SIGN OF THE DAY

8otto、岡田拓郎、NAHAVAND―アジカン
とは別の形でシーンを支える後藤ワークスの
変遷、その背景を後藤正文本人に訊く:後編
by SOICHIRO TANAKA November 13, 2017
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8otto、岡田拓郎、NAHAVAND―アジカン<br />
とは別の形でシーンを支える後藤ワークスの<br />
変遷、その背景を後藤正文本人に訊く:後編

8otto、岡田拓郎、NAHAVAND―アジカン
とは別の形でシーンを支える後藤ワークスの
変遷、その背景を後藤正文本人に訊く:前編



●岡田くんやタンテとは、どのように制作を進めていったんですか?

「岡田くんに関しては、ほぼお金出しただけですけど。デモの段階で音源を聴かせてもらってて、『すごくいいね』って褒めることが多かったです。あとは、『最近だとこれがいい』っていう話をお互いにしたり、酒飲んで機材の話したり、岡田くんのグリズリー・ベアに対する思いを聞いたりだとか(笑)」

●(笑)。

「大きい枠で言えば、僕がソロでやりたいこととそんなに遠くなかったりもするから、ソロは『ウィルコっぽいバンドで、こういう風にしたいんだよね』みたいな話をしたら、『それ分かりますよ』って言ってくれて。彼もウィルコとかが一つのモデルとしてあるだろうから、そういった興味の共有とか」

●なるほど。

「アルバムが出来てからも、『最初のスプリング・リヴァーブの音が最高だよね』と伝えたり。だから、彼は本当にのびのびやってもらって、僕は遠く後ろから見守ってるファンの一人くらいの感じでした。自分で整理する人だし、途中経過を誰かに聴かせて、何て言うかを聞きたいだけなんだと思うし。それでこちらは思ったことを言う」

●でも、それは大事だと思います。岡田くんからは僕も一曲だけポーンと送られて来たことがありましたけど。

「そうやって音楽好きそうな人に一言もらうと、たぶん後押しされるんですよ。間違ってないんだって」

●うん、そうだと思います。

「タンテもそれと近いですかね。彼も自分でちゃんと出来る人なんで、あとは自信をもってやればいいんだよ、って思うだけで。バンドのパワー・バランスが上手くいけばいいだけだから、レコーディングを見に行ったりして、朗らかに進むように見守ってます」

●なるほど。

「あと、タンテに関しては、歌詞についてどうしていこうかっていう話をしてるんですけど」

●タンテが『Small Town Talk』(2015年)で一気に全部日本語で歌う方向性に向かったことについては、今振り返ってどうですか?

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「僕は半分くらい英語でもよかったんじゃないかなと思ってます。陽ちゃんの英語については、普通に外国人に聴かせても聞き取れて、いい曲だって言われるから。ただ、逆に『2 steps』とか、初期EPに入ってた、『これ、誰も日本語にしないでしょ?』みたいな曲こそ日本語にして欲しいなと思っていて。『これはみんな日本語でやるよね?』みたいな曲は日本語でやらなくてもいいんじゃないかと思います」

●まさにそうだと思います。『Small Town Talk』は、『2steps』の時みたいに、リズムの刻みもメロディの刻みも細かい曲から、ソウル的と言うか、全体的にテンポ・ダウンして隙間のある感じになったじゃないですか。で、日本語の譜割になったから、ヴォーカル・メロディが全体的におおらかになったことで、リズム的なエッジが軽減したのが少し残念な気がしました。あと、英語の発声特有のthとかを歌わせた時の井上くんの声の響きが、日本語よりも綺麗でチャームがある。

「だから、『Yellow Yesterday』みたいなアルバムを日本語でやるなら、すごく意味があるような気がしていて。『Small Town Talk』は、やりたい音楽があって、それをどう日本語にするか格闘したっていうよりは、日本語で音楽をやるにはどうするべきか、っていうのをやっちゃったような気がして」

●その順序が逆だったんじゃないか、っていうことですよね。

「海外でのトレンドがあるとして、それをどうやって日本語でやるかっていう挑戦をした時には、日本語を使うことによってある種のユニークさがもたらされる面白さがあるんだけど、そうじゃないところで日本語にアジャストしてしまうと、いろんなところにスポイルされて面白くなくなる可能性があるから。でも、それは売れる売れないにかかわらず、みんなやってきてる戦いだから。陽ちゃんもそれはやらないといけないんだけど」

●うん。

「ともあれ、やっぱり彼は音楽の人なんですよ。驚くほど音楽の人で」

●そこがいいところでもあり、悩ましいところでもある。

「だからドラムの田村に、『お前が松本隆みたいな詞を書けたらいいのにね』って(笑)。たぶん、別のメンバーが詞を書いたりしたら、すごくいいバンドになるんじゃないかなって思ったりもするんですよ」

●海外だと、ポップ・ミュージックの制作体制が完全に分業制になったでしょ? で、ベックの新作の作り方がすごくいいなと思ったのは、グレッグ・カースティンとほぼ完全に2人で作ってること。ソングライティング、プロデュース、楽器の演奏も全部2人でやってる。プロデューサーが5人、ソングライターが10人いるっていう海外の分業制ポップの状況から一歩進んでいるんですよ。

Beck / Up All Night (from Colors, 2017)

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●日本でも、歌謡曲の作詞家がヴォーカリストをイメージして書いてたからこそ、ヴォーカリストが他人が思い描く自分のイメージを引き受けることでの広がりが生まれて、面白さがあった。だから、海外の文脈の中でも日本の文脈の中でも、その面白さがもう一回出てきていい気がします。

「僕もそんな気がします。井上くんみたいなミュージシャンは、本当は言葉のことなんか気にせずに奔放に曲を作って、一人作詞家がいたらいい気もするんですよね。でも、彼の魂と繋がる言葉でないといけないから、今は『一緒に歌詞を書いてみようか?』っていう話をしてたり。他にいい人がいてもいいだろうし」

●うん。

「僕も最近、ノイズをギャーッて出しながら人の詩を朗読したりするんですよ。読みながら、人の詩を自分のことのように感じることだってあるから、あんまり書いたものに対して所有欲とかなくてもいいんじゃないかって思うんです。体を使って音にしていくことで、自ずとその人のものになっていくというか。タンテに関しては、そういうことを話しながら、ゆっくり見守っていければいいかなって思ってますけどね」

●タンテは次のプロダクションに入るっていう話はあるんですか?

「うん、もうスタジオに入ってます。だけど、時期は決めてなくて、ざっくりとしか話してないので」

●ああ、そうなんですね。

「ちょっと変わってるレーベルだから、こちらから『いつまでに音源を出せ』ってミュージシャンに働きかけないんですよ。普通は年間予算があって、例えばシェフの『回転体』がすごいヒットしたから、『稼ぎ頭としてはこれくらいまでに出してくれよ』みたいなのが普通なのかもしれないですけど」

●ですね。

「でも、ちゃんと整った時に出してくれるのが一番いいので。だから、自分たちから言って来ないバンドは出ないですよ(笑)。でも、本来はそうあるべきだと思いますし、自分のソロもそうやって作っているので」

●うん。

「みんな作家なんですから、能動性というのは必要だと思っていて。やりたいことがあるっていうのが大事。だから、僕がプロデューサーとして関わっている人たちは、やりたいことがある人たちとか、やりたいことがあったのに実現できなかった人たち。逆に、やりたいことが分からない、でもプロデューサーが何とかしてくれるだろう、っていう人たちとは無理なんだと思います」

●なるほどね。

「ベックのアルバムは確かにすごいですよね。前作もすごかったけど、また全然違うベクトルで面白いものを出してきますからね。まあ、グレッグ・カースティンは、フー・ファイターズのアルバムはどうだったんだよって思いますけど(笑)」

●グレッグはフー・ファイターズとリアム・ギャラガーのソロに関しては大失敗ですよ。

「リアムはどうなんですか? 田中さんはリアムにずっと文句言ってるから」

●ノエル・ギャラガーのアルバムが、リアムのアルバムよりも100倍いいと思う。リアムは今、本職がTwitter芸人だから。海外で、マックス・マーティンの子分みたいなプロデューサーが5人くらいいて、フックのメロディ、コーラスのメロディを書く人が7、8人いて、みたいな体制が確立していったのが2015年くらい。そっちにベクトルが極端に振れたのがここ2年くらいなんですけど、たぶん、「その流れに乗った方がいいんじゃないか」ってレーベルに言われたまま作ってしまった大失敗作。何よりもバンド・サウンドのダイナミズムがどの曲にもない。

「バンド感はないですよね。でも、リアムについては、僕はいいなと思ったんです。久々にいいメロディの曲を歌えてよかったねって。やっぱりリアム・ギャラガーはすごいヴォーカリストなんだって思ったんですけど、いろんなところにペーソスがあるのは、どうしても、『本当はノエルがこういう曲を書いてくれたら最高なのに』って手伝ってる奴らが全員思ってるかのような曲作りに聴こえてしまうところで」

●“フォー・ホワット・イッツ・ワース”とか、完璧にノエル・ギャラガーのソングライティングを分析して作ってるよね。

Liam Gallagher / For What It's Worth (from As You Were, 2017)

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「そうそう、そういう悲しみがあるから。でも、彼の背負ってるものを考えると、僕はおかえりとしか言えない。みんなの反応を見てると、ちゃんといいメロディを歌ってるリアムはウェルカムだったっぽくて。音楽好きの中でも、今回のリアムはいいって言ってる人が多いですよ。っていうか、これまでが破滅的に覚えられない曲ばかりだったから、そういう意味ではよかったなって思いましたけどね」

●僕も現時点では4曲しか聴いてなくて、残りは全部一人で作ってるみたいだから、あんまり変わらないかもしれないけど(笑)。

「でも、そういった分業制の中でやっていくっていうのは、本当に考えなきゃいけないことですよね。バンドには、これからどうすんの? っていうのが課せられてますよね」

●ギャラガー兄弟の比較でいうと、ノエル・ギャラガーの方はデヴィッド・ホルムスとやってて。デヴィッド・ホルムスは、プライマル・スクリームとやった時も含めて、バンドというものを分かっている上でのエレクトロニック・プロデューサーだから、ベックとは違う形のケース・スタディを見せてくれる気はしてる。その流れもあるから、自分の中で兄弟の明暗がハッキリしてるんです。

Noel Gallagher’s High Flying Birds / Holy Mountain (from Who Built The Moon?, 2017)

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●いずれにしても、海外でも日本でも、プロダクションをどうしていくかっていうのは、特にロック寄りのサウンドでは重要になってきてるのは間違いないと思います。

「でも、最終的にはその個人とかチームの個性みたいなものに戻っていくしかないと思うんですよね。技術の新しさっていうのは、みんながずっと付き合ってきているものなんで、その中でどうやっていくか、今は過渡期ではありますよね。ヒットすることとクラシックになることって違うから、クラシックとかスタンダードになるっていうところを見ていかないと、今のスピード感では間違うんじゃないかな」

●うん、そうだと思います。

「例えば、岡田くんのやってることって、全然流行りとは関係なくて、ずっと同じところにいるんだけど、それでこそなんじゃないか、って思ったりするんですよね。8ottoもやってることはあんまり変わらないんだけど、今っぽいことと相性がいい感じがする。わりとミーハーにやった方が弾けるんじゃないの、みたいな」

●じゃあ、岡田くんの話をもう少し訊かせて下さい。まずは、彼をサポートすることになった流れを教えてもらえますか?

Okada Takuro / 硝子瓶のアイロニー (from ノスタルジア, 2017)

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「森は生きているは本当に面白いバンドだと思っていて。特に、ライヴを観て面白いと思ったんですよね。観たのはもうバンドが終わりかけの時だったんだけど、全然歌わないんだよね。延々セッションだけして、最後に一曲だけ歌って終わり、みたいなライヴで。その日は他にヨギーとかも出てて、いいバンドばっかりだなって思いつつ、僕は僕で詩人とセッションしてノイズだけ出してるみたいな、変わった日で。彼らとは話してみたかったけど、そんなにコミュニケーションするような人たちでもないような気がしたから、その日は楽屋にも押しかけず終わったんですけど」

●うん。

「でも、Twitterを見てたら、岡田くんがバンド解散しちゃった後にポロっと呟いてたんですよね。『誰か僕の作品に協力してくれる人はいないかな』みたいな感じで。すぐにツイート消しそうだったんだけど、僕はそれを見ちゃったから。いいタイミングなんだろうと思って、『僕でよかったら協力するよ』ってDMして。それですぐ返信が来て、相談したいことがあるっていうから、渋谷で飯食いながら、好きな音楽とか機材の話をして。『どうしたいの?』みたいな話をしたら、『自分でレーベルがやりたい』ってことで」

●ああ、そうだったんですね。

「彼は本当に面白い人だと思うんですよ。どれだけ楽器を重ねてるの? みたいな、ああいうプロダクションが出来るなんて。こういう人が機会を失っていくのは、単純にリスナーとしても損失だなと思ったから、僕らのチームを紹介して、いろんなやり方を相談したんです。僕がガッツリ入ることも出来るし、お金だけ渡して自由にレコーディングするもよし、みたいな」

●なるほど。

「レーベルやるとなると、在庫をどこに置くかとか、面倒くさいことも色々あると思うから、大人の話は大人に振りつつ、筋道をつけてあげた感じです。でしゃばってもいいことないなと思って、なるべく裏方に徹して、特に口出しはせずに、時々状況を伺いつつで」

●うん。

「でも面白いのが、マスタリングが終わってから、岡田くんが自分で『ちょっとローを足そうと思って』とか言ってて。『岡田くん、グレッグ・カルビだよ?』とか思いながら(笑)」

●ハハハッ。

「音へのこだわりと、感覚が日ごとに自分の中で変わってくるんでしょうね。でも、その気持ちはすごくよく分かるんです。さっきと言ってることが変わっちゃう奴の方が面白いものを作れたりするんですよ。とは言え、大人たちがついてないと、一生ミックスし続けるみたいな、サグラダファミリア状態になる可能性があるから、そういう意味ではよかったんじゃないかな」

●最初に岡田くんと話した時には、いわゆるポップスのアルバムを作るんだっていうのはもう決まってたんですか?

「どうだったんだろう? でも、ノイズにも興味があって、アンビエントのレーベルを作りたいみたいなことも言ってたから、それをどう混ぜていくのか、っていうのは分からなかったんだけど。その時点では自分でも分かってなかったんじゃないかな」

●なるほど。

「グレッグ・カルビって、わりとレベル=音量を入れる人で、岡田くんはダイナミクスを気にするタイプだと思ってたんので、『レベルを入れられちゃうよ?』とも思ってたんですけど、よくよく訊いてみると、岡田くんはそういうマスタリングの手法が好きだって話で。その辺りは僕もまだ分かってないところがあって、不思議な人なんですよ。全ては語ってないだろうし、その時々に思ってることが正しいんだろうし。本当に、送られてきたデモを聴いて感想伝える、って感じでしたけどね」

●森は生きているの頃の彼のキャリアって、8ottoとは真逆で、大きいサイズではなかったけれど、恵まれた環境にはいたと思うんですよ。信頼できるディレクターがいて、過剰にセールスを狙うような環境を強いられたわけでもなく、1st、2ndと本人たちが納得の行くものを作って。

「セールス的にも、インディとしてはしっかり結果が出てましたしね」

森は生きている / 日々の泡沫(from 森は生きている, 2013)

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森は生きている / 煙夜の夢(from グッド・ナイト, 2014)

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●1stから2ndにかけて、さらに作品としては研ぎ澄まされたと思うんですけど、それがマーケットとは合わなかった。でも、個人的には2010年代頭に森が出てきたことは、結構、救いになっていて。日本は全部が全部ポストモダン的になるのかなって思っていたところに、文脈と歴史からの引用があって、そこを体系化するバンドが20代前半で出てくるんだって感じたのが、かなりデカかった。


『森は生きている』合評

●そのバンドが音楽的に研ぎ澄まされていく中で、マーケットとは乖離していくというのは、何かいろんなものを見せられたな、って感じがするんですよ。

「でも、すごくポジティヴなキーワードはいっぱい出てきますよ。やっぱり、はっぴいえんどのことは思わざるをえないんですけど、そこからフリート・フォクシーズまでを繋ぎ合わせる感じがする。周りに三船(雅也、ROTH BART BARON)くんがいたり、吉田ヨウヘイくんのところとか、彼の周辺もけっこう面白くて、そこから陽ちゃんまでもサウンド的には繋がるし。この人がちゃんとしてくれると、もっと面白い効果が生まれる気がする。いろんなところでもっと風通しがいくなったらいいなと思ったりします」

Okada Takuro / Amorphae feat. Mifune Masaya (from ノスタルジア, 2017)

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「彼は本当にユニークですよ。これを家で考えてる奴はすごいな、っていう。時間のことも考えると、相当執着しないと出来ない音楽だと思うから。でも、これに金を出すレーベルってないんですよね。だって、ライヴやらないんだし」

●回収が難しいからっていう理由ですよね。

「それで腰が引けるのも分かるけど、誰かがやらなくちゃいけない。それを破綻しないようにやれる大人は、なかなかいないですよね。でも、うちの〈only in dreams〉のチームはちゃんとしてるから、困った奴の処理が上手い(笑)。だから、よかったと思います。『売れるかどうかは知らないよ』と僕も言い続けてますけど、届くべき人に届いて欲しいとは思ってますから。陰ながら応援してます」

●うん。

「でも、それは彼だけの悩みじゃなくて、みんなの悩みですからね。岡田くんみたいな人が出てきた時に、種を蒔く畑が果たしてあるのか? っていうところに、自分としては向き合っていかないと。20年後に不毛な土地しか残ってないんじゃないかっていう恐怖があるから。最近は、みんなでやるしかないんだよ、っていう思いが強いですかね」

●〈only in dreams〉のリリースを見てると、シーンでもなく、クルーでもなく、ちょっとしたコレクティヴ感がありますよね。強制力はないんだけど、緩やかな繋がりになってきてる。その形は、一番ワクワクするかも。

「基本的には出会いみたいなものなので。タイミングが合った時に、いいモノが出来たらいいよね、くらいで。あまり戦略を練っても違う方向に行きそうですし。新人発掘は得意な人が他にいるだろうし、そこにはまた別の役割の人がいると思うんで、僕は僕にしか出来ないものを作っていくだけですね。時々一緒にやりたいって言ってくれる人がいるのは嬉しいな、くらいで」

●では、8ottoの時と同じく、岡田くんの『ノスタルジア』の横に置く二枚を教えて下さい。正確な二枚というよりは、この二枚を置くと幅を感じられる、っていうようなイメージですね。

「僕は、星野源のアルバムとかと並べて聴いてもらってもいいんじゃないか、っていう気がするけどね。やり方は違うけど、星野くんの音楽だって参照してるものはファンクだったり、マイケル・ジャクソンを感じるような作りになっていて。細野さんとの繋がりもあって、実は根っこの部分は近いんじゃないかと思うところもある」

●なるほど、なるほど。

「日本のオーヴァーグラウンドのど真ん中で流れている曲と比べたって、岡田くんには同じ血が流れてると感じられるんじゃないかな。日本のポップ・ミュージックの古くからの流れと、外来のものをどうやって血肉化していくかっていうことを、オーヴァーグラウンドでやってるか、福生の自室でやってるかの違いでしかないという」

●いいセレクトだと思います。本人は嫌がるかもしれないけど、裏・星野源だっていう。

「絶対怒るでしょ(笑)。でも、そういう考え方もあるっていうことで」

●じゃあ、もう一枚は?

「もう一枚は、対比として、今のJ-ROCK売り場の若い子たちの隣にも置いてほしいって思うけど。両者の違いについて、みんなが気付いてほしいっていう思いがある」

●なるほど。

「岡田くんの丁寧に重ねられた奥行きのある音って、やっぱりよく聴かないと分からない。僕でも全部は分かってないと思うけど、ふとした時に新しい音に気付いたりするから。そういう聴き方をされないっていうのは、時代が時代だっていうのもあると思うけど」

●そうだね。

「Spotifyのプレイリストに入ることにみんなが躍起になって、その週のプレイリストに入らなかったら再生もされない、みたいな時代になってしまったら、それはそれでつまらないけど、そういう週替わりでヒーローが変わっていくような売り場に、ジトっと置いておいて欲しい。かと言って、J-ROCKの子たちが悪いって言っているわけではなくて、対比としてね」

●うん。

「その二つの違いについて考えることは、良い悪いじゃなくて大事なんじゃないかっていう気がするんですよね。僕なんかどっちにも片足突っ込めるから、それについて考えるのは面白いことですし、単純に彼の音楽ももっと広い場所で鳴って欲しいとも思いますし。でも、フェスの最前線がどうとか、音楽の良し悪しはそこだけじゃない。批評として、そういう場所や売場に差しておいて欲しいアルバムっていう感じがします。『ノスタルジア』っていうタイトルがついてるのも面白いですよね」

●そうだね。皮肉なのか、何なのか。

「でも、皮肉に響かないでほしいな、とは思いますね」

●2017年のメルクマールに、なるべくしてなったレコードではあるんだと思いますね。

「そうでしょうね。流れを変えさせる何かになりたいんだ、っていう意思は感じますよね。特に日本語だったのはよかったと思います。少なくとも、日本語を話せる人には開かれた音楽で、ちゃんと聴かれたいと思ってるのが、しっかりと作品から滲み出てる。僕たちの世代は構えていたから、面白い音楽を作りながらもちゃんと開かれてるっていうところが、すごくいいと思っていて」

●ええ。

「そういうところは若い世代ならでは、と思います。この世代が音楽を変えていくんじゃないかな。だから、そこに不安は感じてないですね」



写真:Victor Nomoto - Metacraft
衣装協力:パンツ/sneeuw (03-6809-0436)

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