SIGN OF THE DAY

チャンス・ザ・ラッパーが先導する「新しい
シカゴ」は如何に生まれたのか?その変遷を
紐解くシカゴ年表④「2016年編」
by AKIHIRO AOYAMA January 18, 2018
チャンス・ザ・ラッパーが先導する「新しい<br />
シカゴ」は如何に生まれたのか?その変遷を<br />
紐解くシカゴ年表④「2016年編」

チャンス・ザ・ラッパーが先導する「新しい
シカゴ」は如何に生まれたのか?その変遷を
紐解くシカゴ年表①「2011~2013年編」


チャンス・ザ・ラッパーが先導する「新しい
シカゴ」は如何に生まれたのか?その変遷を
紐解くシカゴ年表②「2014年編」


チャンス・ザ・ラッパーが先導する「新しい
シカゴ」は如何に生まれたのか?その変遷を
紐解くシカゴ年表③「2015年編」


2016年はシカゴにとって、大きな節目になった年と言えるだろう。ストリーミング限定作品として初めてビルボード・チャートにランクインする快挙を成し遂げた、チャンス・ザ・ラッパーのミックステープ3作目『カラーリング・ブック』を筆頭に、ジャミーラ・ウッズ、ジョーイ・パープ、ノーネイム、サバといった〈セイヴ・マネー〉周辺のアーティストたちがこぞってキャリアの転機となる作品を上梓。シカゴ+イラク=「シャイラク」という不名誉なレッテルは、彼らから届けられた多彩な音楽作品によって、鮮やかに自由闊達かつ軽妙洒脱なイメージへと塗り替えられていった。

また、2016年はアメリカの政治・社会においても激動の一年となった。シカゴを拠点に政治家としての活動を始め、黒人初の合衆国大統領となったバラク・オバマの、8年に渡った任期が終了。それに伴う次期大統領選では、予備選の結果、民主党のヒラリー・クリントンと共和党からの出馬を勝ち取ったドナルド・トランプの一騎打ちに。チャンスは若者の投票をサポートするなど、主に草の根的な活動を通して、アメリカの未来を決めるために選挙へと参加していくことになる。




>>>2016年2月
カニエ・ウェストが『ザ・ライフ・オブ・パブロ』を発表。ゴスペルを全面的に取り入れた“ウルトライト・ビーム”にはチャンス・ザ・ラッパーがゲスト参加。その他、“ウルヴス”にヴィック・メンサも参加した。同作は4月までTIDALのみでのストリーミング限定という形態で公開され、それにより全世界でのTIDAL利用者は約300万人増加。4月にSpotify、Apple Musicなど、他のストリーミング・サービスとデジタル販売が解禁となり、4月初週の全米チャートで1位に輝いた。

Kanye West / The Life of Pablo



>>>2016年4月
チャンス・ザ・ラッパーが、長年サポーターだった地元シカゴのプロ野球チーム〈ホワイトソックス〉の帽子をデザイン。〈ホワイトソックス〉のマーケティング担当者が〈シカゴ・トリビューン〉誌に語った話では、キャップ・メーカー〈ニュー・エラ〉と共同でブランドを代表してくれる有名人を探していたところ、リストのトップにチャンスの名前が挙がったのだという。彼と〈ニュー・エラ〉は、後に『カラーリング・ブック』のアートワークで象徴的に使用される、「3」の文字が記されたキャップでもコラボすることになる。ちなみに、この「3」という数字は、『カラーリング・ブック』が3枚目のミックステープであることを指すのはもちろん、キリスト教の三位一体も意味するという。



>>>2016年5月
チャンス・ザ・ラッパーが3作目のミックステープ『カラーリング・ブック』を公開。発表当初はApple Music限定。完全なストリーミング限定作品として初めて、ビルボード200にランクインする記録を打ち立てた(初登場8位)。

Chance The Rapper / Coloring Book

Chance The Rapper / Coloring Book 合評


>>>2016年6月
ジョーイ・パープがミックステープ『iiiDrops』を公開。ジョーイは〈セイヴ・マネー〉の一員であり、同じくクルーのメンバーであるカミと共にレザー・コーデュロイズ名義でも活動している。彼は2012年にミックステープ『ザ・パープル・テープ』を発表していたが、その頃は音楽に対してシリアスではなかったという。しかし、その後のチャンス、ヴィック・メンサ、トーキョーらの活躍を傍で目撃したことにより奮起し、このミックステープを制作。結果、同作は多くのメディアから高い評価を受け、彼にとってキャリアの転機を刻む作品となった。

Joey Purp / iiiDrops



>>>2016年7月
ジャミーラ・ウッズがミックステープ『ヘヴン』を公開。ドニー・トランペット&ザ・ソーシャル・エクスペリメントの“サンデイ・キャンディ”、チャンス・ザ・ラッパーの“ブレッシングス”という重要曲でコーラス部の歌唱を任されてきた彼女は、シカゴのインディ系レーベル〈クローズド・セッションズ〉の下で本作を発表。当初はSoundCloudで無料ダウンロード公開されていたが、高評価を受けてインディ・ロック系の名門〈ジャグジャグウォー〉と改めて契約。2017年10月、CD・レコードのフィジカル形態での再リリースが行われた。そして、彼女は〈セイヴ・マネー〉クルーとしては昨年のノーネイムに続き、この2018年1月23日に初の日本公演を行う。

Jamila Woods / Heavn

〈ジャグジャグウォー〉のレーベル主宰者が
語る、島国ニッポンの孤立を尻目に激変する
2010年代のポップ音楽事情のすべて:前編



>>>2016年8月
チャンス・ザ・ラッパーがインディペンデント・ミュージックをラジオ・プレイさせるためのプロモーション・サイト〈ラッパーレディオ〉を立ち上げ。当初はチャンスの楽曲“サマー・フレンズ”と“ノー・プロブレム”2曲からスタートしたが、現在はチャンスが関わった楽曲のみならず、ジデンナの“バンビ”、リンキン・パークの“ヘヴィ”といった楽曲にも投票可能となり、同サービスは徐々に拡大しつつある。


>>>2016年8月
チャンス・ザ・ラッパーが〈ナイキ〉のCMに出演。チャンスが新曲“ウィ・ザ・ピープル”を書き下ろした同CMは、ヒロ・ムライが監督を務めた。ヒロ・ムライは東京生まれで現在LAに拠点を置く映像監督。アール・スウェットシャツ、チャイルディッシュ・ガンビーノ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、スプーン、フライング・ロータスといった面々のミュージック・ヴィデオを手掛けてきた他、チャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァー製作の『アトランタ』ではドラマの監督も務めるなど、多岐に渡る映像作品で活躍の場を広げている。

Nike: Unlimited Together



>>>2016年9月
チャンス・ザ・ラッパーが〈マグニフィセント・カラーリング・ワールド・ツアー〉をスタート。同ツアーでは、全米黒人地位向上協会(NAACP)とチームを組み、大統領選に向けた有権者登録を行うための機会が設けられた。アメリカでは、選挙で投票するためには事前の申請が必要であり、登録の手続きや必要な身分証明書の種類などが州によって異なる。そのため、過去にはアフリカ系アメリカ人の選挙参加を妨害する目的で有権者登録制度が利用されることもあった。





>>>2016年9月
チャンス・ザ・ラッパーが地元シカゴでのライヴ〈マグニフィセント・カラーリング・デイ〉を開催。スクリレックス、リル・ウェイン、タイラー・ザ・クリエイター、ヤング・サグ、2・チェインズ、アリシア・キーズ、ジョン・レジェンド、リル・ウージー・ヴァートらが出演。この大規模ライヴは、〈ホワイトソックス〉が本拠地とする野球場〈USセルラー・フィールド〉で開催され、4万人以上が会場に詰め掛けた。また、転売屋から約2000枚のチケットをチャンス自ら買い戻し、公式サイトを通じて定価での再販売を行ったことでも話題となった。

Chance the Rapper / Magnificent Coloring Day



>>>2016年10月
〈ビルボード〉誌の表紙を飾ったインタヴューにて、チャンス・ザ・ラッパーが次期大統領選ではヒラリー・クリントンに投票すると明言。また、同誌には、それまでストリーミングのみの作品には受賞資格が与えられていなかったグラミー賞に改正を促す広告が掲載された。


>>>2016年11月
若者の投票を促すことを目的に、チャンス・ザ・ラッパーがシカゴでフリー・コンサートを開催。大統領選挙の投票日となった11月8日の前日夜、黒人の若者を支援する団体〈ブラック・ユース・プロジェクト〉の主導の下、コンサート前に観客が事前投票に参加。その後、投票した数百人がグラント・パークで行われた無料コンサートを観覧した。

Chance the Rapper Leads Hundreds to Vote



>>>2016年11月
ドナルド・トランプの大統領選勝利を受け、ニコ・シーガルがドニー・トランペット名義を辞めることを発表。「最初はジョークやバカな言葉遊びとして始まったものだけど、もう面白くなくなってしまった。トランプの憎しみに満ちたトーンや痛ましいメッセージと関連付けられたくない」とFacebookに投稿し、その後は本名のニコ・シーガルとして活動している。


>>>2016年12月
2017年のグラミー賞ノミネートが発表。チャンス・ザ・ラッパーは最優秀新人賞、ベスト・ラップ・アルバム賞をはじめ、ゲスト参加したカニエ・ウェストの楽曲を含めると計7部門でノミネートされた。2016年まで、グラミー賞ではストリーミングのみの作品、アーティストは選考プロセスに加えられていなかったが、2017年から変更された結果のノミネートとなった。

Best New Artist: 59th GRAMMY Nominees



>>>2016年12月
チャンス・ザ・ラッパーとジェレマイの共作EP『メリー・クリスマス・リル・ママ』がSoundCloud上で公開。敬虔なクリスチャンとして知られ、『サーフ』や『カラーリング・ブック』といった作品でもキリスト教から受けた影響を事あるごとに垣間見せてきたチャンスだが、クリスマスをテーマにした作品はこのEPが初めて。同作は、2017年12月に新曲9曲とリミックス1曲を追加し、『メリー・クリスマス・リル・ママ:リラップド』として再公開された。

Merry Christmas Lil' Mama Re-Wrapped (Disc One)

Merry Christmas Lil' Mama Re-Wrapped (Disc Two)



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