SIGN OF THE DAY

特別対談:岡田拓郎×吉田ヨウヘイ 後編
「吉田ヨウヘイgroupの音楽は意味不明」
「森は生きているの2ndアルバムは、誰にも
絶対わかんないし、本人もわかってない」
by SOICHIRO TANAKA November 19, 2014
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特別対談:岡田拓郎×吉田ヨウヘイ 後編<br />
「吉田ヨウヘイgroupの音楽は意味不明」<br />
「森は生きているの2ndアルバムは、誰にも<br />
絶対わかんないし、本人もわかってない」

特別対談:岡田拓郎(森は生きている)×
吉田ヨウヘイ(吉田ヨウヘイgroup)前編
「この二人って、ジム・オルークさんと
大友良英さんが共通項なんですよ」



●二人にそれぞれ同じ質問です。それぞれのなかにあるポップ志向をどう定義づけますか? ポップであることって、人によって定義がバラバラじゃない? 単純にポピュラーになることって考え方もあるし、千差万別だと思う。でも、もし自分の中で何かしらのポップ志向があるとしたら、そのポップの定義はどういうイメージなのか、教えてください。

岡田「ポップ志向……難しいな、考えたことないな。ある?」

吉田「うん……じゃあ、俺が先に話しとかないと(笑)」

岡田「参考にするわ(笑)」

●もしくは、ポップ音楽、ポピュラー・ミュージック、ポップスの中で、自分自身がこういう音楽が好きなんだ、こういう音楽が作りたいんだ、っていう象徴的な作品とか、作家とか。

岡田「だと、やっぱり僕、ビートルズとか、ビーチ・ボーイズとかが大きいな。あれって、誰が聴いてもポップスだし。僕の偏った見方だと、ポップスって常に実験的だったし、歴史的に見ると。だから、その後にジム・オルークとか、ハイ・ラマズとかが出た時も、ヴァン・ダイク(・パークス)とか、ビーチ・ボーイズ的な聴かれ方が多かったかもしれないけど、それ以上に新しいこと、実験的なことを詰め込んでて。なんだろう、今まであった大衆的な音楽に対して、何か実験的なものを――ノイズとか、アヴァンギャルドって意味の実験じゃなくて――もっと広い意味での実験的なことを繰り返していく。そういう歴史上にあるポップスが僕は好きですね」

High Llamas / Gideon Gaye (1994)

Jim O'Rourke / Eureka (1999)


●つまり、岡田くんの中でのポップの定義っていうのは、常に挑戦的で新しいことをやることだ、っていうことだよね?

岡田「ある意味では」

●吉田くんは?

吉田「ポップスって、ジャンル名はついてるけど、音楽的な定義がないと思ってて。例えば、ジャズだったら、4ビートで、コード進行がこうとか、そういう音楽的なフォーマットがない。だから、いい音楽を作るっていうか、広く聴かれる音楽を作るってことでしか、ポップスを成り立たせるものはないと感じてて。だから、『普遍的なものを目指しちゃいけない』と思ってて。『刹那的なものじゃなきゃいけない』っていうか。そういうミーハーなものであってほしいっていうか。だから、過去の30年前のものを聴いて、普遍的なものを作ろうっていうモチベーションとは全く別の、『今しかできないものを作ろう』っていうのがポップスだと思ってるっていうか。だからこそ、広く聴かれるためには、同時代の音楽をチェックしたりとか、そういうことをやらなきゃいけないと思ってて」

岡田「でも確かに、ポップスって定義ないですね。だから、ある意味、本当にいい曲作るってことがポップスって気がするな。実験していくっていうのは、どの音楽でもあることだし。ジャズだって、ロックだって、テクノもそうだろうし、常にそういうことをやっていて新しい音楽が出来ていくんでしょうけど、ポップスって確かにそういう要素がないんだね。何でもありのフォーマット。だからこそ、大友さんとか、ジムとかも入ってこれるし、かたや、いろんなポップスありますからね」

●そう、誰にも定義出来ないから、作り手のそれぞれが、聴き手のそれぞれが定義するしかないものでもある。流動的なものでもあるだろうし。ただ、その時々でいいんだけど、何かを作る瞬間に、自分の中でのポップのイメージが明確であればあるほど、作品がエッジーで、シャープになるっていう気はします。

岡田「なるほど」

●ただ、吉田くんが言ってた、普遍性? いわゆるエヴァーグリーンっていう言い方があるんじゃないですか。それは受け入れられる感覚? 普遍的な音楽なんて、本当にあるのか? っていう。

吉田「たぶん、ビートルズとかも、当時は最先端で、その時に時代の空気を感じ取って作ったもの、その時にパワーがあったものが、後世でも聴けるっていう。エヴァーグリーンな音楽っていうのは、そういうことだと思うんですよね。だから、普遍的っていうのは付随してついてきたもので、特に普遍を狙って作ったものではないと思うんですよ。だから、僕らみたいな、基本オールド・ロック好きな人間だと、やっぱり昔のが一番いいと言って、それを真似ようとするのが姿勢としても一番普通だし、楽なんですけど、それをやるとヤバいっていうのが、実感としてあって(笑)」

岡田「そうだね」

吉田「だから、二人とも新しいもの取り入れないといけないって思ってるし、教え合うようにしてるし。だから、エヴァーグリーンなものっていうのは、本当はそれを狙ってやったんじゃない、って感じです」

岡田「ただ、後から作るって本当に大変だし。ビートルズなんて更地で畑耕すような作業だったわけだけど、『でも、僕ら、この畑から何すればいいんだろう?』ってところがありますね。今後、新しい音楽が生み出されるのかもわからないし――勿論、絶対作られていくとは思うんですけど。その方法……まあ、探してるのか、みんな? でも、難しい、後から作るっていうのは」

●そこを考え過ぎちゃう時ってありますか?

岡田「常に、電車の中にいても、ボーッと音楽のこと考えちゃってますけど。でも、結局、新しいとかっていうよりも、今、自分が作りたいっていうのが、僕の場合は先に来ますね」

●自分のフィルターを通して、コンテンポラリーなものを作るってことしかないのかもしれないね。自分の話になるんですけど、ずっと10年くらい、2011年くらいまでかな、日本の音楽の大半に興味が持てない状態が続いてて。さっきの岡田くんの話みたく、畑に全部植わっている状態なわけだよね。で、いわゆるポストモダン的な、何でも並列に置かれてるっていう。で、特に日本の音楽だけがここ10年ずっと同じ、もしくは、退化し続けてるって風に感じてて、かなり悶々としてたんですよ。でも、そういうところに飛び込んできた、森の1stの存在はホントにデカかった。乱暴に言えば、全部が引用とも言えるわけじゃないですか。

岡田「そうですね」

●でも、何をどんな風に引用するのかっていう。岡田くんなり、森は生きているっていうバンドの独自で洗練されたフィルターがあれば、2013年の音楽だな、って感じるものが生まれる、しかも、これ、20代前半の若い奴が作ってるっていう。

岡田「って言ってもらえると(笑)」

●ただ、結局、引用でしかないかもしれないけど、オリジナルで、なおかつ、現代的なものを作らなきゃならないっていう問題意識みたいなものって、どの程度、作家、音楽家の間で、シェアされている感覚だと思いますか? 

岡田「どうなんだろう? 今、いろんなものが出揃っているはずのところから僕らが何かを生み出そうって時に……でも、それこそ10年代に、USインディからアニコレとか、ブルックリンのシーンが出てきたところで――アニコレとかはもう少し早かったけど――やっぱり同じようなことが起こったんじゃないかなって。10年も前のことですけど。アニコレってどう考えても新しい音楽のようで、引用が本当に見えづらいけど、かなりそういうところもあるような気がして。USインディの人たちも、完全にまっさらに新しい音楽は難しいってわかった上で、音の作り方だとか……それこそ家でプロ・トゥールスとか使えるようになっただけでも音の広がり方って全然違うと思うんですけど。お金もかからなくなったし。その中で、お金かかんないでもアイデアだけで幾らでも出来る、ってところで、やっぱり彼らは新しいことをまた作ったんだと思うし。まあ、日本、アメリカのメインストリームってなると全然わかんないですけど(笑)。ただ、僕が今やりたい、ポップスのフィールドでやりたいと思うのは、そういうところです」

吉田「岡田くんはおそらく持ってるよね。新しいのを作る意識って」

岡田「意識は、してる」

吉田「ceroとかも作品を聴くと新しいものを作ることを意識してるんだろうなって思いますね。でも、少ないんじゃないですかね、新しいもの作る/作らないの話で言うと。2ndのミックスの参考にしようと思って、小林さんのエレクトロの本とか読んでて思ったことなんですけど、今って並走してるジャンルがたくさんあるじゃないですか。10年前と較べても。だから、昔だとポピュラリティのあるものって、本当にみんなの期待を一身に受けて、更新していかなきゃいけないものだったと思うんですけど、今は明らかにロック自体の幹が細くなってる。そのせいで、自分たちの音楽のパワーだけで、自分たちが作ったものが新しいものなんだって寄せられるんじゃないか、だから楽になってるんじゃないか、っていう感覚もちょっとあるんですよね、ポップスっていうフィールドで言ったら。例えば、岡田くんと俺たちって、ポスト・プロダクションに対する興味は似てるけど、コードとかリズムで言ったら、音楽的な共通点はすごい少ないはずなんですね。だから、本当だったら、一緒にされてないと思うんですけど」

岡田「そうそう(笑)」

吉田「そういう風に考えると、ロックがここまで細くなったのも初めてで。だから、逆に言うと、時代を読むとか、これが求められてるとか、考える必要は全然ない。純粋に自分の興味で、今表現したら力強いだろうって思ったものを力強く出せれば引っ張れるんじゃないか、って感じもあるんですよね。岡田くんたちの1stで言ったら、はっぴいえんどって言われちゃうような素材を出して強くやるのは、ちょっと前の時代だったら難しくて、懐古的になっちゃったところを、今の音楽だって言われたのは、そういう時代背景と、それをすごく強く出せたっていうところがあるんじゃないかな、って勝手に思ったんですけど」

岡田「何の迷いもなくね(笑)。確かに」

●じゃあ、ちょっと別のアングルです。自分たちの作品の音楽的な参照ポイント、あるいは、引用を明確にしたくないってタイプの作家もいれば、あえて意識的な引用をする作家もいる。その辺りにおける、二人それぞれの考えを教えてください。

岡田「一枚目と二枚目だと、結構作り方が違ってて。それこそ一枚目の方が引用が多いし、わかりやすいし。ここがマーヴィン・ゲイのイントロのあそこだよ、みたいなところもあったりして。そういうところは自分からドンドン言ってくようなことでもないですけど、でも言われても別に、って感じだったんですけど。でも二枚目の特殊なところって、記憶の引用っていうのはあるんですけど、音源聴きながら、その場の引用って一切なくて。だから、僕の中だと『グッド・ナイト』ってアルバムは引用に入らないっていうか。自分のフィルターに通しちゃって、自分の記憶だけで組み立てたから。ただ、引用の話は難しいっちゃあ、難しいですね」

●それは意識的にやったの? 直接的な引用を自分に禁じたってこと? それとも、作ってるうちにそうなったの?

岡田「曲をすごい数書いたんですけど、その中から気に入ったものを切って行ったら、結局、記憶だけで作ったものが残っていったところがありますね。中にはまるっきりアニマル・コレクティヴみたいなのもあったんですけど、そういうのはやっぱりボツになったし。自分たちの音楽っていうか、僕の音楽じゃないや、っていうのは自分でもわかったし。そこが曖昧なところばっかり選んだ感じですね、今回に関しては。っていうか、むしろそれに気付いたのが先週くらいで(笑)。後から気付くみたいな感じで、その場では全然意識してなかったんですけど」

吉田「ほんとにわかんないんだよね、今回のは」

岡田「うん、ほんとにわかんない」

●吉田くんはどうですか? フレーズってことじゃなくて、形式という部分における引用、参照も含めたところで。

吉田「引用したい、って思う時は、これがすごいかっこいいから、自分の曲もこのかっこよさを出したいって思うのが動機なんですよ。なんで、音ネタを知ってほしいはないんで、わからない方が嬉しいかなと思います。取ったものが。この曲のこのリズムと、この曲の上のフレーズが混ざったら、誰も作ってないものになるっていう魅力を放ちたいだけなんで。ただ、訊かれたら隠すほどのことではないと思ってるんで、しゃべってるんですけど(笑)」

●それ、実際のところ、具体的に話してみたりすると、誰もが気付かない? 意外に思う、っていうリアクションが多い?

吉田「例えば、彼(〈P-VINE〉のA&Rである中里氏)には聴いてもらって、実はこれが引用なんだって言ってるんですけど、『いや、元ネタを聴かされても、意味がわからないです』って言われたことがあるんで(笑)」

●ハハハッ!

吉田「なんで、意外と自分が思いきり引用したと思ってても、『上のコードが違ったら違うものなんだな』っていう。2nd作ってる時は、『こんなに引用していいのかな?』って思ってたところもあったんですけど、そんな言われないんだったら言ってもいいか、って後から思ったって感じですね」

岡田「吉田さんの引用って、本当にどこを取ってるのか全然わかんなくて(笑)。僕なんて楽典とかわかんないけど、メロディとか、コード感覚とか学問的にわかるうちのメンバーとかが聴いても、『吉田さんの引用はよくわからない』って言うんですよね。だから、本当にそのかっこよさのスピリチュアルな部分だけ取り除いているのかって思うと、かっこいいなって思いますね」

●じゃあ、それぞれのレコードに対して。吉田くん、森の新しいレコードは聴いた?

吉田「聴きました、昨日の夜もらって」

●じゃあ、お互いの作品をざっくり寸評してください、互いに。

岡田「どうしよう、僕がしゃべるの下手だから、僕が先にしゃべった方が締まるかな(笑)。音楽を言語化するのが、まず苦手なんですよね、僕。あと、結構関わっちゃったから、何とも言えないところがあるんですけど。難しいな。どういうこと言えばいいのかな? 言うこともたくさんあるし、ないと言えばないんだよな」

吉田「ハハハッ」

●じゃあ、デフォルトの質問があるんですけど、アルバムのインタヴューをする時に、今回のレコードの両側にレコードを二枚置いてください、このレコードとこのレコードの間に挟んでおくとしっくりくる、っていうのを選んでください、っていう。

岡田「吉田さんの音楽って、僕からすると出所が意味不明な音楽で。それこそ初めてライヴ誘われてサウンドクラウド聴いた時とかも、とにかく理解不能だったんですよ。こんなに理解不能なこともないっていう。だから、何かを置くってなると……何だろうな? でも、全然名前も知らないような60年代のUKジャズと、USインディの何か――まあ、ダーティ・プロジェクターズはよく言われるけど、並ぶっちゃ並ぶかなあ。8ビートの使い方とかが極めてジャズ的っていうか。ラリー・コリエルとかのバックで、(ジャック・)ディジョネットとかがロックっぽい曲をやる時に叩くビート感とか、そういう意味不明さとかを吉田さんの曲には感じるところが多くって。怒られるかもしれないけど(笑)」

吉田「いやいや(笑)」

岡田「だから、本当に自分の範囲外の音楽を作るから、僕の言葉で語るのは難しいなあ」

●ただ、岡田くんの中できちんと位置付けられないっていうのは、逆に言うと、かなり刺激的ではあるっていうこと?

岡田「かなりそうですね。ミックス手伝った時も、『ここはこうでしょ』ってことを偉そうに言ってたけど、よくわかんない音楽にそこをつけるっていうのも難しい作業で(笑)。ただ、それがすごい面白かったし。でもやっぱり、吉田さんって、音楽を完璧な形に作り上げるタイプで。僕みたいな弾き語りで出来るような曲を書く人たちからすると、アレンジの緻密さとか、曲の組み方だったりとか、かなり特殊な曲の書き方っていうか」

吉田「いや、そんなに意外な音楽を作ってるって印象を持たれてること自体、思ってもみなかったことなんで、びっくりしました。今の8ビートの話とかも、『その、8ビートってどこのことだろう』と思ってるくらいで、よくわかんないんですよ(笑)」

岡田「なんか、あの独特の歪さっていうか。俺の場合、CがあってFがあって、みたいな曲って、すごく耳馴染みいいんだけど。っていうか、ロックとかポップスの中で、たぶん吉田さんのコード感とか、そういうのが何かおかしい……だから、普通のロックのビートに、何かおかしなものが乗ってるみたいな感覚はすごい感じる」

吉田「あ、でも、それはそうなのかもしれないな。本当に、何かおかしなものを入れないと耳を引かないっていうか。全部おかしくすると、耳が行かなくなるんですけど、一個おかしいものとか突っ込んでフックにしないと集中して聴けない、みたいな感覚があるんで。そういうことを言ってくれてるのかもしれないです」

●今、岡田くんが言ったような、CがあってFみたいなトライアドで構成されてる曲とかってあんまりないわけでしょ? ルートの動きだけが決まってて、そこに上モノのフレージングの積み重ねで和声を組み立てていくって感覚じゃないの?

吉田「僕の曲は、2ndは特に、3コードくらいの曲が多いですね。ベースとかがすごいシンプルで、ヴォーカル・メロディもシンプルで、ただ管のアレンジが普通の積み方とは違う積み方になってるんで、複雑に聴こえるかもしれない、くらいな感じだと思います」

●つまり、ルートの動きはシンプルにして、逆に上モノが複雑な動きというか、自由にやれる、ってことだよね?

吉田「そうですね。自分の持ち味を考えると、転調とか、複雑なコード進行とかっていうことじゃなくて、複雑に聴かせたり、凝って聴かせたりっていう方が今は上手く出来るかな、っていう意識はあったと思います」

岡田「管とギターのアレンジが変なんだよね」

吉田「そうだね、きっと」

●ただ、森は生きているのレコードだって、どう見たって緻密じゃないですか。特に今回の『グッド・ナイト』は凄まじい。アンサンブル自体に緩さを許容するところがあるだけで、やっぱりとてつもなく緻密だと思うんですよ。

岡田「あ、そうなんですね。自分だとわからない(笑)」

吉田「いや、僕より緻密だと思いますね、彼らの方が。だから、僕らの方が緻密だって言われると、恐縮するだけです(笑)」

●どちらも緻密は緻密なんだけど、ただ、意識的に構築しようとしているポイントがそれぞれまったく別なんだよね。

岡田「そう。っていうか、それこそ、吉田さんが僕の家に来て、これ(『グッド・ナイト』)の途中経過のミックス聴きに来た時に、『そう言えば、俺たち吉田ヨウヘイgroupと、森は生きているって並べられるけど、一ヶ所も似てないな』って言って帰ったんですよ(笑)」

吉田「(笑)」

岡田「たぶん、お互い、曲を作ったり、組み立ててく上での根本的な思考回路が全然違うところにあって。一点交わるところが、今、發展で一緒にやってるところで。だから、やっぱりロックって細くなったんすね、幹が」

吉田「やめて、からかわないで(笑)」

●(笑)ただひとつ思うのは、いわゆる東京インディ云々っていう見取り図で言えば、90年代のシカゴ音響派とか、ポスト・ロック的なサウンドと地続きなバンドってほとんどいないと思うんですよ。それ以降のブルックリン・シーンだったり、ゼロ年代のUSインディとは繋がっていても、その辺りとは完全に断絶してる。でも、吉田ヨウヘイgroupと森は生きているの場合は、そこは繋がってると思うんですね。

岡田「そうですね、言われると」

吉田「それはたぶんそうだね。その話はよくするね」

岡田「そうだね」

●以前、吉田くんや西田くんが大学時代、54-71が在籍してたサークルの後輩だったって聞いた時に、すごく腑に落ちたことがあって。DCハードコア以降っていうか、マス・ロックからの影響もあるし、同時に、そこから逃れようって意識があったからこそ、ダーティ・プロジェクターズなり、ゼロ年代USインディを経て、今みたいなサウンドに辿り着いたんだな、って。

吉田「そうですね。日本だと、エモとポスト・ロックっていう言葉が並列されたせいで、音響派の影響がインストの演歌っぽいコード進行も入った激情ハードコアとも混じっていく流れがあって。そういうバンドがすごい花開いたじゃないですか。それが自分が作りたい音楽とは離れていたこともあって、当時はやりにくい感じがあったんですよね。勿論、54-71とかいくつかのバンドはかなり好きだったんですけど。ただ、トータスが好きで、ポスト・ロックが好きって言うと、『じゃあ、これも好きだよね?』って言われるものがほとんど好きじゃない、みたいな時期があって。岡田くんとすごく仲良くなった理由に、その辺りがゴソッとなくて、トータスとか、ジム・オルークの話になったっていうところはかなりありましたね」

岡田「僕が高校で曲とか作り始めたくらいに、ちょっと上の世代でそういうのがすごく流行ってて。なので、バンドやる時には、そこへの反発はありましたね。だから、そんな風に日本だと曲解されてしまったものを、今、再定義してるっていう部分は共有していると思う」

吉田「それだと嬉しいね」

岡田「ねえ。トータスかっこいいもんな」

Tortoise / TNT (1998)

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吉田「ただ、2、3年前にバンドをもう一回、真剣にやり出した時に思ったのは、ceroとか、シャムキャッツとか、普通にいいと思えるバンドがいるのは嬉しかったですね、単純に。大学生とかで本気でやってる時は、普通にやりたいことに近いと思うバンドが売れてるわけじゃなかったんで。だから単純に、ありがたいなと思った記憶がありますね」

●岡田くんは? あまり使いたくはないんだけど、東京インディっていう括り。これを俯瞰して見た時に、自分自身がチアフルな気分になれるバンドはそれなりにいるんですか?

岡田「出たばかりの時の括られ方っていうのは嫌だったけど、みんなナイス・ガイばっかりで、面白いから、あんまり……」

●音楽性の話(笑)。

岡田「音楽性ですか。音楽性はあんま聴いてないは聴いてないですね、そんなに。でも、気になるところで……。まあ、本当に影響受けてるなと思うのは、吉田さんも近かったし、あと、ロット・バルト・バロン。彼らにもすごい影響受けたし。でも、逆に言うと、それくらいかな。あと一部界隈で、東京インディで括られるかわかんないですけど、ダニエル・クオンとか、ツチヤニボンドとか、PADOKとか、あそこの西荻、中央線沿線は結構面白い人たちはいるなと思っていて。これ、Rくん、ダニエル・クウォン――あいつがいなかったら作ってないようなアルバムだと思うし。だから、いわゆる東京インディって言われるシーンからは影響受けてないけど、リアルタイムで一緒に音楽やってる人たちで、そこらへんの人たちはかなり濃密に影響受けてますね、今も。誰か、ここを定義してくれないかな。何て言うんだろう、ここのシーンって」

●やろうと思えば定義出来ちゃうと思うよ。でも、まだ今はしない方がいいような。

岡田「ああ、そうか。でも、なかなか、一バンドで『ロッキング・オン』みたいな規模になるのは難しいと、ひしひしと感じるし。括られるのって、みんな嫌だと思うけど、どこかでそういう風に括って、表に出れる瞬間がないと変わりようがこの先ないのかな、と思ったりしますし。いやあ、難しいっすね」

●そう、難しい。ひとつに括ることのプラスとマイナスが必ず存在するから。僕らって、ある意味、そういうバイアスかける仕事でしょ。でも、そうした方が個々のバンドにとって得になることと、むしろノイズになったりすることの両方が必ずある。だから、何をやっても、基本的に嫌がられる仕事なんですよ(笑)。特に今、リスナーの中じゃ、俺たちみたいな立場の人間を必要としない、みたいな気分の人が増えてるからね。なかなか楽しい仕事ですよ。

岡田「アハハハッ!」

ROTH BART BARON / 氷河期#1(The Ice Age)

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Rくん / HAPPY4EVER

ツチヤニボンド/おとなりさん

PADOK / Trail Blazer


●じゃあ、最後に、吉田くんから、森の2ndに対する寸評を。

吉田「昨日の夜聴いて、『あ、こんななんだ』と思ったんで、もっと聴かないと、おいそれと言っちゃいけない感じがするんですけど」

●これ、ホントしっかり聴かないと、何も言えないよね?

吉田「そう、何も言っちゃいけない感じがモロに(笑)。曲がいいとか悪いとか言うのは難しいんですよ。ただ、『すぐにこのギターの音をパクりたいな』とかは思って。自分が音楽をやる動機にすごい繋がったんで、これから先も何度も聴くアルバムだろうな、って。こう言うと、ひどいんですけど、1stは自分の中であんまりそうじゃなかったんで。でも、これは本当に聴き続けるだろうな、って」

●なるほど。

吉田「あとはやっぱり音質ですね。今、日本のインディもハイファイになってて。お金かけて、日本のメジャー・レーベルから出せるハイファイな音質に迫ってるバンドが増えてて、すごいなって思うんですけど。でも、これは結構違うハイファイで。本当にセンスがいいUSインディ・バンドが、金を持ってる時に出せるような、お金とセンスが両方いるようなタイプのハイファイ。日本のバンドが今までやってなかったような音質。たぶん、向こうと較べても遜色ないっていうか。独自性で並ぶことが出来てる。音の面では日本っぽくないと思うんですね。僕の勉強不足かもしれないですけど、日本のバンドではこういうことが出来たのは初めて聴いたんで、すごいびっくりしましたね。『音質だけはハッキリ言えるな』と思って言ったんだけど」

岡田「(笑)」

●今日も、ここまで来る途中に聴いとこうと思って、MP3に変換されたのを携帯にぶち込んで、iPhoneの白いイヤホンで聴いてたんだけど。あれ、ひどい音にしか鳴らないじゃない。でも、あれで聴いてみ? 聴いてみ、って俺が言うことじゃないんだけど(笑)

岡田「アハハハハッ」

●普通は、ハットとか、高音が聴けたものじゃなかったりするんだけど、まあ、逆にディティールを確認しやすいかな、と思って聴いてたんだけど、全体的にすごいエコーがかかってるのに、すごいクリアだし。それだけで、びっくり。

岡田「ああ、嬉しいな。僕、あらゆるイヤホンを試しながらミックスしたんですよ」

吉田「突然、音が回って、乗ってきたりする時に、景色が切り替わったりするくらいのハイファイさで入ってくる感じとかって、日本ので聴いたことないじゃないですか? ほんと、アニマル・コレクティヴとか、グリズリー・ベアでしか聴いたことないものだったから。何個か気になった音があったんで、具体的に彼に質問したら、自分で録ったっていうんで、『ああ、やっぱり、これを絶対やらなきゃいけないと思って、どれも狙って、録ったんだな』っていうのがわかって、すごいなって思いましたね」

岡田「そっか(笑)。でも、そういう風にハイファイって言われるのが結構びっくりしてて。吉田さんの2ndこそ、自主制作で自分で全部――まあ、(録音エンジニアの)馬場ちゃんいたけど――録ったなかで、あれ、相当な音だと思って。特にドラムの音とか、聴いた瞬間に……。あれ、褒め合いみたいになっちゃうね(笑)」

●ハハハッ!

吉田「でも、自分だとわかんないんだよね」

岡田「そうなんだよ。僕はとにかく、一枚目が結構綺麗だったから、とにかくロウファイな方向で行こうって、始めは大体テープで録ってたら、コンプで潰しすぎてあまりにロウファイ過ぎちゃって(笑)。本当にカセットテープみたいな音になっちゃったところから、『こっからどうしようか?』って自分ん家でいろいろ編集していったんですけど。ひとつの音のモデルに、ずっと吉田さんのアルバム聴いてて」

吉田「あ、そうなんだ(笑)。全然知らなかった」

岡田「そう。宅録で、近い人でここまで音質上げている人いないから。さっき言ったダニエル・クウォンとか、ツニヤニボンドになるとあまりに違いすぎて、参考にならないんですけど。吉田さんは楽器編成とかも似てるっちゃ似てるところで、あんまりお金をかけないでそこまで持っていったっていうので、ひとつの指針になって。で、ドラムの音がやっぱり、あの音がどうしても出ないな、って」

吉田「ドラムの音が一番気に入ってるね、確かに」

岡田「ドラムと、あと、フルート? フルートだけじゃなく、管楽器全般がとにかくハイファイで。だから、僕、結局、マスタリングした時点でかなりロウファイになっちゃったな、とは思ったんですけど。だから、そういう風に言われるのは、びっくりしましたね」

吉田「めちゃくちゃ音良いですよね?」

●うん、そう思う。ただ、ハイファイって言い方が正しいかどうかっていうのは、俺はわかんない。でも、個々の音色も際立っていて、ちゃんと定位もわかり、全体としてバランスもいいっていう意味では、すごい理想的な音だと思う。

岡田「そうか。そこはほんと、自分でやり過ぎてわからないっていうか、そこらへん客観的に見れないから(笑)」

●ただ、世の中のポップスの出音に聴き慣れた耳からすると、非常に美しいが印象が薄い、と思われることはあるかもしれない。正直、そこはわからない。

岡田「そうですね。みんな、ヘッドホンで聴いてくれればいいんだけど」

●じゃあ、一応、森の2ndの両側に、既存のアルバムを二枚挟んでおきますか? ここはもうお遊びなんで。

吉田「僕はきちんと聴く時間がなかったからなあ。松林さんっていう珍屋というレコード屋さんの店員さんがいるんですけど、その人が前に『(森は生きているが)すごい!』って書いてたから、昨日音源聴いたあと『これ、すごい聴き込んだら、印象が変わるアルバムですか? 全然近しい感じはしないんですけど、聴き込むと近しい感じになりますか?』って訊いたら、『いや、そんな近くはならない』って言って(笑)」

岡田「ハハハッ!」

吉田「ああ、そうなんだって。で、彼が『まあ、ジョン・コルトレーンの『至上の愛』みたいな』って言ってて」

●へー、これまた。

吉田「でも、確かに『至上の愛』の隣に並べると、すごいわかるな、って思って。誰にも絶対わかんないし、本人もわかってないな、みたいな近づけない感じが」

岡田「いや、あれ、めっちゃポップでしょ!」

吉田「いや、『至上の愛』もほんとにキャッチーなメロディーだったりはするんだけど、どこまでいっても分かり切らないみたいな感じがね」

岡田「ああー。それ、しっくり来るな、結構(笑)」

吉田「『至上の愛』と、それと『ホワイト・アルバム』とかかな」

岡田「ああ、そうだね。結構そんなとこだと思う(笑)」

John Coltrane / A Love Supreme (1965)

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