SIGN OF THE DAY

ポップ音楽の“今”が詰まった夏の見本市、
〈サマーソニック2015〉で何を観る?
編集部が選ぶ、マスト10アクトはこれだ!
by YOSHIHARU KOBAYASHI July 31, 2015
ポップ音楽の“今”が詰まった夏の見本市、<br />
〈サマーソニック2015〉で何を観る?<br />
編集部が選ぶ、マスト10アクトはこれだ!

今年の〈サマーソニック〉は、まさに“ポップ音楽の流行見取り図”。このラインナップを眺めれば、今の音楽シーンの流行が手に取るようにわかります。こんなきっちりと目利きの効いたフェスは、国内外を見渡しても、ほぼ見当たらない。と言っていいくらい。

そこで、この記事では、そんな現在の〈サマーソニック〉の在り方を反映させつつ、「その中でも、これは観ておくべきでしょ!」と〈サイン・マガジン〉が考えるアクトをカウントダウン形式で発表。ちなみに、〈サマーソニック〉でのライヴに標準を合わせた徹底ガイドを掲載済みのファレル・ウィリアムスケミカル・ブラザーズ、そして次に記事が控えているアリアナ・グランデは外してあります。できるだけ多くのアーティストにスポットを当てたいので。あしからず。

それでは、早速カウントダウンを始めましょう。まずは10位からどうぞ!


10. Imagine Dragons

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ここ最近、急激に欧米のチャートを席巻し始めている“新しいロック”。その象徴と言えるのが、今や新世代のスタジアム・バンドとなったイマジン・ドラゴンズです。要するにこのバンドは、コールドプレイのようにEDMに目配せしたロックと、オルタナ~インディの美意識が花開く前の大文字のロックへと先祖返りしているエコスミスやウォーク・ザ・ムーンやシェパードのようなポップ・ロックのいいとこ取り。いいとこ、なのか?! という突っ込みはさておき。これぞまさに2015年のモダン・ロック。一見の価値あり、だと思います。

9. Slaves

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現在の英国バンドのモードは、“インディ・ロック”ではなく“ロック”。それは最早、動かしようのない事実となっています。なにしろ、アークティック・モンキーズは完全にインディを卒業し、その影響をヘヴィ・ロック的に展開したロイヤル・ブラッドが全英1位。フォールズは3rdからヘヴィ&ラウドな路線を打ち出して人気を爆上げしたのに加え、ストライプスの新作もアークティックやカサビアンを射程に入れた大文字のロックだったんですから。UKインディ冬の時代とか、終わったとか、いつまでも言っている場合じゃないんですよ。で、1st『アー・ユー・サティスファイド』が全英8位に飛び込んだスレイヴスは、そんな非インディな英国ロックの潮流の末っ子。スタンディング・ドラムとギターの変則編成で、ゴリッゴリのリフを武器に押して押して押しまくるライヴはカタルシス満点です。

8. Passion Pit

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2000年代後半は新人バンドの豊作期でしたが、今や彼らの立ち位置は見事にバラバラ。ヴァンパイア・ウィークエンドのように適度に円熟味を増しながらステップアップを重ねるアーティストもいれば、MGMTのように難しい局面に差し掛かっているバンドもいる。フォールズが一皮むけて新しいアリーナ・ロックへと邁進する一方、レイト・オブ・ザ・ピアは空中分解して、中心人物のサムが今年ソロ・デビューした。といった具合に。彼らの世代は、ちょうど今、最初の分岐点に差し掛かっているのかもしれません。そんな中、パッション・ピットの高度安定した歩みはなかなか他に見られない。勿論その理由は、最新作『キンドレッド』に至るまで一切揺らぐことなく高品質なエレクトロ・ポップを送り出し続けているから。ドリーミーでビター・スウィートなフィーリングも相変わらず。そう、パッション・ピットはどこまで行ってもパッション・ピットなんです。となれば、みんなでシングアロングして笑顔で飛び跳ねるライヴの楽しさは保証済み。ただ、東京では最後の数十分がファレルと被っているので、最後にやるであろう“スリーピー・ヘッド”を聴いてからスタジアムに行くべきか、かなり悩ましいところ。

7. Wolf Alice

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今年の〈サマーソニック〉はポップが強い。と言っても、従来のギター・ロック路線を忘れたわけではありません。特に東京では15日(土)、大阪では16日(日)の〈ソニック・ステージ〉には旬な面子がきっちり揃っています。勿論サーカ・ウェイヴス辺りも確実に押さえておきたいところですが、今回の最注目は彼ら。デビュー・アルバム『マイ・ラヴ・イズ・クール』が全英初登場2位を飾り、イギリスの新人で今一番勢いがあるウルフ・アリスです。このバンドは00年代以降のインディというよりも、いい意味でそこからの距離を感じさせる90年代的なオルタナ感満載。こういったバンドが売れ始めているのには、時代の変化の兆しを感じます。今年の〈ソニック・ステージ〉で必ず押さえておきたいバンドです。

6.Thom Yorke performing Tomorrow's Modern Boxes

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正直、2010年前後からレディオヘッドの求心力は少しずつ目減りしているように感じられたのも事実。しかし近年は、ロバート・グラスパー、あるいはケンドリック・ラマーやフライング・ロータスといった現行ジャズ人脈からの再評価を受け――とりわけ、チャーリー・ミンガスからの刺激を消化した『アムニージアック』には再びスポットライトが当たっている――、レコーディング中と噂されるニュー・アルバムへの期待値は上昇曲線を描いています。このタイミングでのトムのライヴは、やはり目撃しておきたい。先日、〈ラティテュード・フェスティヴァル〉にサプライズ出演した時にはソロ二作のトラックに加え、未発表曲2曲を披露。となれば、今回はレディオヘッドの(?)新曲をいち早く聴ける可能性もあるかも。にしても、このMVを見た時は「トムちん老けたなー」と誰もが思ったはずですが、実際にどうなっているのかそのご尊顔を拝んでみたいです。

5. ROTH BART BARON

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いや、マジですか?! ロット・バルト・バロンが16日(日)東京の〈ガーデン・ステージ〉でトップ・バッターに登場するなんて! ライヴ開始は昼12時。ってことは、〈ホステス・クラブ・オールナイター〉で朝まで盛り上がっていた人は、ほとんど彼らのライヴを見逃してしまう可能性があるわけです。これは勿体ない。めちゃくちゃ勿体ない。だって、19世紀的なフォーク音楽を現代的にアップデートしたボン・イヴェールに代表されるUSインディの繊細さと、全盛期のシガー・ロスの壮大さを併せ持ち、リリックも含めたファンタジックな世界観からすれば、今や飛ぶ鳥も落とす勢いのSEKAI NO OWARIに楯突くことの出来る可能性を持っている唯一のバンド、東京インディ最大の伏兵、それが彼らなんですから。しかも、そのライヴは本当にとんでもない。観た人全員が100%ファンになるくらいの凄まじさ。ceroが今年の〈フジロック〉でもっと遅い時間に出演してもおかしくなかったように、ロット・バルト・バロンもライヴの完成度で言えばこの時間帯での出演がありえないくらいの実力なんですよ。なので、重い体を引きずっても、後30分早く起きて〈ガーデン・ステージ〉に駆けつけてください。そして、思い切りぶっ飛ばされてください。

4. Madeon

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今年の〈T・イン・ザ・パーク〉のヘッドライナーがカサビアン、アヴィーチー、ノエル・ギャラガーだったことが象徴しているように、EDMはいわゆるロック・フェスでも大きな存在感を示すようになっています。それは〈サマーソニック〉のラインナップを見ても明らか。ただ、〈サイン・マガジン〉の価値観からすると、EDM全般にはいまいち乗り切れないのが正直なところ。やっぱりこれって、良くも悪くも新種のアミューズメントという側面が強いから。でも、マデオンの軸にあるのはあくまで音楽であり、ソングなんですよね。そこがいい。実際、彼の作品はEDM世代のエレクトロ・ポップといった趣。ライヴではEDM的にドカンと盛り上げつつも、しっかりと曲の力で聴かせてくれます。彼の名前を一躍有名にした動画“ポップ・カルチャー(ライヴ・マッシュアップ)”で使われていた機材、Launchpad三台使いの演奏も見所。

3. Zapp

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ゼッドではありません、ザップです。オハイオからやってきた80年代ファンクの伝説。最近のマーク・ロンソンやファレルに夢中なら、これは絶対に外せません。上に貼ったデビュー曲“モア・バウンス・トゥ・ジ・オンス”を聴けば分かる通り、近年のディスコ/ファンク/ブギー回帰との少なからぬシンクロニシティを感じさせる大御所です。クールだけど図太くヘヴィなファンク・ビート、そして超エンタテイメントなライヴ・ショーは最高に楽しくて気持ちよさそう。今どきの“シティポップ”に入れ上げている人も、だまされたと思って観てほしいですね。まあ、今のザップにどれだけ現役感があるのか、正直わかりませんが。いずれにせよ、直前のスロットで登場する、現代版ディスコ/ブギーを体現するユニット、タキシードからの流れで観ると最高のはず!

2. Manic Street Preachers performing Holy Bible

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『ホーリー・バイブル』の完全再現ライヴ。これを、ただの懐メロと切る捨てることなかれ。イギリスでは最高傑作との評価に揺るぎない本作は、音楽的には90年代半ばにおける早過ぎたポストパンク再評価。初期はガンズ・アンド・ローゼズやオリジナル・パンクしか音楽的リファレンスがなかったバンドが、そのサウンド面でもやっと本格的に評価されることとなった作品。と同時に、このアルバムを最後に失踪するリッチー・エドワーズとニッキー・ワイヤーがディレッタンティズムと政治意識を総動員させてリリックを書いた、極めて文学性の高い作品でもあります。まさにこれは4人時代のマニックスの集大成であり、最高到達地点。しかも、この完全再現ライヴでは、『ホーリー・バイブル』の曲をやり切った後に、これまでのベスト・セットが披露されるはず。この流れで改めてマニックスの音楽に触れると、彼らが常に労働者階級とウェールズ人という虐げられた立場からの政治意識を、状況主義的な手法を使いながら告発してきたことが否応にも伝わってきます。なぜマニックスがイギリスでこれほど高い評価を受け続けているのか? その神髄に触れられるライヴが、これなのです。

1. D'angelo and The Vanguard

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やはり真打ちはこの人。この見立てに疑問を挟む者はいないでしょう。このライヴを目撃することは、歴史的な場面に立ち会うことを意味する。そう言い切っても過言ではありません。なにしろ今回は、95年のショーケース・ライヴを除けば、ディアンジェロという“伝説”によるキャリア初の来日公演。今年の〈サマーソニック〉は、これを観ずして終われないのです。

いまさら強調するまでもなく、インディとR&Bとヒップホップの交錯点から刺激的な音楽を生み出している海外の新世代や、ceroを始めとした日本のアーティストなど、ディアンジェロ無しには生まれ得なかった音楽が、今、世界中で台頭。勿論、ロバート・グラスパーもディアンジェロ以降と位置付けて差し支えない。『ヴードゥー』で蒔いた種が10年以上の時を経て国境やジャンルを超えて萌芽している2015年は、間違いなくディアンジェロの時代です。

しかも、15年ぶりの新作『ブラック・メサイア』が、高まり切った期待に圧倒的なクオリティで応えてみせたのも大きかった。あの、どこまでもスウィートで艶やかで生々しい、絶品のグルーヴ。長い年月をかけてとことん磨き抜かれ、鈍く黒光りする音。それを全身で浴び、生で味わい尽くせるのは、至福の時間に違いありません。大阪ではファレルと時間が一切被らず、東京もファレル終了後に走って〈マウンテン・ステージ〉に向かえばほぼフルで観られるというタイムテーブルの組み方も嬉しい。間違いなく、このライヴが今年の〈サマーソニック〉のハイライトであり、最高の締めとなるはずです。

上のスタジオ・ライヴ映像では比較的クールに決めているディアンジェロですが、先日配信された〈ボナルー〉を始め最近のライヴは、もっともっと熱気に満ちたもの。たとえ彼の曲を知らなかったとしても、誰もがリズムとメロディに身を任せることで、最高にアップリフティングな空間がクリエイトされる、時代を超越したソウル・ショー。期待が高まり切っていた世界中のオーディエンスの熱狂を受け止め、それに応えようとするパフォーマンスは、いい意味でアルバムとは別物のグルーヴを生み出しています。それが〈サマーソニック〉ではどうなるのか? 勿論、すべては我々オーディエンス次第です。ともに最高の空間を作りましょう。




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