2018年アメリカン・ポップカルチャーで目についた「self-care/ be-good」の価値観に即して5選。平たく言うと「自分を大切にすること/良くなろうとすること」ですが、こうしたパーソナルな光属性マインドを見事に示したのがアリアナ・グランデ“サンキュー、ネクスト”ではないでしょうか。元恋人たちに感謝して自己肯定する哲学、まさに待望のエンパワーメント・ソングでした。こうした自己受容・寛容・前進のムードはロビン、そしてマック・ミラーにも流れていたように感じます。TV界でも「楽観・幸福主義」とでも言うべきナイスコア・ジャンルが豊作に。『クィア・アイ』『グッド・プレイス』『テラスハウス』など、共感しながら「良くなること」を志す人間讃歌がより受け容れられました。「政治社会イシューではなく人生のライトサイドを描いた」みたいに喝采されたケイシー・マスグレイヴスもこのバイブスに近い気が。
「self-care」も「be-good」もある種当然な思考ですが、The1975が歌うところの「誠実さは恐怖」時代だからこそ「当たり前なことの意識的な提唱」が重要視されるのかもしれません。例えば、レディー・ガガは一聴ベタなバラード“シャロウ”のヒットについて「異性間で不信がつのる今だからこそ信頼を結んだ男女がケアしあう曲が求められた」と語っていたりします。政局変動、メンタルヘルス、SNSヴァイラル主義への懐疑など、いろいろと忙しすぎ/暇にならなすぎて「意識的にならないと休めない/ケアできない」世相を感じた一年でした。J・コール先生が導くように、現代人に必要なのは瞑想およびマンドフルネス……?(そして2019年『KONMARI』へ……)
ドラマ部門はテーマを決めず好き勝手にエピソード別で選びました。ドキュメンタリーでは『ワイルド・ワイルド・カントリー』が良かったです。今年も宜しくお願いします。
〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
2018年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 宇野維正
「サイン・マガジンのライター陣が選ぶ
2018年の年間ベスト・アルバム/
ソング/ムービー/TVドラマ5選」
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「2018年 年間ベスト・アルバム 50」
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