていうデーモン・アルバーンの技量はずっとリスペクトしてるんだ。他にも(“テンダー”の)あのライン、サビの『Come on come on, get through it, come on come on, love is the greatest thing』なんてパーフェクトだと思う」

●じゃあ、最後の質問です。あなたたちのアルバムの両側にこれを置くとしっくりくる2枚のレコードを挙げて下さい。アティテュードの面でも、歌詞やサウンドの面でも構わないんだけど。例えば、レディオヘッドの『キッドA』だと、オウテカの『LP5』とチャーリー・ミンガスの『ザ・ブラック・セイント・アンド・ザ・シナー・レディ』の間に置くといいんじゃないか、とかね。

ウィル「それ、すごくいいね! 僕、チャーリー・ミンガスが大好きなんだ。なんだかチャーリー・ミンガスのことしか考えられなくなっちゃった(笑)。『チェンジズ・ツー』とかもグレイトだよね。あのレコードなら、どこにでも置きたいな。でも、うーん……やっぱり、イエスとウータン・クランがいいんじゃないかな。まずは冒険的なところで『クロース・トゥ・ジ・エッジ』。で、エッセンスとして『エンター・ザ・ウータン(36チェンバーズ)』とか。音楽的なサンドイッチとして、このアルバムをその2枚の間に置けるなら、僕はこの上なくハッピーになれるね。とても美味なサンドイッチだしね(笑)」

Wu Tang Clan / Enter The Wu Tang (36 Chambers)[Full Album]


●マットは?

マット「僕なら、まずザ・フレーミング・リップスの『ザ・ソフト・ブレティン』。すごく冒険的なアルバムで、サウンドが革新的だから。それからオーネット・コールマンの『ザ・シェイプ・オブ・ジャズ・トゥ・カム』かな。常に境界を押し広げることを自分たちに思い出させるためにね」

Ornette Coleman / The Shape of Jazz To Come (Full Album)


通訳:萩原麻理


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