SIGN OF THE DAY

特別対談:岡田拓郎(森は生きている)×
吉田ヨウヘイ(吉田ヨウヘイgroup)前編
「この二人って、ジム・オルークさんと
大友良英さんが共通項なんですよ」
by SOICHIRO TANAKA November 18, 2014
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特別対談:岡田拓郎(森は生きている)×<br />
吉田ヨウヘイ(吉田ヨウヘイgroup)前編<br />
「この二人って、ジム・オルークさんと<br />
大友良英さんが共通項なんですよ」

この島国のポップ史における2013年を定義しようとする時、それは東京インディ云々と呼ばれる機運の盛り上がりと共に、一連のバンドとはかなり一線を画したバンド、森は生きているが発見された年だったーーもしこんな定義が何かしら有効なら、この2014年という年は、ようやく吉田ヨウヘイgroupが発見された年号として記憶されるに違いない。

その最大の契機になったのは、言わずもがな、彼らの2ndアルバム『Smart Citizen』の存在だ。取りあえず乱暴に「和製ダーティ・プロジェクターズ」と呼ばれたそのサウンドは、彼らの音楽に直接的に影響されたというよりは、むしろ本家が示したジャンル横断的なアイデア、エクレクティックな音楽性ーーいくつものジャンル/アンサンブルにおける個々の楽器の役割を、元からあった文脈から引きはがし、それまでとは違った組み合わせを施すことで、新たなサウンドとして再定義する、そんなアティチュードに触発されたものだった。

それが証拠に、フィールド・レコーディングとポスト・プロダクションによる彩りを添えたサティ~印象主義を思わせるピアノの小曲に始まり、『Smart Citizen』に収められた9つのトラックは、いくつもジャンルのアイデアを少しばかりぎこちなく、少しばかり無理やりに接合させていく。フルート、ファゴットといった管楽器の音色、女性コーラスの華やかさもあって、思わずチェンパー・ポップという言葉を使いそうになってしまうものの、全体のアンサンブルは明らかにマス・ロック的。ハットの細かいニュアンス、金属的な鳴りを強調した録音が何よりも象徴的だが、オーガニックというよりは、どこか数学的とも言える緻密なリズムの構築にこそ、彼ら最大の特徴はある。管楽器や細かい刻みのギター・リフによって提示されたひとつのテーマを、時にはジャズ/フュージョン、時にはソウル/ファンク、時にはマス・ロック的なリズムのアイデアをループ感のあるグルーヴに落とし込み、上モノのメロディによる新たなテーマの提示を加えていくことによって、和声の変化をきらびやかにつけていく。

そうして培われたサウンドは、例えば、バトルスがオーケストラル・ループによって生み出したビートの揺らぎにも似た、彼ら独自の訛りを持ったグルーヴへ、バンド独自のイディオムへと結実した。全9曲35分というコンパクトなヴォリュームながら、レコーディング直前になってようやく現在のメンバーを招集するまでにこぎ着け、自主でリリースするのか、レーベルを探すのか、その後のプロモーションのさしたる当てもない状態で録音されたとはとても思えない高密度。1stアルバム『FROM NOW ON』との大きな違いは、ソングライティング、演奏の面での充実だけではない。吉田ヨウヘイgroupがレコーディング・アーティストとして一歩踏み込んだ作品になったこと。それには、以下の対話でも語られている通り、アルバムの共同プロデューサーでもある、森は生きているの岡田拓郎の存在はかなり大きかったようだ。

そして、アルバム完成後の彼らの快進撃は歴史が語る通り。このアルバムの存在によって、ひとまず彼らにきちんと脚光が当たったのは、半ば必然とは言え、とても幸運な事件だった。

だが、さらに時代は流転していく。彼らの盟友でもある、森は生きているというバンドは、来るべき2ndアルバム『グッド・ナイト』によって、さらにその遠く先にまで行ってしまった。この有無を言わせぬアルバムが産み落とされるには、少なからずこの2バンド間のダイナミクスがあったはずーーアメリカ編集盤『ラバー・ソウル』を聴いたブライアン・ウィルソンが『ペット・サウンズ』という怪物的なレコードを作ってしまったように。そうした力学をあらわにすることも、以下の対談記事の目的のひとつでもある。

件の『グッド・ナイト』の詳しい内容については、改めて後日にアップされるインタヴュー記事に譲りたい。ただ、ひとつ。これは我が友人ニコラ・テスラが記した「理想的なポップの定義」にもっとも相応しい作品だ。現在、ネット上で聴くことが出来るのは、全9曲49分の流れの中で、ひとつの大きな山場でもある三部構成17分に及ぶ、以下の“煙夜の夢”のみ。取りあえずは、この1曲と、以下の対話から、何かしら想像をめぐらせてもらいたい。

森は生きている / 煙夜の夢 a,香水壜と少女 b,空虚な肖像画 c,煙夜の夢(夜が固まる前)

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最後に余計なことを敢えてもうひとつだけ。彼らの1stアルバム『森は生きている』のソフト・ロック的な側面、はっぴいえんど的と称された側面ーーどこか人懐っこい部分を愛したリスナーの中には、突き放された、と感じる者も少なくないだろう。だが、もしそう感じてしまった未来の君のために、こんな引用を捧げたいと思う。「テクストは怠惰な機械だ。いわば白紙のまま、すでに語られた、あるいは語られていない空間を満たすために、読者に過酷な労働をもとめる」。どんな時も、最終的に音楽を輝かせるのは、作り手ではなく、聴き手だということ。この『グッド・ナイト』はあなたのためにある。

今回の対談を進める上では、2バンド間の類似と差異の両方を浮かび上がらせること、そのことによって、この島国のポップ・シーンの最新地図をおぼろげながらにでも描き出すこと、を心がけた。




●まず、そもそも二人が知り合って、互いに距離が近くなったきっかけとか、その辺りを教えてください。いつ頃の話?

吉田ヨウヘイ(以下、吉田)「一番最初は僕が1stアルバム(『FROM NOW ON』)のレコ発に、森は生きているに出てほしいと思ってメールしたのがきっかけですね」

●その時は面識もなく?

吉田「ないですね。えっと、いつだ? 去年の……2013年の1月とか?」

岡田拓郎(以下、岡田)「連絡来たのが、12月とかかな? 年明けすぐとかかな?」

●岡田くんはそれ以前は、吉田くんたちの音とか、存在はどの程度まで把握していたの?

岡田「僕はネットのリサーチ魔なんで、岡村詩野さん主宰の〈radio kitten〉のコンピレーションで名前とかも聞いてたり」

吉田「あ、そうなんだ? それ知らなかった(笑)」

岡田「だから、ロット・バルト・バロンとかも知ってて。それで、(吉田ヨウヘイgroupは)音までは聴いてなかったんですけど、名前は知ってて。それでたまたま声をかけてくれて。で、その声のかけ方が、音を聴いてもらったプラス、吉田さんはジャズのレコード屋さんに勤めていたんで、僕のブログ読んで、フリー・ジャズのことばっか書いてるから、それでそのへんを面白がってくれて。吉田さん、いつもメールがすっごい長いんですよ(笑)。その時もいきなり、『デレク・ベイリーが何とか~』みたいなメールが来て。『おお、こんなに食いついてくれるの?』って思って。で、音を聴いたら、やっぱり変な音してるし、これは面白そうだな、と思ってライヴ出させてもらったのが最初ですね」

●吉田くんが、森なり、岡田くんの存在を知ったのは?

吉田「毎年、〈JET SET〉の(田中)亮太さんの年末ベストまとめみたいなのがあるんですよ。今年聴いてよかった10枚っていう。で、ちょうど亮太さんが声をかけてくれて、僕らの音源を扱ってくれた年が2012年だったんで、『この人がベストに勧めてるの何だろう?』って思ったら、そこに森は生きているのCD-Rが入ってて。ほかは昆虫キッズとか、もうちょっと名前が知れてるバンドだったんですけど、確か森は生きているだけがCD-Rだったんですね、その10枚の中で。しかも、本当に明らかに天才、って書いてあったから――」

岡田「そんな(笑)」

吉田「で、『これは気になるな』って思って、聴いて、すごいいいなと思って。最初聴いた時は、ママレイド ラグみたいだな、と思ったんですよね。だけど、めっちゃ厳しい音楽だな、と思って」

●ストイック?

吉田「はい。なんか、渋谷系の直系と呼ばれているものは、ふわっとしたり、おしゃれな感じにまとめる方向が多かったと思うんですけど、すごくキリッとしたものを感じて。厳しいなと思って。ブログ見たら、デレク・ベイリーとか書いてあったんで、『あ、それでこうなるのか』と思って、仲良くなりたいなと思ったんですけど」

●岡田くんのあのブログは、いつぐらいから何をモチベーションに始めたんですか?

岡田「あれは本当に、単純なメモ書きのつもりで。っていうか、森が始まって、音源もそんなに出してないし、でもホームページのコンテンツのために何か要素が必要だな、となった時に、単純にブログかなとか思って。誰も見ないだろうけど、って。それで適当に書き溜めてたのが始まりなんですけど。でも、その後、会う人会う人に、あのブログに引っかかってくれる人とかがいて、書いといてよかったな、と思いましたね」

●初めて岡田くんのブログを覗いた時に、3つ4つ読み進めたんだけど、実際のレコードも手に入んないしさ、これは無理だ、って(笑)。

岡田「あははっ(笑)。ユーチューブにも音がないのばっかだったりしますしね(笑)。でも、〈P-VINE〉に繋がったのもあのブログがきかっけで。(〈P-VINE〉のA&Rである)柴崎さんがたまたま僕のブログを読んでくれて、スワンプ・ロックのくそマニアックな盤があるんですけど、それの隣に柴崎さんが絡んでたゲラーズのレコードの破片が1ミリくらい映ってたんですよ(笑)。で、『スワンプだけじゃなくて、ゲラーズも?』って、喰いついてくれたっていう。音楽聴かないミュージシャンとか多いと思うんですけど、僕はそうやって本当にレコードが好きでしょうがない人とかに聴いてもらえれば嬉しいし、いろんな畑のそういう人と出会えたのは、あのブログのおかげだったのかなと思ったりしますね。音楽好きでよかったな、っていうか」

●今の岡田くんの、あまり音楽聴かないミュージシャンが多いっていう話。たぶん、特に日本に関しては、ここ10年くらい本当にそうだったと思うんですね。でも、ここ数年、そこが確実に変わってきたっていう実感もあって。ただ二人の場合、本当に音楽が好きだ、それ以上にレコードが好きだ、っていう感覚はシェアされてるところなんですか?

吉田「まあ、僕の場合は、行きがかり上、レコード屋で働けるようになっただけで、岡田くんみたいにコレクター色があったりとかはそんなにないんですよね」

●でも、岡田もコレクター体質ってこともないでしょ?

岡田「いや、オリジナル盤大好きです(笑)」

●(笑)そこは大事だね。

岡田「でも、コレクター色っていうより、聴きたいやつを買っている感じなんで」

●じゃあ、吉田くんの場合、今、音楽的なインプットってところで言うと、お店の品揃えから、っていうのはかなり大きくなった?

吉田「今はそればっかりですね。ただ、どうしてもジャズとかが多くなるんで、ほかにも聴くようにはしてるんですけど、やっぱり多いかな。お店に入ってきて、CDになってないってもので興奮して、興味持ったりとかっていうのがあるんで。『こういうすごい面白いのあったよ』って、岡田くんに連絡して、聴いたりとかはやってたよね?」

岡田「そうですね。で、買わされるみたいな(笑)」

吉田「一時期、かなりいいお客さんになってましたね(笑)」

岡田「月に2、3万くらい使ったりしてたよね。また行きます、って」

●(笑)それって、今年の春とか?

岡田「いや、もう会ってすぐに。ライヴの前に一回くらい会おうかってなって、僕もお店に遊びに行きたいなと思って。ああ、そうだ、初めて行った、その日にアルキメデス・バドカー教えてもらったんだ。えっと、あれは何て言えばいいんだろう?」

吉田「エスノ・ロックとかかな?」

岡田「たぶん、フリー・ジャズやってた人たちが、ビートルズとかピンク・フロイドとか同時期のロックに影響を受けて、でも音楽いろいろあるから、世界中を周って、もっと幅広く勉強しようとか言って、アフリカだったり、中近東の音楽とか勉強してきて、またスウェーデンに戻って、民族的でもあるし、すごく未来的ジャズ・ロックにも聴こえる何とも言えない音楽をやってて。で、それをたまたまジム・オルークがライナー書いてて」

吉田「日本盤出した時には」

岡田「そうですね。で、とりあえずジムさんと大友(良英)さんが共通項なんですよ。で、ジム・オルークが勧めてた盤が一枚あって、聴いてみようか、って。とにかくよかったんですけど、凄まじい値段だったんで、その日は買わなかったんですけど。でも、それの後も、毎日寝る時に天井を見ると、アルキメデス・バドカーのミニマルな曲がバーッと流れてきて、『こんなんじゃ寝られない!』と思って、3日後くらいにすぐ電話して、『買う、取り置いてくれ』って。だから、あの辺りの時、毎月くらい行ってたかな?」

吉田「4枚アルバムあるんですけど、それを全部入手して」

●ハハハッ!

吉田「本当のコレクターしか持っていない、幻の7インチがあるらしいんですけど、あとはそれを残すだけですね」

岡田「あれ、現地でもコレクター売ってくれないらしいですね」

Achimedes Badkar / Förtryckets Sista Timme

Achimedes Badkar / Jorden


●じゃあ、その頃の二人の会話っていうのは、基本的に、音楽というか、レコード?

岡田「そうですね」

吉田「メールしたあと3月に来てくれたんですよ、お店に。それが初対面で、お店で一緒にレコード聴いて、もう5分くらいで一緒にやろうみたいな話をしてくれて」

岡田「そうですね(笑)」

吉田「それで仲良くなって、そっからはずっと友達っていう感じですね」

●じゃあ、例の、二人と吉田ヨウヘイgroupの(池田)若菜ちゃんが一緒にやってる發展――即興とか、ノイズ、ドーロン、実験音楽寄りのプロジェクトを始めるって決めたのは、いつのタイミング?

岡田「それも会った日に(笑)」

吉田「その時にやろうってなって、その二週間後くらいに、飲もうみたいな感じで改めて会ったんだよね?」

岡田「そうだね」

吉田「で、若菜ちゃんも、僕とは別に、岡田くんと知り合いになってて」

●え、そうなの? 別々に?

岡田「その前に、同世代のライターが集まって、新しいサイトを作ろうとしてて――結局おしゃかになったみたいなんですけど――その集まりがあるからってことで、たまたまいろんな繋がりがあって、そこに遊びに行ってたんですけど、その時に……あ、それも僕のブログを見てだ! デレク・ベイリーのこと書いてあるっていうのでやたら喰いついてきた変な女の子がいて、人の家に土足で入ってくるようなことばっか言ってきて(笑)」

吉田「(笑)」

岡田「なんて無礼なやつなんだ、って思ったんですけど。そこで結構話したんですけど、その一週間後くらいに吉田ヨウヘイgroupに入った、みたいな(笑)」

吉田「そう、岡田くんと2月に若菜ちゃんが知り合って、3月頭に若菜ちゃんがうちのバンドに入って、その後、僕が岡田くんと会って、すぐ僕と岡田くんと若菜ちゃんで、みんな共通の知り合いならっていうので飲んで、なんかやろう、ってなったのが3月の終わりとか?」

●すごいね。じゃあ、あっという間だ。

吉田「そうですね」

岡田「トントントンでしたね」

發展 / session1


吉田「会いに来てくれることになって、お互いツイッターをフォローしたんですけど、岡田くんが自分のソロをサウンドクラウドに定期的にアップしてたんですよ。ユーチューブかな? 電子音響の作品を突然アップしてて。ピーピーしか鳴ってないやつを。『あ、ポップスのクリエイターで同時にこれを出す人がいるんだな』と思って。本当に知ってる人とか、知らない人含めても、そんな人初めて会ったな、って。で、すぐに会った時に、『この間、あれをアップしてたの聴いて、すごく思うところがあったんだ』って話をして」

岡田「そうだね、言ってたわ」

吉田「それですごく盛り上がったような気がします」

●にしても、そんな風にすぐに話が進んだのは、お互いそれぞれのバンド以外のアウトプットが欲しい、普段のバンドとは違うことをやりたいっていうのが、そもそもあったからなの?

岡田「吉田さんと会って、話してすぐわかったのが、僕らの共通するのは、ポップス――ビートルズとか、アンビエントとか、最近のUSインディとかもすごい好きだけど、その裏でやっぱり大友さんとか、ジム・オルークとかがやってた実験音楽にもすごい興味あるっていう。でも、例えば、『じゃあ、AMMみたいなのやろうぜ』って言っても、すぐメンバーが集まるものじゃないのに、たまたま会ったところで、お互いそこを共有出来る人がいたのが初めてだったんで、『これはやらない手はないね』みたいな感じで」

吉田「たぶん、即興だけが好きだったら、迷いなく即興とか、ノイズとかやれたと思うんですけど、二人とも軸にはポップスの作曲とか、ロックの作曲とかがあって、バンドみたいな音楽性があるっていう認識があって。その上で『そういうものが好きな時にどうしたらいいんだろう?』って、ずっと迷いながら音楽をやってたんで。『だったら、ロック・バンドはそれぞれやってるから、それとは別にそういうものもやってみようか』って話になったって感じですね」

發展 / improvisation20130820 no.2

AMM / Later During A Flaming Riviera Sunset

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●じゃあ、現時点では、發展での活動、経験というのは、どの程度、それぞれ自分のバンドとクロスオーヴァーしてるっていう実感がありますか? 何かしらシナジー効果があると感じてるのか、それとも、アウトプットを分けてるって感覚の方がまだ強いですか?

吉田「行ったり来たりだけど……」

岡田「だね。僕、今回の森の二枚目って、かなり無意識で作ってたんですけど、それこそ昨日、發展のカセットで一緒にやってるやつの音の編集してたら、なんか似てるっていうか。あ、吉田さんとやると、吉田さん、すぐ分析的なこと言うんですけど」

吉田「ハハハ(笑)」

岡田「僕、そういう思考とかなくて、無意識にやるタイプなんですけど。でも、そういうのが自然と出てたんですよね。あの長い曲もそうだったし。この間、一回インタヴューあったんですけど、なんで自分がこんな長い曲作ったのかとか、こんなよくわかんないアルバム作ったのかとか、しゃべればしゃべるほどよくわかんなくなってきちゃって。それで、『何で作ったんだっけな?』って、この一週間ほど考えてたんですけど、結構、僕の中で『森の二枚目作るにあたっては、發展で三人でやってたのは大きいな』と思いましたね」

吉田「最初にやり始めた時に、ジム・オルークとか、大友さんに憧れてるところって、ポップな作品のプロダクションに、即興とかノイズをやってないと入れられないようなレヴェルのプロダクションが入ってるのが好きだって話になって。だから、(ノイズや即興を)やったことがない人が、ポップスにそういうものを取り入れようとするのは、ちょっと違う感じがするっていう話にもなって」

岡田「そう(笑)」

吉田「だから、『まず普通にやってみないと、出来ないんじゃないか?』っていう動機っていうか。だから、『バンドに還元するとか思わずにやんないと駄目なんじゃないか』って話になった記憶があるね、確か。で、ようやくそれが、ポップスの方に取り込めるぞ、ってなったのが最近っていう感じなのかな、なんとなく」

岡田「それ、僕は二枚目は意識的には出来なかったけど、今、何か作るとなると、やっぱり出来るような気はするな。だいぶ、入ってきたような気はしますね」

●なるほど。今みたいな分析的な話を吉田くんはする?

岡田「そうです。それも今、言おうとしたんですよ(笑)」

●でも確かにそうだよね。取り入れるって形ではやれないよね。

吉田「そうですね。大友さんがインタヴューでも、『ここでガーッとノイズ出してくれ』ってポップスの現場で言われてムカついた、みたいな」

全員「ハハハッ!(笑)」

吉田「そういう軽々しいものじゃないらしい、みたいな。やったことないけど、怖い世界らしい、みたいな認識はあったんですよね。だから、怖いのがどういうことかわかろう、みたいな、おっかなびっくり感は最初ありましたね」

岡田「そうだよね、怖いよね、即興は(笑)」

●じゃあ、吉田くんの場合はどう? この前の『Smart Citizen』を作ったのは、發展をやり始めた後ではあるよね? でも、そんなには具体的に関係してはいない?

吉田「確かインタヴューで、『これは發展の影響はありますか?』って言われて、『ないです』って言った記憶があるんで。たぶん、その時は意識してなかったんじゃないかと思いますね。でも次は入るかな、って感じはします。僕らの2ndでは岡田くんに半分プロデュースみたいなことをお願いして、最後のポスト・プロダクションを一緒にやったんですけど、その時の手法を次の自分たちの作品では踏襲してやろうと思ってるんで。そこは發展のプロダクションとも関係あるし」

●じゃあ、『Smart Citizen』のポスト・プロダクションの行程で、岡田くんに手伝ってもらうように声を掛けた理由と、具体的な作業、プロセスについて教えてもらってもいいですか?

吉田「最初の(森は生きているの)CD-Rが岡田くんのミックスだったんですけど。それがもう音にとにかくこだわってて。偏執的にミックスしてるのがわかって。レイヤーをすごく重ねてあるんですけど、どれもちゃんと扱えてるし、ミックスのアイデアがめちゃくちゃ豊富で。会う前から、ポスト・プロダクションに強い人なんだなって印象があって。実際に發展をやってても、ちょっと音源を任せちゃうと勝手にレイヤーをどんどん重ねてきて、すごい量の音が入ってるんですけど」

岡田「(笑)」

吉田「それがやっぱり的確なんですよね、全部。だから、バンド・プレイヤー、作曲家というだけじゃなく、プロデュース的な能力も高い人だなっていうのがあって。『じゃあ、自分の作品で音楽性を変えられないところまで作った後に、彼に加わってもらったらどうなるのか?』ってことでお願いしたっていう感じで。その時、岡田くんが『グリズリー・ベアみたいなことやろう』って言いだして(笑)。それでグリズリー・ベアのすごいプロダクションが凝ってるやつを聴かせてくれて。それがすごい刺激的で。自分にも合う方向だけど、自分には考え付かなかったんですよ。岡田くんと共同作業出来たのが二日くらいだったんですけど、そのレコーディング最後で学ぶことが多かったんで、この手法で次のアルバム行けるかも、って思って。今、そういうこと考えながら作ってるっていう感じなんですけど」

●それ、より具体的に教えてください。どういうことか。

岡田「作業の内容ですか? それこそグリズリーとか、あのへんの人たちって、たぶん、現代音楽とかフリー・ジャズとか通っているような人たちだし、極めて厳しいノイズを出してくるんですよね。吉田さんが最初聴かせてくれた途中までの音源が、結構気持ちよく聴けるっていうか、気持ちよく聴くためのミキシングとか、プロダクションの完璧なところまでやってたんですけど。でも制作の始めの時に、『これは何回も聴けないような耳が疲れるアルバムにしたいんだ』みたいなことを言ってたんですけど、そのわりには結構気持ちよく聴けちゃったから。じゃあ、すごいのを入れようか、とか言って(笑)。それが、ちょうど僕が『グリズリーとか、テーム・インパラとか、ミーハーな音楽も聴かなきゃな』ってずっと聴いてた時にちょうど重なって。それでいろいろ試したいこともあったんで。何やったっけ? シンセ系は結構入れたのかな?」

吉田「そうだね。アルペジエイターをここに突っ込もうっていうのも、いきなりあったんですけど。面白かったのが、生ドラムでもう完成しているのに対して、スネアの音だけ金属的な音をシンセ音で加えて、そこにリヴァーブを深くかけたようなやつを別の音像として配置させて、耳に引っかかるようにしようとか言ってて。聴いた人から、『打ち込み入ってる?』って言われたことがほとんどないんで、印象に後々残ったかっていうとわかんないんですけど、作った時はそれ入れた瞬間に急にキラキラし出したっていうか。バスドラだけここで固いキックの打ち込み音を被せようとか、そういうリズムのプロダクションで凝る方法をいろいろ提案してくれて。確かにグリズリー・ベアを聴いてると、いきなりフロア・タム入って、そこだけドーンッて深いリヴァーブ入ってる音があったりするな、っていう。ドラム・セットとは違う感覚での打ち込み? みたいなのを提示してくれて。それと同じ手法で音程があるものも足していく、っていう感じだったんで。『あ、こういうふうなことがポスト・プロダクションなんだ』って思ったっていうか、本当に全部教えてもらったって感じです」

吉田ヨウヘイgroup / ブールヴァード

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Grizzly Bear / Yet Again

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●岡田くんって、そういうプロダクションに対するアイデアっていうのは、ただ耳で聴いて、こういうことをやってるんじゃないかと判断してるのか、何かを読んだりして、参考にしてるのか、どういうこところから蓄積してるんですか?

岡田「僕はやっぱり言うほど『サンレコ』とかも毎月買ってるような人じゃないので。ミックスの基本みたいな本も一度も読んだことなくて、完全に初めから耳だけでミックスをやってたんで。ただ、楽器とか機材いじるのが本当に好きでしょうがなくって。それに本とか文章で読んでるよりも、ここをぶん殴ると、こんな破裂音がリヴァーブするんだとか、そういうのを肉体的にやるのが向いてるタイプなんで。だから、ほとんど音情報っていうか。トータスのあそこは、絶対ゲートかけて、スッパスパに切り刻んだようなスネアにしてるなとか。スネアにスプリング・リヴァーブかけて、ピシャンっていう金属音出すアイデアをもらったのは、フランク・ザッパなんですけど。まあ、実際にそういう風にして、その音を出しているのかはわからないんですけど、でも実際に試してみると、結構近い音が出たりとか。常に暇さえあれば、音で遊んだりしてたんで」

吉田「僕はもう、最近はそういう音のアイデアをメモするようにずっと音楽を聞いてて。音楽性とは別に、プロダクションだけで使えるっていうのがわかったんで。それをひたすらメモして、困った時に入れるように貯めてますね(笑)」

●じゃあ、岡田くんに質問です。音楽作る上で、ソングライティングの部分と、それをバンドでアンサンブルを組み上げていく部分、それを実際にレコーディングしていくプロダクションの部分、乱暴に分けて3つのプロセスがある。勿論、そんな風に綺麗に区別出来るものでもないんだけど。ただ、森をやり始めた頃、1stを作った頃、今回の2nd『グッド・ナイト』を作った今、で言うと、この3つの比重のバランスはどんな風に変わってきてますか?

岡田「CD-Rデモを作った時は、完全に僕の1人作業みたいな感じで。後から入ったドラムで歌詞書いてる増村(和彦)とか、鍵盤の谷口(雄)だけ結構年上で、その後の一枚目、二枚目とかになると、彼らが結構手助けしてくれるようになったんですけど。でも、デモの時は、録音、作曲、ミキシング、マネージメントとか、そこの全部を自分でやんなきゃいけない、みたいな感じだったんで(笑)。逆に、そのデモ作ったので音楽体力みたいなものは結構ついたような気がするんですけど。一枚目になると、基本的には僕が曲を書いて、歌ってる竹川(悟史)がメロディを乗せるっていうやり方が多かったんですけど。なんで、初めてバンドになったっていうか、軌道に乗るバンドが出来たんで、みんなで作りたいってところは大きかったんで。だから、アレンジにしても、ほとんど任せたし。制作時間も限られてたんで、ライヴみたいな、そのままの演奏をそのまま録音出来ればいいな、みたいな感覚でやってたんで。ただレーベルから出せるようになって、エンジニアの葛西さんとかも入れて、結構プロフェッショナルなスタジオで録音出来るようにもなって。で、スタジオの機材を使えるほどの力量は僕はないし、しかも葛西さんは、彼のレコーディング作業を観に行ける企画とか雑誌であったりして、それとか観に行ってたくらいの、こういう感じの(手を合わせて拝むしぐさ)エンジニアさんだったんで。だから、ある意味、人任せにはなったのかなとは思うんですけど(笑)。でも、録音に関してはプロの技術が必要だってすごくわかったし。ミキシングとか、ポスト・プロも、お遊び程度にはやったんですけど、そこまで凝ったことはせず。でも、一番バンドらしいアルバムちゃあアルバムでしたね、一枚目は。で、二枚目になると、凝り性だから(笑)、そのポスト・プロの部分で、一枚目みたいな感じじゃ、もう飽き足らない、みたいな感じになって。で、今振り返ると、一枚目って、曲もすごいよく出来てるなと思うんですけど、出したばっかの時は自分の中で腑に落ちない部分があって。それで今回の二枚目を作る時には、膨大な曲を書いて。一枚目の時は、僕と竹川で半々くらいなイメージで曲を書いてたんですけど、竹川が怖気づくくらい僕が曲を書きまくって(笑)。ひたすらみんなにメールして、みんなからメールの返事が来なくなるくらい」

●アハハッ。

岡田「僕、歌がすごい苦手なんで、一枚目だとメロディ書くのは、竹川に任せてたんですけど、僕の音痴の鼻歌入りのデモとか聴かせても、竹川は歌えるっちゃ歌えるんで、『じゃあ、自分でメロディ書いてもいいな』とか思って。あと、100パーセント自分が思うような曲を作るってなった時に、やっぱメロディまで自分でつけたいっていうのがあったんで、基本的に全部一人で曲書いて。で、これは……一番近い記憶なのに、あんまり記憶がないですね」

全員「ハハハッ!(笑)」

岡田「アレンジとかも、二枚目になると、今まで通り、みんなに投げながらだったんですけど、一ヶ所でも気に食わないフレーズとか、ちょっと野暮ったいなってところがあったら全部直したり、その場で話し合いながら、アレンジしていって。それでミックスは全部自分で、ポスト・プロもやったんで。結局、デモに一番近い形で作られたかもしれないですね。この二枚目のアルバムは」

●今回の『グッド・ナイト』って、どこまでがプロダクションで、どこからがポスト・プロダクションだ、とかっていう明確な区分けも出来ないくらい、ソングライティングの時点から、ポスト・プロダクション~ミキシングまでをイメージしながら作ったようなレコードだって気がしてたんですけど、そこまで見えてたわけじゃない?

岡田「二枚目ですか?」

●そうです。

岡田「僕がデモ作る時って、完全に全部の楽器と全部のアレンジ入って、ポスト・プロのイメージまで全部出来た状態で送るんで。そういう意味では、全部見えた状態でやってたんですけど。逆に、録音してる中で、みんなからアイデアがあったりだとか、僕がとっさにパッと思いついたのとかも、その場で無理やりやらせたりとかで録ったんで(笑)。だから、その都度、その時点でいい方向には持ってってやりましたね」

吉田「でも、彼、『録り始める前に、ポスト・プロダクションまで見えてないと駄目だ』って、しきりに言ってたんで、そういう意識で作ったはずだよね、今回」

岡田「っていうか、そう自分に言い聞かせていたところもある(笑)」

吉田「そうか。いろんな音楽を聴きながら、『ここまで全部思い浮かべなきゃ駄目なんだ!』って僕は何度も言われたことある(笑)」

岡田「ハハハッ!」

吉田「まあ、別に僕に怒ってたわけじゃないと思うんですけど(笑)。でも、何度も言ってましたね」

岡田「(笑)すごい偉そうだなあ」

●ただ、森の1stアルバムって、演奏なり、録音なりのラフな部分も含めて、バンド感があって、その良さがあるレコードでもあるわけじゃないですか。

岡田「うんうん」

森は生きている / 日々の泡沫

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●で、それを経て、今回、岡田くんがソングライティングの大半を手掛けて、最終的なミキシングまでやるっていう作り方をしたのは、バンドのメンバーからすると、どの程度ウェルカムで、どの程度何かしらフラストレーション感じていたのか、それについてはどうですか?

岡田「彼ら、どうなんだろうな?(笑)。でも、デモの時点で、ポスト・プロダクツ的なところでは、メンバーのみんなも、『あ、これ、持ってきたい』って部分もあったし。あと、上手く行く行かないにしても、ミキシングまで岡田がやってみたら面白いんじゃないか、っていうのはあったんで。森って、ぶつかったりとかはほとんどないんですよ。僕のやりたいようにやらせてくれるし、逆にアイデアがあったら全然もらえるし。僕が鈍感で気付いてないだけかもしれないですけど、フラストレーションとか特になかったかな」

●2バンドとも、プロデューサー体質でもあるソングライターがフロントマンで、ある意味、独裁者的とも勘違いされる可能性もあるくらいに明確なリーダーシップを持ったメンバーが存在するバンドなわけですよね。組織論としては。ただ、森の場合は、なんとなく据わりがすごくいいんだろうなって感じがするんですよね、メンバー全員の。

岡田「うん、そうですね」

●で、吉田くんの場合は、周知の間柄である西田(修大)くんも含めて、メンバーが固まるまでには二転三転あったわけだし、バンドとしての組織論について、すごい考えながらやってきたという印象がある。

岡田「フフフッ」

●互いにそれを知ってはいるでしょ?

岡田「よく聞いてます(笑)」

●それ自体は、バンドを運営していく上で、どんな風に影響があったのか、それについて教えてもらっていいですか? 本当に素朴に訊きたいなと思って。

吉田「どうだろう……僕のイメージでは、どちらのメンバーともそれぞれ演奏したことあるのでわかるんですけど、基本的に森は生きているはミュージシャンとしてのレヴェルが高いですね。なるべくしてなってるっていうか。各々、このバンドじゃなくても、誰もがミュージシャンになれた可能性がある人たちが集まってて。だから、誰かを呼んだ時に、すごいソロを弾けたりとかっていうことが出来て、適当に合わせたりっていうことも出来て、っていう人達なんで。やっぱり能力が高くて、それが自由に連帯した緩さも伴ってるっていう感じだと思います。で、今回とか、たぶん、締めてると思うんですけど、とは言え演奏とか、後で任せられるところは明確に認識してるんじゃないかっていう」

岡田「そうだね」

吉田「うちのバンドの場合は、もうちょっと烏合の衆的な(笑)。それがすごいいいところはあると思うんですけど、なんか初っ端のところでつまずきそうなイメージがあって(笑)。たぶん、一緒にやってなかったら、ロック・バンドなんてやってない人も多いし。だから今は、ロック・バンドってこうで、こういう風にやっていって、こういう価値観に乗せるといいんじゃないかっていうことを、すごい話ながら、やっていってるイメージですね。そこはかなり、森とは逆。ただ、森は生きているのメンバーとうちのメンバーが、どっちが強いリーダーだと感じているかっていうと、たぶん、岡田くんの方に感じてると思うんですよ。僕の方が独裁色が弱いっていうか。単に能力に拠るっていうか。あんまり僕とメンバーに差がないっていう」

岡田「いやいや」

吉田「岡田くんの方がプロデューサー視点の能力が高いんで、たぶん、追従するしかないと思ってる割合は、森は生きているの方が上かなって」

岡田「そんな(笑)。でも、ライヴ終わったあとに、吉田バンド、やたらミーティングとか長いな、とか」

吉田「そんなことない!(笑)」

岡田「僕ら、練習とか、ライヴ終わったら、飲むか、遊んでるか、みたいな感じなんで」

●(笑)でも、吉田くんたちの『Smart Citizen』ってレコードは、当時の組織論の危うさもエネルギーにもなってた気もする。

吉田「ああ、そうですね。そうかもしれないです」

●でも、よく作ったよね、実際。

岡田「ほんとですよね(笑)。最初は完全に自主録音で、後からレーベル決まったような感じで」

●最初、とにかく自分たちだけで作ろうっていう前提で録音してた時というのは、そのレコードの到達点に対して、どんなヴィジョンを持ちながらやっていたのか、そのための一番重要なポイントは何だったのか、について教えてください。

吉田「どうだったかな……。とりあえず、いいイヴェントに出たりとかっていうことが、音楽活動の成長に繋がる、ってなんとなく思ってて。単純に成功するっていうよりは、頑張れる量、無理が利く量が増えるとか、普段の追い込み方が上がるとか。責任感が上がるっていうんですかね(笑)」

●(笑)やっぱりマインドがマッチョだよね、吉田くん。

岡田「そうそう。体育会系ですよね(笑)」

吉田「〈クラブ・スヌーザー〉に出してもらったあたりから、定期的にいいこと、上のステップだなと思えることが続いてたんで、頑張ればいいステップが、みたいな、適当に前向きな考えで作ってた気がしますね。まあ、すぐ横で岡田くんとかがどんどんうまい具合に行ってて、『あ、こういう風にうまく行くんだ』って。でも、小さい話ですけど、『うまくいってる人に相手にされてるから、自分も大丈夫かも』っていうのは正直ありましたよ」

岡田「なんだ、それは(笑)」

●でも確かに、世間からのスポットってことで言えば、森は1stアルバム前後ですごく綺麗な形でスポットが当たった。ただ同時に、傍目から見ると、本人たちからするとちょっと面倒臭いことにもなってるんだろうなっていう風にも映った。で、吉田くんたちの場合は、なかなか発見されない時期が続いてたっていう。

吉田「そうですね」

●でも、レコーディング前後から、一気に階段を駆け登っていく感じはすごかったじゃない? 〈フジ・ロック〉にしろ。

岡田「クアトロも埋まったしね」

●やっぱり作品がモノを言った結果だと思うんだけど。

吉田「ありがとうございます。おかげで今は、音楽のことだけ考えられるようになりましたね、やっぱ」

吉田ヨウヘイgroup / ブールヴァード(8/28/2014 @渋谷CLUB QUATTRO)

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●逆に、岡田くんたちの場合は、1stレコードを作った前後、やっぱりかなり周囲からのノイズが多かった気がするんですけど。

岡田「そうですね」

●その時期って、なかなか音楽に集中できない部分もあった? それとも、むしろ、だからこそ音楽に集中しようとした?

岡田「う~ん、僕はそういうのはかなり気にするし、そこは結構難しかったけど……。『なんでそういうところしか聴いてもらえないのかな?』っていう違和感はすごいあって。僕らの良さを改めて自分たちで見返すと、やっぱりメロディに日本語が乗るとか――確かにそういうのが上手いバンドは他にもいるし、そういうバンドと比較されるのはわかるんだけど。でも、それだけじゃなくて、例えば、演奏だとか、ポスト・プロの聴かせ方とかは、今までの音楽と違うつもりでいたのに、そこが全然評価されない、みたいな。別に評価されたいわけじゃないですけど(笑)。だけど、『そういうところに全然誰も喰いつかないな』とか思ってて。そういうのもあって、一旦、自分の中での実験っていうか、極端にやってみたいって思ったところはありますね。だから、一枚目と二枚目って完全に音の幅は違うっちゃ違うし、でもやってることは一緒だし、メンバーも一緒だし。だから、たぶんそういうのがなかったら、これ(『グッド・ナイト』)にはなり得なかったし。だから、集中出来なかったけど、集中して作った、みたいなやつですね、これは」

●じゃあ、今回の『グッド・ナイト』っていうレコードは、フラットな状態で作ったというよりは、周囲からのノイズに何かしらのバイアスを与えられた部分もあったってこと?

岡田「そこがすごい難しくて。たぶん、人格として両方あるんですよ。フラットにナチュラルに作りたいし。ある意味、自分の音楽を引いて見る瞬間もあるし。だけど、やっぱり周りの言われ方も嫌だし、聴かれ方も嫌だから、『とんでもないことしてやろう』みたいな視点もあるし。だから、どっちも100ある、みたいな感じですね」

●そこは、吉田くんから客観的に見てどうですか?

吉田「そこが一番面白いところで、ノイズとか、即興をやりたい人であると同時に、ヒット・メイカーなんですよね、考え方が。ピュアに自分のやりたいことで言ったら、売れない音楽を作ってもいい人なんですよ。タイプ的に。ポップスもあるけど、孤高のものとか、屹立したもの、誰にも聴かれないものを作ってもいい志向の人なんですけど、でも、すごい風を読む、彼は。セルフ・プロモーションに長けてるところもすごいあるし。そこのバランスがどっちとも100あって、そこが一番素晴らしいところっていうか。このところ、音楽やってる天才的な人に知り合えるようになってきたんですけど、そういう人達にはないミーハーさがあるな、と思っていて。そこが一番魅力的で参考になるところっていう感じですね」

●そういう部分で刺激も受ける?

吉田「受けますね。本当にすごいんだからもっと広めればいいのに、と思ったりする人もいる中で、彼はもうそこは絶対やるっていう感じがあるんで。それが音楽の力にも直接的に繋がってると思うし。そこはすごく特徴的だと思います」

●吉田くん自身はそういうバランスの部分ではどう?

吉田「難しいですね。僕一人だったら、即興の活動を続けようとは思ってないし。もっとバンドに集中しちゃってると思いますね。彼が定期的に声をかけてきてくれて、ポップスじゃない部分、元々持ってはいたけど、もうちょっと置いといていいかな、と思っていた部分を無理やり引き出してもらってる感じはあるっていうか。そのおかげで、そういうのを保ててる部分はありますね」




特別対談:岡田拓郎×吉田ヨウヘイ 後編
「吉田ヨウヘイgroupの音楽は意味不明」
「森は生きているの2ndアルバムは、誰にも
絶対わかんないし、本人もわかってない」
はこちら。



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